アンカー・ジャパンは、大規模な新製品発表会「Anker Power Conference 2025 Spring」を開催しました。この発表会では、スマートホームブランドのEufy、オーディオのSoundcore、プロジェクターなどのNebulaといった同社のブランドから多数の新製品が登場し、さらには同社初のカフェがオープンすることもアナウンスされました。
本稿では、本発表会で登場した主な新製品の概要や、タッチアンドトライでのインプレッション、カフェのプレオープンの模様をレポートします。
発表会の目玉ともいえる製品が、シリーズで国内150万台の販売を突破した完全ワイヤレスイヤホン「Soundcore Liberty 4」の後継機「Soundcore Liberty 5」です。特徴のひとつは、ノイズキャンセリング性能が大きく進化していること。環境の変化と装着状態を検知して最適な状態に調整する新技術を搭載し、特に環境音のノイズキャンセリング性能は前モデルの2倍に達しています。タッチアンドトライで試聴したところ、ノイズキャンセリング性能の高さに加えて、外音取り込みモードの秀逸さを感じました。まるでオープンイヤーイヤホンをしているかのような自然な音が聞こえるので、違和感がありません。
音質については、音のバランスを一から見直しました。9.2mmのダイナミックドライバーを搭載し、スピーカーに使われるバスレフ構造を採用。従来機で指摘されていた高音域が刺さる感覚を改善すると同時に、豊かな中高音域を実現しています。また、Soundcoreの完全ワイヤレスイヤホンとしては初めて、Dolby Audioに対応。BluetoothコーデックのLDACとDolby Audioの併用も可能です。
防水防塵はIP55に対応。バッテリー最大持続時間はイヤホン単体で12時間、ケース併用で48時間。ノイズキャンセリングをオンにしても、イヤホン単体8時間、ケース併用32時間なので、かなりのロングスタミナといえます。性能面でも、使いやすさの面でも、前機種から順当な進化を果たしました。
バッテリーなどを扱うAnkerブランドからは、ポータブル電源の新モデル「Anker Solix C1000 Gen 2 Portable Power Station」が登場。好評を博した従来機が、さらなる進化を遂げました。1000Wh以上の大容量を維持しながら、小型化・軽量化に成功。世界最小クラスをうたうボディは、前モデルから約7%小さくなり、約12%軽いものとなっています。
また、本体への充電速度が大幅に向上しているのも魅力。アプリから「超急速充電モード」に設定すると、満充電までにかかる時間はわずか54分です。
出力は、定格1550Wとなっています。アンカー・ジャパンによれば「一般家庭で使われるAC100V対応家電製品の99%以上を動かせるパワーがある」といい、ドライヤーと電子レンジなど、大きな電力を消費する家電の同時利用にも対応できます。
寿命の長さも特筆に値します。安全性にも優れるリン酸鉄リチウムイオン電池を採用し、4000回の充放電サイクル後でもバッテリー容量の80%を維持。「毎日使用しても10年間バッテリーの劣化を心配する必要がない」そうです。
充電方式は、家庭用コンセントに加え、ソーラーパネル、車のシガーソケットにも対応。災害への備えやアウトドア、車中泊など、幅広いシーンで活躍します。
Ankerブランドからは、バッテリー持続時間が世界最長のポータブル冷蔵庫「Anker Solix EverFrost 2」も発表されました。40Lと23Lの2モデルが用意され、40Lは最大105時間、23Lは最大52時間の連続使用が可能です。ただし、40Lモデルを105時間稼働させるためには、別売りのバッテリーとの併用が必要で、同梱バッテリーのみで動かす場合は最大52時間の連続稼働となります。
冷却性能も高く、庫内温度を25度から4度まで冷やすのにかかる時間は15分。天面のファンからの送風により、庫内をムラなく冷却します。
そのほか、モバイルバッテリーや充電コードの新製品が多数登場。なかでも筆者がおもしろいと感じたのは「Zolo Power Bank(10000mAh MagGo, Built-in USB-Cケーブル)」です。MagSafeに対応し、自立も可能なモバイルバッテリーながら、USB-Cケーブルが本体に内蔵されているのが特徴。有線と非接触の両方に対応しているのは非常にユニークです。
