月を、火星を探索するぞ!となると、まず必要なのが、現地まで行く乗り物=宇宙船です。
次に必要なのは、宇宙船に乗せる探索ツールですが、中でもメインとなるのはオポチュニティやパーサヴィアランスのような探査車です。
最近では、インジュイニティの成功で探査ヘリも注目されていますね。探査車にはこれまた必要なツールが搭載されますが、そのすべてを支え、移動の根幹となるのは車輪です。未知なる星に直接触れ、未開の土地を走り抜ける特別なタイヤが必要になります。
NASA主導の月面有人探査ミッション、アルテミス計画。その後期(2030年ごろ)に計画されているのは、探査車による月の南極大冒険。
その探査車に使用されるかもしれないタイヤを、今、ミシュランとブリヂストンが開発しています。
宇宙探査車のタイヤには、よくあるあのアクシデントが絶対NG…。そう、パンクが絶対ダメなのです。
空気が入っているタイヤは、穴が開けばパンクしてしまいます。
宇宙でこれは絶対ダメ。だって宇宙での修理なんて、とんでもなくたいへんだもん。そもそも宇宙に空気ないですから。
そこで絶対パンクしないエアレスタイヤの研究開発を行なっているのが、大手タイヤメーカーのミシュランとブリヂストン。
ネタ元のBBCが取材したところ、ミシュランエアレスタイヤ開発チーム&NASAエンジニアチームが想定しているのは、10年走れるタフなタイヤ。想定する走行距離は1万km。
温度差が激しい月で(極では-230℃らしい…)、省エネを意識し、無駄な回転をしない効率のいいタイヤのため、ミシュランが目を付けたのがニッケルとチタンの合金、ニチノールという素材です。
ニチノールの柔軟性は、研究チームが「クレイジー」というほど。高機能プラスチックと同等のパフォーマンスを出しつつ、耐久性に優れているのもメリット。革命的な素材となる可能性があるといいます。
一方、ブリヂストンのアプローチは、ミシュランとは異なり、動物の特徴を真似する手法。真似するのは…ラクダです。
重い荷物を背負って砂漠を行くあのラクダの足元に注目し、柔らかく厚みのあるフェルトのような素材をタイヤのパッドとして採用。タイヤ自体は薄い金属でしなりを持たせることにしました。
両社のアイデアはNASAに提出され、今年後半にはタイヤのデザイン方針を決定する予定。どちらかのアイデアが採用されるのか、ミックスされるのか、はたまたまったく別のプランになるのか…。
ちなみにブリヂストンのタイヤテストは、鳥取砂丘で行なわれているとのこと。見学してみたいものですね。
宇宙の惑星探査のために開発されている新タイヤ。ここで研究開発される技術は、地球のタイヤにも生かされていきます。
NASAの起業家プログラムで火星のタイヤ技術の商業化に取り組むプロジェクトもあり、ミシュランのニッケル×チタンのタイヤは、自転車のタイヤとして今年商品化を予定。一輪150ドル(2万円強)くらいだそうです。耐久性に優れているなら、コスパいいのかもしれません。
Source: BBC