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2012年は、2008〜2012年の京都議定書第一約束期間の最終年であり、気候変動枠組条約が採択された地球サミットから20年にも当たり、国際的な気候変動政策の節目の年といえる。
2011年末に南アフリカ・ダーバンで開催された第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)と第7回京都議定書締約国会議(CMP7)(以下、ダーバン会議と呼ぶ)では、これから取るべき次のステップにようやく合意を得た。そのアプローチは、2013年から京都議定書第二約束期間として先進国にさらなる削減義務を課すということと、すべての国を対象とした新たな議定書(あるいはそれに類するもの)を2015年までにつくり上げ、2020年から始めるというものである。
途上国は、世界の排出の半分以上を占めるようになっており、京都議定書から離脱している米国や排出が急増する中国・インドなどの新興国を巻き込んだ包括的な議定書づくりは、まさに今後の気候変動政策の展開の鍵を握っている。
世界の温室効果ガス排出量は、リーマンショック以降の経済低迷によって一次的に減少したものの、早くも増加傾向に戻り、そのスピードに拍車がかかっている。各国は産業革命前からの地球の平均気温が2℃を超えないようにする目標を共有するが、その実現は厳しくなってきている。
国際エネルギー機関は「世界エネルギー見通し2011」において、2℃目標達成への道は閉ざされようとしていると指摘する。また、国連環境計画は、コペンハーゲン合意に基づいて各国が提出した自主目標では2℃目標にはおよそ足らず、削減すべき量に60〜110億tのギャップがあるとし、このままでは4℃上昇の破局シナリオだとする。いずれも、大胆な行動を今すぐ始めなければならないことを説く。2℃目標と現実との乖離は著しい。
ダーバン会議で決定したすべての国を対象とした新たな議定書の開始は2020年まで待たなければならないが、2℃目標の実現には、2020年よりも前に世界の排出量のピークを迎え、下降させなければならない。すなわち、気候変動問題の解決には、2020年までの行動強化が決定的に重要となる。それゆえダーバン会議では、2020年に至る各国の行動強化も重要論点となり、ギャップを埋めていくための各国の削減目標と行動を引き上げる検討プロセスを始めることも決めた。
このように国際交渉は、必ずしも気候変動問題の緊急性に応えたスピード感で進んでいるとはいえない。科学的知見がより明らかになるにつれ、グローバルな市民社会からの取り組みの強化、および行動のスピードアップへの要請は今後さらに高まっていく。また、各国の取り組みは国際的に監視し、可視化していく流れにある。どの国にも手綱を緩める余地はない。
「I Love KP(京都議定書)」と書かれたTシャツを着る世界のユース
ダーバン会議の結果により、京都議定書は今後も気候変動政策の重要な位置を占めることとなった。先進国は引き続き法的拘束力ある枠組みの下で、削減義務を負う。新たな削減数値目標は今年開催されるCOP18で決定される予定だ。京都議定書は、先進国が率先して行動すること、また、その行動を確実に引き出す法的拘束力ある枠組みとして継続されることが重要視されていた。こうした状況を見極め、京都議定書第二約束期間に合意する意思を示して、すべての国を対象にした議定書づくりへの道を開いたのは欧州連合(EU)の交渉術だった。それが功を奏して今回の合意につながった。