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第30回 欧州から学ぶ日本型コンパクトシティ構想

  • 2006年7月13日

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名城大学都市情報学部 海道 清信(かいどう・きよのぶ)

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コンパクトシティブーム

 1990年代後半に一部自治体の総合計画などに限定して取り上げられたコンパクトなまちづくりは、国土交通省、経済産業省に2006年度重点予算要求のなかで再び取り上げられたことで、今日では全国的に「ブーム」とも呼べるほど関心が高まっている。その背景には、財政的にも、人口減少・高齢社会の到来からも、従来の都市政策からの転換が求められているためである。さらに、都市形態を考慮しなければ深刻化している中心市街地の空洞化・衰退に対処できないと気づいたためである。
 コンパクトシティが提起しているのは、望ましい都市のあり方を、空間の姿から総合的に考えるべきだということである。また、公共基盤整備と経済成長を優先してきたわが国の都市政策に転換を促している考え方でもある。
 コンパクトシティの考え方は、わが国では、先に述べた両省の考え方「選択と集中」「ブレーキとアクセル」といったキーワードに反映されている。土地利用による立地規制でスプロールを制限すること、病院などの都市施設が郊外に移転しないように容積率などのボーナスを与えること、マンション建設の促進などでまちなか居住を進めること、駅周辺、中心商店街などで複合機能再開発を進めること、これらを民間主導で進めること、こういった方向である。
 1990年代に欧州各国で取り上げられたコンパクトシティの計画・政策化がようやくわが国でも具体化し始めた。自治体レベルでもさまざまな構想、計画が立案され、それぞれの地域特性や課題に対応した特徴があるが、環境、市民主体が強調されている点に政府との違いがあるようだ。

EUと日本との違い

 コンパクトシティ政策を比較すると、EU(欧州連合)では次のような点に特徴が見出せる。

  • 自動車利用を少なくすることが大きなねらい:環境政策としてはスプロールの防止と並び、自動車利用抑制が大きなねらいである。しかし、わが国では必ずしも連動せず、中心市街地の活性化や都市インフラへの財政的効率性が強調されがちである。
  • 農業・都市緑地保全の政治社会勢力が強い:欧州におけるスプロール反対の主勢力は、環境団体と農業団体である。しかし、わが国でスプロールが進む地域には農業継続意向の弱い農業者が多いため、農地の開発意欲が高くスプロールを助長している。
  • 社会的な(機会)公平性の実現:社会の中で、人種、貧富、性別などでの排除の克服が欧州では大きな課題となっている。そのために、教育、住環境の改善などさまざまな取り組みが進められているが、自動車を利用しなくても仕事に就けることや、生活できるようにすることも重視されている。
  • タウンセンターの活性化・再生は都市経済発展に必要:中心市街地の活性化は単にその都市にとってだけではなく、新たな都市型経済の育成にとって不可欠であると考えられている。さらに、都市から田園、小さな町に脱出しようとする人びとの流れを食い止めて、活気のある都市を持続することが国全体の経済競争力のために重要と考えられている。

EUの新しい都市環境政策

  EUは、2004年11月に新たな都市環境政策案『都市環境に関するテーマ戦略に向けて』を発表した。主要テーマとして、都市マネジメント、都市交通、都市建設、都市デザインを取り上げている。都市デザインについては、2004年1月に作成された『持続可能な都市デザインに関するワーキンググループ報告書』に、画一的なコンパクトシティ政策への批判に対応して、次のような方向が示されている。

  • コンパクトシティ戦略は必要で継続する。
  • コンパクトシティとショートサイクル(地域循環・エコロジカルな手法)は一見対立する概念であるが、統一は可能である。
  • コンパクトシティの発展として、グリーンコンパクトシティ、持続可能なシティリージョン(分散的集中、ポリセントリックパターン)、土地利用と交通との結合が重要である。
  • いずれにしろ、都市環境問題に対処するためには、自動車利用を削減して市街地スプロールを克服することが必須である。

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