本能に訓練なんて必要ないのね。
去る4月14日朝、カリフォルニア州南部でマグニチュード5.2の地震が発生した際、サンディエゴ動物園サファリパークにいるアフリカゾウの群れが、とっさに「警戒の輪(Alert Circle)」を作って若いゾウを守ろうとしたそうです。
群れのなかで家族のように暮らすゾウたちが、災害という突発的な状況にどう反応するのかが映像で記録され、話題を呼んでいます。
映像に映っていたのは、年長のゾウたちが走り寄り、7歳の子ゾウ2頭、Zuli(ズリ)とMkhaya(ムカヤ)を守るように囲む姿でした。最初は一斉にあちこちに走り出したものの、すぐにサークル状に集まって、耳を広げて外敵の方向を探るような動きを見せています。
この「警戒の輪」は、ゾウが天敵や不測の事態に遭遇したときにとるとされる典型的な行動なのだとか。
アフリカで天敵に狙われていることを察知すると、群れのリーダーである年長のメスのゾウが群れを集めて、サークル状に外を向いて、子どもや弱っている個体を囲む警戒態勢を取るのだそう。
また、ゾウは足で音を感じるそうです。地震の揺れが発する音を感じたゾウたちが、1カ所に集まって「警戒の輪」を作ったようです。映像を見ると、カメラが揺れる前にゾウたちが行動を起こしているように見えます。
さらにゾウは人間には聴こえない音域の警告音を発して、群れをまとめることもあるといい、今回は地震の揺れを足の裏で感じ取ったゾウたちが、警告音に従って瞬時に家族単位で身を寄せ合った可能性があるとのことです。
興味深いのは、2頭の子ゾウのうち、メスのMkhayaが大人の作った輪のなかに収まっていた一方で、オスのZuliが輪の外側に留まっていたこと。
その理由について、サファリパークでほ乳類を担当するミンディ・オルブライトさんは、「Zuliは自分の勇気や自立心を見せたかったのだと思います」と語っています。強がってたんか。かわいい。
Zuliの子育てを手伝ってきた年長のメス、Khosi(コシ)が、そんなZuliの背中や顔を鼻で優しくトントンと叩くような仕草を見せているところが映像でも確認できます(37〜40秒あたり)。
オルブライトさんはこのKhosiの仕草について、「『大丈夫だよ』『輪のなかに戻りなさい』とでも言っているかのようでした」と話しています。
この地震では、震源地近くのジュリアンという小さな山間の町で道路への落石などの軽微な被害が出たものの、人的被害は確認されていません。
しかし、ゾウたちにとっては十分に異常事態だったようで、サークルを解いてからもすぐにはバラバラにならず、しばらくの間お互いのそばに寄り添っていたとのことです。
さらに、約1時間後に起きた余震では、再び身を寄せ合うような行動も確認されたそうです。
オルブライトさんは今回のゾウが見せた行動について、次のように述べています。
「彼らがこれほど環境と調和して、周囲の兆候に注意を払っているのは、本当に素晴らしいことです。こうした反応が見られること自体が、彼らが健康である1つの指標になります」
さらに、ゾウの社会性と愛情深さについて、こう付け加えています。
「ゾウたちが見せてくれたのは、まさに私たち人間がすべきこと、つまり、子どもを守るということなんです」
書籍(Kindle版もあります)Source: AP, ABS-CBN News / YouTube, Live Science, The Washington Post