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このコンテンツは、地球・人間環境フォーラム発行の「グローバルネット」と提携して情報をお送りしています。

第102回 ソーシャルファームの発展のために

  • 2012年7月12日

特集 第三の職場づくり〜広がるソーシャルファーム 第102回 ソーシャルファームの発展のために

 ソーシャルファームは障害者にとっての第三の職場づくりだと考えています。第一の職場は授産施設のような税金が使われている職場。福祉施設、福祉工場、小規模作業所などもあります。税金が使われている第一の職場は大変重要な役割を果たしていますが、国、地方自治体とも予算が厳しく、働く希望者はたくさんいても、その需要にすべて応えきれていません。

 第二の職場は一般の労働市場、民間の企業です。現在の法律では56人以上の従業員のいる企業では社員の1.8%は障害者を雇用することになっていますが、日本全体でみると合格している企業は半分程度です。

 ソーシャルファームは第一と第二の職場のハイブリッド型です。労働市場で不利な立場にある人の仕事を生み出す、第一の職場と同じような社会的な目的を有していますが、ソーシャルファームはビジネスです。税金を当てにしないでビジネス的な手法で回ることに存在価値があります。生きがいを感じ、障害者や高齢者だけが働くのではなく健常者、一般の人たちが、対等な関係で一緒に働いていることが重要なのです。

底が抜けた日本社会を救う切り札としてのソーシャルファーム

 日本に障害者は1,000万人以上いると思います。精神障害者は17%しか働けない。知的障害者は50%以上働いていますが、実際は福祉施設や授産施設で働いている人が大半です。高齢者は日本では深刻です。まだ元気なのに働く場所がない。先日、東京の新宿のアパートで火災があり、高齢の5人が焼死しました。ほとんどの人が生活保護を受けていて、隣近所は誰も知らない、アパートの住人も隣がどんな人か知らない。私は日本の大都市でこのような新しいスラムができており、これを何とかするためには、仕事、ソーシャルファームが必要だと思っています。

 刑務所から年間3万人ぐらいが出てきます。住むところも働くところもない、そのため、再び罪を犯してしまうことがあります。それからもっと深刻な同和地区の問題があります。仕事がなくて困っている、新しい差別が出始めていると聞きました。

 母子家庭のお母さんたちは職業経験が乏しく、熟練度が低いため平均所得はほとんど生活保護と同じような所得水準ではないでしょうか。それから難病患者、ニートや引きこもりの若者も将来は大きな問題になります。

 働くことの意義は人間の尊厳性、心身の健康、他人とのつながり、そして、何よりも一番重要なのが経済的な自立が得られる、そういうところにあるのだと思います。

 今日は、東京の江東区で知的障害者がリサイクルに携わっているエコミラ江東の取り組みの発表がありますが、これは日本における奇跡、ソーシャルファームの奇跡だと思います。

 日本ではソーシャルファームがますます必要になります。生活保護を受けている人は205万人、戦後最悪でさらに貧困者は増えています。底が抜けてしまってそこからどんどんと人が落ちている、それが今の日本の社会で、その対策としてソーシャルファームが絶対的な切り札になると思っています。

 ソーシャルファームの現状ですが、環境の分野はソーシャルファームにとって夢がある分野です。とくに3R、リデュース、リユース、リサイクルという意味ですが、エコミラ江東の事例、中古本の販売、小型家電のレアメタルのリサイクル。生物多様性の分野でも竹を利用して竹炭や竹酢液を作る、琵琶湖の外来魚であるブラックバスを堆肥にする、増え過ぎで食害を起こしているエゾシカの皮革を使ったカバンづくりなど、ソーシャルファームの動きは多方面で進んでいます。

 さらにソーシャルファームを発展させるためには、商品として売れる、素晴らしい商品を作ることが成功の秘けつだと思います。自治体の中には助成金や公的な支援を検討しているところも出始めました。ヨーロッパで動いているソーシャルファイナンスも、しっかりした理念を持って取り組めば日本でも活発な動きになる可能性はあります。


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