テスラ第1四半期の利益71%減。強気のイーロン・マスクも意気消沈

  • 2025年4月24日
  • Gizmodo Japan

テスラ第1四半期の利益71%減。強気のイーロン・マスクも意気消沈
Image: Chris Allan / Shutterstock.com

得るものと失うもの、マスク氏にとってはどっちのほうが大きいのでしょうね。

テスラは4月22日に第1四半期の決算を発表しましたが、電気自動車の販売台数が大きく落ち込んだ影響で、前年同期比で71%の減益となりました。

テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、同社の顔として注目を集める一方で、自身が運営するSNS「X(旧Twitter)」で極端な右寄りの発言を繰り返し、ドナルド・トランプ大統領と共にアメリカ政府の秩序を揺るがすような行為を続けていることを考えると、驚くようなニュースではありません。

収益激減という厳しい現実に直面

マスク氏は決算発表会見で、会社の状況を少しでも楽観的に表現しようとしましたが、その話しぶりからはどこか元気のなさが感じられました。

6月からテキサス州で始まる自動運転タクシーについても、多くの人が期待していた新型のサイバーキャブではなく、既存のモデルYを使用すると明かし、そのトーンはどこか控えめ。マスク氏の発表を心待ちにしていたファンにとっては、期待外れに終わったようです。

テスラは第1四半期の売上高が約193億ドル(約2兆7000億円)と、前年同期比で9%ダウンしたといいます。生産台数は36万2000台で、33万6000台以上を納車。モデル3とモデルYの納車台数は12%減。同社はサイバートラックに関する正式な数字を公表していませんが、サイバートラックを含むカテゴリーは24%減少したそうです。

政治的なイメージが売り上げに影響

サイバートラックは、マスク氏の政治的なイメージと結びつけて語られることが多いので、他の車種よりも売れ行きに影響しているのかもしれませんね。

サイバートラックの納車が始まったのは2023年の後半ごろで、ちょうどマスク氏が人種差別や反ユダヤ的な発言を始めた時期と重なります。

消費者のなかには、サイバートラック所有者はマスク氏の理念に全面的に賛同していると推測する人もいるでしょう。それに対して、モデル3とモデルYの所有者は、マスク氏が過激思想を隠さなくなる前に発売された車種でもあることもあってか、あまりイメージは悪くないようです。

カーボンクレジットのおかげでギリ黒字

テスラは調整後の1株あたり利益が27セント(38円)で、予想されていた41セント(58円)を大きく下回りました。

そんななかで唯一の明るいニュースといえば、カーボンクレジット(ガソリン車を製造する他の自動車メーカーが、自社の排出量を相殺するために支払うお金)から得た約5億9500万ドル(845億円)の収益でした。もしカーボンクレジットがなかったら、テスラは今四半期に営業損失を計上していた(つまり赤字だった)はずとのこと。

テスラもトランプ関税から逃れられず

『The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)』紙によると、もしトランプ前大統領の法外な関税政策が続けば、テスラもその影響を大きく受けることになりそう。

アメリカ国内で販売されているテスラ車は、カリフォルニア州やテキサス州で組み立てられてはいるものの、部品の多くは海外からの輸入品のため、最大で25%もの関税がかかっています。

マスク氏は火曜日の会見で、「私は大統領ではなく、あくまでも多くのアドバイザーの1人に過ぎません」と話し、関税に反対する立場をはっきり示しました。

実現しない「未来のビジョン」と世論の反発

マスク氏は、ネガティブなニュースを派手な発表でごまかそうとする傾向があります。例えば、2024年4月にロイターが「テスラは以前から期待されていた2万5000ドルの低価格モデルの開発を断念する方針だ」と報じた直後に、マスク氏は突然「ロボタクシー(サイバーキャブ)を開発する」と発表しました。

ところが同年夏に予定されていた発表イベントは、秋に延期されることに。実際に発表された内容も期待外れで、サイバーキャブとは関係ない欺瞞(ぎまん)的なトリックが飛び出すなど、目新しさには欠けました。

