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プラスチックは太陽と細菌が分解、だからもう大丈夫?

  • 2024年4月11日
  • Gizmodo Japan

プラスチックは太陽と細菌が分解、だからもう大丈夫?
Image: shutterstock

2023年2月20日の記事を編集して再掲載しています。

まだダメです。

地球の海がどんなに汚染されてるか、考えると気が遠くなっちゃいます。だから技術的にどうにかできないの?って期待もありますよね。

たしかにそれに応えるような研究もあるし、プラスチックを食べる細菌の存在も明らかになってます。

じゃあそんな細菌を増やせばいいんじゃないの?なんて思われるかもしれませんが、専門家によれば、そんなに簡単じゃないようです。

プラスチックはどこに消えてる?

2023年1月と2月にMarine Pollution Bulletinに発表された王立オランダ海洋研究所の論文が、「消えたプラスチックの謎」に迫っています。つまり、海に捨てられるゴミがどこにいくのかを詳細に追っているのです。

人間は毎年約800万トンのプラスチックを海に捨てていて、換算すると1分毎にダンプトラックいっぱいのゴミを捨ててるようなものです。

でももうひとつ知られてないのは、そのかなりの部分がどこかに消えてることです。

海面に浮かんで浜辺に打ち上げられるのは、全体のたった1%ほどに過ぎません。専門家の間では、自然の何らかのプロセスがプラスチックの分解を助けて、海水に溶かしているのではないかという仮説が立てられています。

紫外線はプラスチックを劣化させる

2023年1月に発表された論文では、その謎のカギを太陽に求めています。

論文主著者でユトレヒト大学の博士課程に在籍するAnnalisa Delre氏はEartherに対しメールで説明しました。

人間がビーチで日焼けをするように、紫外線はプラスチックポリマーの分子構造も劣化させます。紫外線はつまり、長い炭素の鎖を細かく断ち切るのです。

プラスチックの劣化における太陽光の働きを理解すべく、Delre氏のチームはいろいろな種類の生プラスチック(工場で作りたてのプラスチック)と、太平洋ゴミベルト海面から採取したプラスチックを海水に入れて紫外線を当て、海と同じ状態を再現しました。

プラスチックから分解された化合物の量を測定したところ、それは年あたり2%に相当しました。

「びっくりするほどではないですよね」とDelre氏。

でもこれが毎年毎年起きていれば…数十年前に捨てられたプラスチックはもうなくなっていて、去年捨てられたものはまだ残っている、というわけです。

Delre氏らは、この観察結果や他の既存研究に基づき、人間が海に捨てたプラスチックの20%はすでに分解されたことを示すモデルを作りました。

細菌もプラスチックをちょっとだけ分解

プラスチックを分解するのは、太陽だけじゃありません。Delre氏と同じ研究所に所属するユトレヒト大学博士課程学生、Maaike Goudriaan氏は、海洋プラスチックの分解を助けているらしい細菌の研究結果を2月に発表しました。

海洋プラスチックを食べているらしい細菌の研究は今までにもありましたが、Goudriaan氏いわく、この研究は細菌が実際に食料としてプラスチックを利用している様子を観察し、そのプロセスをより正確に測定した初めてのものです。

Goudriaan氏のチームはRhodococcus ruberという細菌を、海洋プラスチックとともに人工の海水に入れました。プラスチックと細菌は密閉容器に入っているので、そこで発生する二酸化炭素量を測定すると炭素量を測定できる仕組みです。

それによって細菌が分解するポリマー量を推計したところ、結果は年間1.2%となりました。

近頃、プラスチックを食べる細菌の可能性が主要メディアにもちょこちょこ出てくるようになりました。フランスのCarbiosという会社は2021年、細菌がプラスチックゴミにどう役立つかを試すパイロットプロジェクトを開始しています。

技術があるからOKとはならない

Goudriaan氏は、細菌による海洋プラスチックの分解について聞かれることが多くあり、いろいろ考えてきたと言います。

「実用にあたってはいくつかのハードルがあると思います」とGoudriaan氏。

たとえば、海は大きくて、海流や風もあり、それは予測できるものもあれば、そうでないものもあります。海に細菌を入れたら、何が起こるのか? どこに行くのか? 正確にはわかりません。

細菌はプラスチックを食べるのか、それとももっと食べやすく分解しやすいものを食べるのか? 他の微生物との競争はあるか? 多分あります。

沿岸地域には行きやすいですが、海の向こうのゴミベルトはどうするか? 船や飛行機を出して細菌を放つのか? インパクトを出すのに十分なバイオマスをどうやって育てるか?

必要な資源やエネルギーはどれくらいか? そんな資源やエネルギーを費やす価値があるか、それとも細菌を放つことでプラスチック自体より悪影響があるのでは?

私は、細菌を放つことが、海洋プラスチック解消のための有意義な方法だとは思いません。でももっと多くのことがわかれば、その判断も変わるかもしれません。

またはどこかの時点で、人類はこれに投資するくらい必死になるのかもしれません。

Goudriaan氏もDelre氏も、彼らの研究がプラスチック問題への解決策になると考えてはいけないと釘を刺しています。

自然には自己修復能力があるように見えるかもしれません。でもだからといって、我々にはプラスチックが自然環境に行き着かないようにする責任がない、ということではありません。

Goudriaan氏は言います。

一般に人類は、技術的解決策が我々を環境危機から救うだろうと信じがちです。

でもときに、科学技術がある種のプロセスの害を小さくすることで、それが言い訳となって、もっと規模を大きくしよう、となってしまうことがあります。そして我々はまた、振り出しに戻ってしまうのです。

ニュージーランド「プラゴミ廃止! クリーンでグリーンなイメージに恥じない国になります! 」 ニュージーランドさん、いろいろとさすがです。今はどこでもサステナブルが叫ばれているので、脱プラスチックは私たちにとっても身近な話題です。筆者も(本当の意味でのエコなのかの議論は置いておくとして)マイボトルやエコバッグを持ち歩いたり、ものはできる限りリユースしたりしています。でも、かねてからエコの意識が高かった南半球もう一歩先をいっているみたい。IFLSによると、ニュージーランドは、2025年まで https://www.gizmodo.jp/2021/07/new-zealand-ban-plastics-by-2025.html

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