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「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。

Vol.2 被ばくリスクから子どもたちを守るために~健康管理体制の構築と支援法の早期実施を求めて

  • 2013年12月12日

福島市での放射線量測定の様子
福島市での放射線量測定の様子
 福島原発事故から2年4ヵ月がたちました。しかし、被災者の救済は進んでいません。避難された方々は避難先で経済的・精神的に追い詰められた状況に置かれています。放射能汚染や事故の再発に対する不安に苦しめられている方も多くいます。昨年6月に制定された「原発事故子ども・被災者支援法」は未だ実施に至っていません。FoE Japanは、被害者や支援者、専門家とのネットワークを活かして、被害者の救済や健康被害の未然防止を求めて活動を行っています。


福島の子どもの甲状腺がん確定12人に ~ いますべきことは?

昨年5月、ヴェリキン氏を招聘し開催した院内集会「チェルノブイリ法への道のり」
昨年5月、ヴェリキン氏を招聘し開催した院内集会「チェルノブイリ法への道のり」
 6月5日に開催された福島県県民健康管理調査検討委員会で、福島の子どもたちの甲状腺検査の結果が新たに公表され、川又町、浪江町、飯舘村、南相馬市、福島氏、二本松市、郡山市などの子どもたちのうち、現段階で12人が甲状腺がんと確定され、15人がその疑いがあるとされていますが、県立医大および県民健康管理調査検討委員会は、以下の理由から「被ばくの影響は考えにくい」としています(詳細は『green earth』vol.46ご参照)。

 チェルノブイリ原発事故後には、甲状腺がん以外にも甲状腺機能低下、白内障、心臓や血管の疾患、免疫・内分泌の障害、糖尿病など、さまざまな疾病が増加しました。今行われるべきは、『大丈夫』と決めつけることではなく、将来の健康被害を防ぐために細心の注意を払い、検査内容の充実と拡大を行うことであると考えられます。


健康管理のあり方を独立の立場から提言 ~市民・専門家委員会の取り組み

 元・放射線医学総合研究所の主任研究員で、国会事故調査委員会委員も務めた崎山比早子氏は、「これは科学の問題ではない。科学をねじまげる御用学者たちと、それを利用する原子力村の問題」と指摘しています(※注1)。

  疫学の第一人者である岡山大学の津田敏秀教授は、「現在の状況は、『100mSv以下リスク不明論』を意図的に『100mSv以下安全論』にすりかえてしまっている。さらに統計学的に有意差がないことを、リスクがないことのように見せかけている。学術論争以前の問題だ」と述べています(※注2)。

 こうした専門家の声を世に出すため、今年1月、医師、弁護士、市民の代表から成る「放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会」が立ち上がりました。彼らの働きかけの結果、福島県は県民健康管理調査の目的を、「不安の解消」から、「県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、もって、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図ること」と改めました。引き続き市民・専門家委員会等による改善提案など、健康被害の防止のために活動が必要とされています。

被ばくを避けて暮らす権利の保障を ~「原発事故子ども・被災者支援法」の実現に向けて

  

6月21日支援法成立から1年を機に開催した記者会見
6月21日支援法成立から1年を機に開催した記者会見
 「原発事故子ども・被災者支援法(以下、支援法)」は、「避難の権利」を認め、健康面や生活面を支える法律をつくることを提案する複数の市民団体の活動と、また同じ問題意識を抱いた国会議員の協力により、2012年6月21日、全党派全国会議員の賛成によって国会で成立した法律です。

 支援法には、原発事故の被災者の幅広い支援、人々の居住・避難・帰還を選択する権利の尊重、特に子ども(胎児含む)の健康影響の未然防止、健康診査および医療費減免などが盛り込まれています。また、第三条では、これまで原子力政策を推進してきた国の責任を明記しています。

 しかし、制定から1年が経ったいまも、政府は、理念法である同法を具体化する基本方針を策定しておらず、、実施に向けためどは立っていません(この後、10月に支援法の基本方針が閣議決定されましたが、その内容はパブリック・コメントで寄せられた意見が反映されないものでした)。また、同法第14条では、「施策の具体的内容に被災者の意見を反映し、(中略)透明性の高いものとするために必要な措置を講ずる」としているにもかかわらず、政府主催の公聴会などは一度も行われていません。

 一方で、2年の間、被災者の状況は刻々と変化しているものの、同法を求める現場の声は変わっていません。この法律を生きたものにするために、引き続き市民の働きかけが必要とされてます。

 ※本文の内容は、2013年7月時点の状況を元に書かれています。


(『green earth』vol.47 2013 summerより抜粋)

※注1)2013年5月5日公開フォーラム「子どもたちの未来のために」講演
※注2)2013年5月26日セミナー「被ばく安全神話を問う縲怏ネ学の視点、市民の視点」での講演

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