それでもマスク氏は懲りることなく、サイバーキャブについて大きなことを言っていますが、結局タクシーだけどサイバーキャブじゃないサービスになるっていったい…。

マスク氏は会見で、「6月からテキサス州オースティンでモデルYを使った完全自動運転の有料乗車サービスを開始し、年末までにアメリカの他の都市にも展開する予定です」と述べています。

多くの人は、マスク氏による「オースティンでサービス開始する」という発言を、2024年10月に発表されたサイバーキャブの投入を意味していると期待しました。

しかし、自動運転の専門家たちによると、サイバーキャブが本当に街中を走るようになるには、早くても数年、もしかしたら何十年もかかるかもしれないとのこと。

マスク氏は会見中、ロボットタクシーを動かすために必要な遠隔操作の詳細についてアナリストから質問されましたが、詳しい説明を避けている様子でした。

「あと数カ月です。ですから、数カ月後にはオースティンで実際にご覧いただけます」と答えるにとどまっています。

今回の会見では、いつものような大げさな盛り上がりは見られませんでした。マスク氏は、オプティマス(人型ロボット)が2025年末までにテスラの工場で働き始めると約束したり、数年以内に完全自動運転が実現するという曖昧な未来予測を示したりもしましたが、その口調は明らかに沈んでいて、いつものような派手なセールストークは影を潜めていました。

DOGEのコストの削減が火に油を注ぐことに

マスク氏が政府効率化省(DOGE)を立ち上げてからというもの、テスラの販売店やショールームでは全国的に抗議デモが続いており、一部では放火や器物損壊といった事件も起きています。テロの疑いで司法省に起訴された人もいるほどです。

マスク氏は会見で、「これらの抗議は組織化されており、誰かの資金提供を受けている」と話し、以前から主張している「黒幕説」を繰り返しました。

さらに抗議活動の「本当の理由」は、政府機関から不正にお金を受け取っていた人たちが、それを打ち切られたためだとも述べましたが、主張を裏付ける証拠は一切示していません。

マスク氏は今後について、「5月以降はDOGEから距離を置く」との意向を示したものの、具体的な内容には言及しませんでした。

ただ、トランプ大統領の任期中(4年間)は引き続き政府に関わり続けると強調しています。その一方で、トランプ大統領は、これまで何度も「任期を超えて政権にとどまりたい」と発言しているんですよね。言うまでもなく、それは明らかなアメリカ合衆国憲法違反です。

政府での短い在任期間中、マスク氏はいくつもの重要な政府機関の機能を破壊し、アメリカ国際開発庁(USAID)を違法に廃止するなどしてきました。CBSニュースによると、DOGEは27の政府機関で合計28万人以上を解雇したそうです。それについてマスク氏は、「まともな仕事に就くべきだ」と冷たく言い放っています。

しかしですね、そもそもマスク氏とDOGEには、そんな大がかりなコスト削減を行なう法的な権限はほとんどありません。というのも、政府機関の設立、資金配分、資金削減を単独で行なう権限を持っているのは、連邦議会だけなんです。マスク氏は自分の思い通りになんでも一方的に削減できると信じているらしく、一切やめようとしません。

『The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)』紙によると、DOGEは政府の支出削減にほとんど貢献していないのだとか。というのも、連邦政府の支出の大部分は、軍事費やメディケア(高齢者向け医療保険)、メディケイド(低所得者向け医療費補助制度)、社会保障といった手を付けにくい部分に集中しているんです。

一部では国防総省の予算を削ろうという話もあったようですが、その資金はトランプ大統領が推すミサイル防衛構想「ゴールデンドーム」などに充てられる見込みとのこと。

社会保障への影響もすでに出始めていて、高齢者向け電話相談窓口の待ち時間が長くなっていると言われています。さらに共和党は、最新の予算案でメディケイドに大なたを振るおうとしており、次は何が削減されることになるのかわかったもんじゃない状況です。

マスク氏とトランプ大統領は、自分たちの行動を「革命だ」と繰り返しアピールしてきました。

しかし、それはアメリカの善良なものすべてに対する反人間的な攻撃といえる内容でした。そういった経緯から、多くの消費者が「テスラはもういいかな」と敬遠し始めているのも、無理からぬことかもしれません。

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