その名も「フワモコな悪魔」。約50年ぶりにヒマワリの仲間が新発見される

  • 2025年4月3日
  • Gizmodo Japan

その名も「フワモコな悪魔」。約50年ぶりにヒマワリの仲間が新発見される
Image: D. Manley / NPS

東京都の約1.5倍にあたる3,242平方kmの広大な国立公園でコインくらいの花を見つけるなんてミラクルすぎ。

テキサス州ビッグ・ベンド国立公園で、ヒマワリの仲間とされる未知の植物が発見されました。アメリカの国立公園で新しい植物の「属」と「種」が同時に確認されたのは約50年ぶりだそうです。

ヒマワリなのに悪魔?

この花は「Ovicula biradiata(オヴィクラ・ビラディアータ)」と名付けられました。パスタみたいな名前。

ニックネームは「Wooly Devil(ウーリー・デビル)」で、和訳するなら「フワモコな悪魔」といった感じでしょうか。今回の発見については、学術誌PhotoKeysに掲載されています。

ビッグ・ベンド国立公園は植物学者の間では有名な調査地なのですが、広範囲にわたって調べ尽くされていそうな場所でも、まだまだサプライズが隠されているんですね。自然は奥が深い。まあでも東京の1.5倍だったらサプライズだらけかも。

Image: Big Bend National Park

カリフォルニア科学アカデミーの植物分類学者で、今回の研究の共著者でもあるIsaac Lichter Marck氏は声明で次のように述べています。

「多くの人は、国立公園にいる植物や動物はもうすべて記録されていると思いがちです。しかし、こうした象徴的な保護地域でも、科学者たちはいまなお驚くべき新発見を続けています」

新種の花は、太陽みたいに明るく咲くあのヒマワリとはぜんぜん似ていないんですけど、ヒマワリと同じキク科に分類されているそうです。

そのあたりのことをLichter Marck氏はこう話します。

「DNAを解析し、当アカデミーの標本室にある他の植物と比べてみたところ、この小さくてフワフワした植物は、ヒマワリの仲間のなかでもまったく新しい種であるだけでなく、もっとも類似した近縁種とも十分に異なっているため、新しい属に分類するべきだと判断しました」

ちなみに、「属(genus)」は「種(species)」と「科(family)」の間にある生物分類のカテゴリーです(生物の分類は上位よりドメイン→界→門→綱→目→科→属→種)。

Image: C. Hoyt / NPS Wooly Devilをクローズアップで撮影するパークレンジャー。めっちゃ小さい

独自の進化が絶滅のリスクを招く

この花が最初に目撃されたのは2024年3月のこと。公園のボランティアが「iNaturalist(アイナチュラリスト)」という市民科学プロジェクトのソーシャルネットワークにその情報を投稿したのがきっかけでした。

この小さな植物は、白い毛でおおわれた葉っぱと、栗色のストライプが入った小さい花びらっぽい部分がついているのが特徴です。植物学者たちが「寝転んで観察するのがいちばん見やすい」というだけあって、本当に小さい。乾燥した岩だらけの場所に自生して、雨が降ったあとだけ開花するといいます。

Lichter Marck氏はこの花の特徴について次のように説明します。

「砂漠で生育する植物は非常に独特で、極度の乾燥と突然の豪雨という厳しい環境に耐えるために、独自の進化を遂げてきました。水を蓄えるための構造や、雨が降るとすぐに生育サイクルを急速に進める能力を持っています。

しかし、気候変動によって砂漠がより暑く乾燥するようになると、ウーリー・デビルのような高度に特殊化した植物は絶滅の危機に直面します」

さらに同氏によると、この植物が見つかったのは公園の北端にあるごく限られた3カ所だけで、すでに減少が始まっている可能性もあるとのことです。

名前の由来は地域の羊としま模様

この花の名前になった「Ovicula(オヴィクラ)」はラテン語で「小さな羊」という意味で、この植物のフワフワした葉っぱと、この地域に生息するビッグホーン(オオツノヒツジ)にちなんでいます。

そして「Biradiata(ビラディアータ)」は「二放射相称(2本の軸に沿ってのみ左右対称の構造)」という意味で、栗色のしま模様が入った花びらの特徴を表しているといいます。

ビッグ・ベンド国立公園の植物学者で、今回の研究の共著者でもあるCarolyn Whiting氏は、「この種が特定されて名前がついたことで、まだまだ解明すべきことがたくさんあると実感しています」と話しています。

また、Whiting氏はこの植物の個体群が公園内の別の場所にも生息しているのを期待しており、これからはライフサイクルや繁殖の仕組みなども詳しく調べたいとのことです。ただ、今この地域は干ばつの真っ最中なので、春の後半に新しい個体が顔を出してくれるかどうかはまだわからないのだとか。

Image: 左)Big Bend National Park 右)U.S. Drought Monitor 左の地図の赤く囲んだ場所がビッグ・ベンド国立公園。右は干ばつのレベルを表す地図。赤いほど乾燥。

たしかに、アメリカ干ばつモニター(U.S. Drought Monitor)の地図を見ると、ビッグ・ベンド国立公園がある地域はもっとも深刻な干ばつレベルになっています。おまけに、まだしばらく雨が降りそうな気配はありません。

小さな花に大きな期待

チームが研究室に戻って詳しく調べたところ、ウーリー・デビルは表面に「腺(せん)」と呼ばれる器官を持っていることがわかりました。この腺は他のヒマワリの仲間でも見つかっていて、抗がん作用と抗炎症作用を持つ化合物が存在するそうです。今回の新種にも同じような効果があるかどうかについては、検証が必要とのこと。

カリフォルニア科学アカデミーの研究者で、今回の論文の共著者でもあるKeily Peralta氏は、「この発見は、壊れやすく繊細な砂漠の生態系において植物の多様性を守ることが、私たちに多くの新しい知識や理解をもたらす可能性があることを示しています」とコメントしています。

東京の1.5倍もあれば、きっとどこかで咲いてくれるはず。ただ、同じ場所で咲かなかった場合、コインサイズの花を見つけるのはかなり大変そうな気がします。

Reference: Wikipedia, National Park Service, U.S. Drought Monitor

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