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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第46回 【基調講演】低炭素社会の到来:2050年60〜80%削減

  • 2007年11月15日

このコンテンツは、「グローバルネット」から転載して情報をお送りしています。

特集/環境危機と企業のコミュニケーション
【基調講演】低炭素社会の到来:2050年60〜80%削減
国立環境研究所 前・理事 西岡 秀三さん

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残された時間はわずか

 温暖化をとめるには「排出量=吸収量」にする必要があります。二酸化炭素(CO2)で考えると、現在の世界の排出量は7.2Gtに対して、吸収量は3.1Gt(森林0.8Gt、海洋2.2Gt)と、今回のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次報告書では推定しています。

 気候を安定化させるには、どれだけ、いつ、どのように削減するかが問題になります。年間の人為的排出量の増加は濃度では1.9ppmで、危険なレベル(平均気温2℃上昇、CO2濃度425〜500ppm)まで達するのに残されている時間は、425−380=45÷1.9=24、すなわちあと24年弱しか残されていない計算になります。気候を安定させるには、人為的排出量を自然の吸収量より少なくしなければなりません。つまりCO2排出量を現在の半分以下にしなければならないということです。

 2007年2月2日にIPCC第4次報告書が発表になりました。それによると気候システムが温暖化していることは疑う余地はなく、しかも最近50年は過去100年の2倍に温度上昇が加速しているというのです。これでわかってきたことは、われわれの対応が非常に遅れているということです。たとえCO2の発生を現状にとどめても今後20年間は、10年で年0.2℃の割合で気温は上昇していきます。

 世界の平均地上気温の上昇予測によれば、環境の保全と経済の発展を地球的規模で両立させるように努力しても、今世紀末の気温の上昇は1.8℃となり、化石エネルギーを重視する高い経済成長を目指すと気温の上昇は4℃になります。

 平均温度上昇に伴う生態系・農業への影響予測から、2℃の上昇が一つのめどとなり、それにいつ到達するのかが重要です。

70%削減シナリオの検討

 気温上昇を2℃以下に抑えるには、大気中のGHG(温室効果ガス)濃度を475ppm以下にする必要があり、2050年のGHG排出量を世界全体で1990年レベルの50%以下に削減する必要があります。欧州諸国では英国60%削減、ドイツ80%削減、フランス75%削減が検討されていますが、日本はそれ以上の60〜80%の削減が求められる可能性があります。

 では、日本における究極の削減量はどうなるでしょうか? 2050年の日本全体の排出量は0.03〜0.05Gtになります。2050年に1990年に比べて90〜80%削減しなければならなくなります。「そんなことができるのか?」と友人から言われるのですが、70%削減の可能性を検討してみました。

 「2050日本低炭素社会シナリオ:温室効果ガス70%削減可能性検討」では、日本を対象に2050年に想定されるサービス需要を満足しながら、CO2を1990年比で70%削減する技術的なポテンシャルは存在するかどうかを検討しました。結論としては、ポテンシャルは存在するということです。

 その前提条件は、一定の経済成長を維持する活力ある社会、社会シナリオによって想定されるエネルギーサービスの維持、革新的な技術の想定(ただし核融合などの不確実な技術は想定しない)、原子力など既存の国の長期計画との整合性——などです。

2060年CO2排出量70%削減を実現する対策オプションの検討(ビジョンB)

 2050年の脱温暖化社会の描写例として、都市型/個人を大事に、集中生産・リサイクル、技術によるブレイクスルーのある活力に満ちた社会(ビジョンA)と、分散型/コミュニティ重視、地産地消、もったいないをモットーとした社会・文化的価値を尊ぶゆとり社会(ビジョンB)(図)を想定しました。

 70%削減の可能性・コスト・分野は囲みのように考えられます。

 このように大幅なエネルギー需要の削減が可能なのかという意見が出るでしょうが、基本的には人口の減少、エネルギー効率の改善、コンパクトシティの創設、生活様式の改善などによって可能と考えています。

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