さすらいのボタニスト、ヤガメです。こんにちは。
僕ヤガメが、まだ学生の頃、ご長寿姉妹の「きんさん、ぎんさん」がテレビにしばしば登場されていました。
実はラン科植物の中にも、同名のランがあります。
当然(?)、「ご長寿のランとして商品にできないか?」と聞かれたことも。
ところがこのキンラン、ギンラン、実にややこしい生き方をしている植物で、なかなか簡単にはいかないのです。
●ご長寿ラン?
私がまだ学生の頃、ご長寿姉妹の「きんさん、ぎんさん」がテレビにしばしば登場されていました。
「きんは100歳、ぎんも100歳」のセリフのCMが話題となった、笑顔がとても愛らしいご長寿双子姉妹です。
ダジャレ好きの同僚が、「キンラン、ギンランがもし栽培できたら、『ご長寿のラン』とか言って、商品にならないかな?」
などと、くだらないことを言ってきたことがありました。
確かに……。
大鉢に、キンランとギンラン、枝ぶりのよいマツなどを寄せ植えしたら、正月飾りとしても売れるかもしれない!?
いや、実は。このキンラン、ギンランというランという植物は、まことにややこしい生き方をしている植物で、なかなかそうもいかないのです。
●雑木林では普通に
キンラン、ギンランは、ラン科キンラン属に含まれる種で、日本列島各地の雑木林などに普通に見られる植物です。
ちょうどゴールデンウィークの頃、キンランは鮮黄色、
ギンランは白色の花を咲かせます。
黄色を金色に見立て、白色を銀色に見立てて、この名前が付けられました。
可憐な花で、植物愛好家の間でとても人気があります。
どちらの種も、里山の雑木林によく見られる種。
人里離れた深山幽谷に生える植物ではありません。
●変わった仕組み
実は、このキンランやギンランは、樹木とキノコとの共生関係に入り込み、
養分を横取りして生きているのです。
どのようなしくみなのでしょうか。
キンランやギンランには、緑色の葉があります。
外から見ただけでは、多くのほかの植物と同様に、光合成によって自活しているようです。
しかし!
実はこの葉は、あんまり「仕事」をしていないのです!!
キンランやギンランは、樹木と共生する菌の菌糸を経由し、
樹木から光合成産物を、菌類から土壌養分を吸収して生育しているのです。
植物は一般的に、生きていくための養分を、葉で光合成をして作り出しています。
光合成をするのは、もちろん自分の葉です。
自分の葉で光合成をし、できた養分で生きていくのです。
ところが、キンランやギンランは、緑色の葉があるものの、
生きるための養分は別のところからもらってくるわけです。
それも、
樹木とキノコが共生している関係、つまり、お互いがそれぞれ、
よく影響しあってうまく生長している関係に、ちゃっかり便乗して、
横取りしてしまうのです。
菌の菌糸を経由し、樹木からは光合成産物、菌類からは土壌養分を吸収します。
カワイイ顔して、けっこうスゴイことをやってのけるお嬢さま、という感じです。
●商品化までには……
そんなしくみですから、キンランギンランだけを掘り上げてほかの場所に植えても、
うまく育ちません。
「ご長寿ラン」としてキンランギンランを売り出すには、まず、ほかの場所でも
キンランとギンランが生きていけるノウハウを確立しないとなりません。
自然界において、キンラン、ギンランが生きる環境、
つまり、樹木とキノコといっしょに生きる「共生系」を、
鉢の中に再現する必要があるわけです。
簡単なことではありません。
長寿のお祝いには、ご年配の方々と連れ立って、近所の雑木林に森林浴がてら、
キンラン・ギンランを見に行くのがいいですね。
そうだ、「ご長寿お祝いツアー」と銘打ってはどうだろう。
そんなツアーを企画したら、大ヒットするでしょうか?