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「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。

Vol.12 [特集COP21] Climate Justice Now! パリ合意で気候と人々の生活は守られるのか?

  • 2016年7月14日
  • green earth

GPS を使ったパリでのアクション
GPS を使ったパリでのアクション

 昨年11月30日から12月12日、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催され、参加196ヶ国がパリ協定に合意して会議は閉幕しました。1997年の京都議定書採択以来、初めての気候変動対策に関する国際協定となります。しかし、各国が独自に温室効果ガスの排出量の削減努力を行うことに重点を置いたため、各国が表明した削減目標をすべて足すと、少なくとも将来3℃以上の気温上昇が起こるだろうと言われています。

 パリ協定によって、将来の気温上昇を国連が目標とする2℃未満、さらには世界の市民社会や多くの途上国が求める1.5℃に抑えるために、そしてすでに起きている気候変動による被害影響に効果的な支援がなされるようにするために、FoE Japanは調査・提言活動を行っています。

約1,000人の市民がアースパレード東京に参加。銀座の街を歩きました約1,000人の市民がアースパレード東京に参加。銀座の街を歩きました

気候変動の影響を受ける人々への支援とClimate Justice

 今日までに、産業革命前と比べて地球の平均気温は0.8℃以上上昇しました。これまでのFoE Japanの調査によると、気候変動に脆弱な、特に低緯度地域に位置する途上国では、すでに気候変動による被害に対応しきれない事態が起きています。パリ合意では、このことが認知され、国別の能力に配慮しつつも、すべての国が国家適応計画を立案し、脆弱な人々や生態系を守るために行動することが義務となりました。

 歴史的な干ばつが、すでにアフリカ中央部、中米や中東で発生し、土地を捨てた人々が難民化し貧困などの問題につながっています。また、気温上昇により主要穀物の生産低下がすでに報告されており、途上国の食糧安全保障を脅かしています。シリアの難民発生にも気候変動が影響しているとされており、今後も気候変動による人口移動や難民問題は重要な課題となるでしょう。

 パリ協定の合意文に「損失と被害」が独立条項で正式に組み入れられたことは成果と言えます。アメリカは、気候変動に脆弱な途上国が気候変動による被害に賠償を求める権利を恒久的に放棄するよう求めましたが、途上国側が最後まで協定文への盛り込みを拒否したため、決定文書への記述に留まりました。

 FoEは以前からClimate Justice(気候の正義)を求めて活動してきました。Climate Justiceとは、化石燃料を大量消費し発展した国がより多く排出削減の責任を負い、同時に気候変動の影響を受ける脆弱な地域や人々を支援する義務があるという考えを基に、気候変動による格差や不正義をただしていこうというコンセプトです。それが現在のFair share(責任と負担の公平性)という考えにつながっています。パリ協定は「損失と被害」に言及はしたものの、今後被害を受ける人々への支援をどのように行っていくかはまだ不透明です。FoE Japanは今後も支援の透明性や正義を求めていきます。

はたして気温上昇をとめられるのか?

 FoEグループは、今後の気温上昇を1.5℃未満に抑えなければ、適応しきれない甚大な被害や災害が増大するとして、これを求めてきました。協定文には2℃未満という目標が明記され、1.5℃未満の追求も併記されましたが、前述のように各国の削減目標を総合しても、約3℃の気温上昇と試算されており、気温上昇を食い止めるためには、更なる各国目標や各国での取り組み強化が不可欠です。

 パリ協定には各国の目標に対する法的拘束力はありませんが、各国に国内法を整備し、行動計画を作り、国連へその進捗を報告し評価を受ける義務を課しています。また5年ごとに、より野心的な目標案提出を行う義務も協定内に明記されました。温室効果ガスの削減には再生可能エネルギーへのシフトや省エネが不可欠ですが、パリ協定には森林減少や劣化の抑制に価値を付加し、排出量の削減と結びつけるカーボンオフセットの考えも引き続き残されました。

 FoEグループはかねてから炭素取引に反対してきました。大規模な植林がコミュニティを破壊し、森林を囲い込んで炭素貯蔵池とする土地収奪の問題や人権侵害が途上国を中心に多発しています。科学的にも森林や土地を吸収源とするのは一時的な対策でしかないことが証明されています。パリ協定が発効すれば新たな排出量取引のメカニズムも設立されます。炭素取引制度は、先進国など大量の温室効果ガスを排出する国々の国内対策を遅らせ、間違った気候変動対策を推し進めかねません。

 FoE Japanは引き続き、日本政府による排出量削減努力を監視し、日本の責任を果たしていくよう政府へ促していきます。また同時に、国際的な炭素取引のメカニズムに対して提言や監視を行っていきます。

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