地球外生命が見つからなくても、探し続けることに意味はある

  • 2025年4月18日
  • Gizmodo Japan

地球外生命が見つからなくても、探し続けることに意味はある
Image: Triff / Shutterstock

意味なんてのはあとからついてくるもんだ。たぶん。

人類は古代からずっと地球外生命の存在について考えをめぐらせてきました。そして、20世紀に入ると、科学者たちが本気でその証拠を探し始めました。しかし、みなさんご存じのとおり、残念ながらいまのところ何も見つかっていません。

探査が始まってからまだ数十年しかたっていませんし、その間にも技術はめざましく進歩してきました。でも、もしこの先もずっと見つからないままだったとしたら? 私たちはそれをどう受け止めればいいのでしょうか。

見つからない意味

見つからないことにも、ちゃんと深い意味はある。そんな視点を示したのが、2025年4月7日に学術誌The Astronomical Journalに掲載された国際的なチームによる研究論文です。

研究チームによれば、たとえ地球外生命が見つからなかったとしても、生命のいない太陽系外惑星(太陽系の外にある惑星。以下、系外惑星)を一定数特定できれば、地球外に生命が広く存在しているのか、それともレアなのかを、科学者たちがかなり自信を持って判断できる可能性を示唆しているそう。

地球外生命がいる可能性は思った以上に高いかも

研究チームは、高度な統計モデルを用いて、40〜80個の系外惑星に生命の証拠が見つからない場合、宇宙にある同じような惑星のうち、生命が存在する惑星の数の割合は全体の10〜20%未満だと推定できることを示しました。

数字だけを見ると、それほどインパクトがないように感じるかもしれませんが、これまでまったくわかっていなかった、地球外に生命が存在する確率の「上限」を初めて明確にできるかもしれないという意味で重要なのだとか。

計算してみると、天の川銀河にある惑星の10%だとしても、生命がいそうな星が100億個もあることになるんですよ。やばくないですか?

研究の主執筆者であり、チューリッヒ大学の宇宙生物学者であるDaniel Angerhausen氏は、SETI協会の声明で次のように述べています。

「今回の結果は、大きな転換点になるかもしれません。たとえ生命を発見できなくても、検出可能なバイオシグネチャー(生命活動の痕跡や証拠)を持つ惑星がどれくらいまれなのか、またはどれほど一般的なのかを定量化できるようになるでしょう」

バイオシグネチャーは、生物がかかわる活動を示す重要な手がかりで、私たちが知っているような生命が存在する可能性を示すサインでもあります。

また、太陽系の外にある惑星のような天体は系外惑星と呼ばれていますが、「惑星」という言葉は、通常は私たちの太陽のまわりを回っている8つの天体のことを指します(ただし、この定義は将来変わるかもしれません)。

でも、一部の科学者は系外惑星のことを、簡素化して「惑星」と呼ぶこともあります。

今回の研究結果は、NASAの次世代宇宙望遠鏡であるHabitable Worlds Observatory(HWO)や欧州主導のLarge Interferometer for Exoplanets(LIFE)など、地球に似た系外惑星に存在するバイオシグネチャーを調査する今後のミッションの文脈のなかで特に重要といいます。

それらのミッションでは、研究が示したような結論(40〜80個の系外惑星を調査しても生命が見つからなければ、生命を宿した惑星の数の割合は10〜20%未満と推測できる)に至るのに十分な数の系外惑星を調査できる可能性があります。

観測精度の重要性と今後の課題

ただし、このAngerhausen氏らによる統計モデルには、ひとつ大きな注意点があります。それは、観測する各科学者の精度に強く依存してしまうという点です。

たとえば、本当はそこに生命のサインがあるのに見落としてしまうようなことが起こると、全体の結果が大きくゆがめられてしまうおそれがあるといいます。

さらに、観測装置がバイオシグネチャーを見逃してしまう可能性があるだけで、地球外生命の存在率に関する主張が信頼できなくなってしまいます。

見つからないからこそ見えてくるものがきっとある

Angerhausen氏は、観測を続ける意味について次のように述べています。

「重要なのは、観測した惑星の数ではなく、探しているものを観測できたのか、できなかったのか、その結果にどれだけ確信を持てるかです。もし注意を怠って、自分たちの生命を見つける能力を過信すると、大規模な調査でも誤った結論につながるかもしれません」

つまり、これからの調査では、不確実性やバイアスをしっかり考慮する必要があるということのようです。

研究者たちは、たとえ期待はずれに終わったとしても、不確実性を受け入れて適切な問いを投げかければ、すべての科学的結果から学べる教訓は必ずあるはずと強調しています。

科学が人生を語っている気がする…。

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