2025年1月に家庭用蓄電池に参入したアンカー・ジャパンですが、発表会では“蓄電池とポータブル電源の中間”にあたるシステムを発表しました。それが「Anker Solix Power Link System」です。
本システムは、マンションなどの集合住宅への設置が難しいという家庭用蓄電池の課題を解決するべく開発されました。その内容を一言で表すと「ポータブル電源に貯めた電力を、家庭のコンセントや照明向けに放電できるようにする」というものです。
コンセントを差し込むことでさまざまな家電を利用できるポータブル電源ですが、利用する機器を電源に直接接続する必要があります。ですから、家の照明に電力を供給することは不可能でした。本システムでは、家庭にある分電盤に新たな機器を取り付け、それとポータブル電源を接続することで、家庭向けの放電を可能にします。防災のために購入されることの多いポータブル電源ですが、本システムを導入すれば、その備えがより万全なものとなります。
家電などを扱うEufyブランドからも、多数の新製品が発表されました。そのひとつが、全自動クリーニングロボット掃除機「Eufy Robot Vacuum Omni E25」。本機は、同社のロボット掃除機史上最高峰に位置づけられるモデルです。
その特徴は、ローラーモップを採用した「HydroJet」システムです。拭き掃除をすると同時に掃除機内部でモップを洗浄するため、常に清潔なモップで床を拭き上げることができます。また、拭き掃除時に床にかける圧力は1.5kgと強力で、頑固な汚れもしっかり除去できます。
吸引力は、Eufyのロボット掃除機史上最強となる20000Paを実現。フローリングはもちろん、カーペットに挟まったホコリも強力に吸い取ります。また、「デュオスパイラルブラシ」により、髪の毛をブラシの中央に集約し、絡みつくことを防いでいます。
ロボット掃除機の基礎性能である障害物回避機能も最高峰。フロントに搭載されたAIカメラによって、小さな障害物も正確に検知して回避します。
タッチアンドトライでは、掃除機本体のサイズがやや大きめな印象を受けましたが、その分充実した機能と高い性能を備えていると思えば納得できる範囲内でしょうか。やや高さがあるので、ベッドやソファの下のスペースにしっかり入り込めるかなど、チェックしてから購入した方が良さそうです。
家庭向け防犯カメラ2機種も新登場。なかでもハイエンド機の「Eufy eufyCam S3 Pro 2-Cam Kit」は、「自宅にAI警備員を配置しているような安心を届ける」というコンセプトで設計された製品です。4K撮影に対応した2機のカメラと、ストレージ付きの通信機がセットになっています。
本機について特筆すべきは、夜間の撮影性能と人物の認識力です。従来の防犯カメラでは、夜間の撮影時には不鮮明になることを許容するか、スポットライトを当てる必要がありました。しかしスポットライトを照らすと、車のナンバーや人物の顔といった重要部分が白飛びしてしまうという問題が発生します。そこで本機は、F値を下げて得られる光量を増やし、AIによる色付け処理を施すことで、ライトなしでもクリアな映像の撮影を可能にしました。暗闇を撮影する様子を実際に見ましたが、明るいところを撮っているのとほとんど変わらないような印象でした。
また、従来の防犯カメラは赤外線センサーによって熱を検知することで、人の存在を認識していました。本機はそれに加えてレーダーを搭載したことで、人や物体の動きまでしっかり検知できます。さらに、AIによる顔認識で、誰が来たかを自動で検知。見知らぬ人が来た場合に、スマートフォンへ通知を送る機能も搭載されています。
一方の「Eufy SoloCam E30」は、防犯カメラのエントリー機としておすすめできる製品です。本機は、水平方向360度撮影に対応し、垂直方向にも70度の旋回が可能。画角も120度をカバーします。広い範囲を撮影できるので、最初の1台として導入する防犯カメラにはぴったりです。
F1.6の大口径レンズを採用し、夜間の映像もくっきり。人や車の動きを検知して、自動で物体を追いかけて撮影するAIモーショントラッキング機能も搭載しています。
またEufyブランドから出た製品として、「これはうれしい!」と思ったのが、Androidの「デバイスを探す」機能に対応したトラッカーです。Ankerのトラッカーは、これまで同社のアプリまたはiOSおよびMacの「探す」アプリにしか対応していなかったため、Androidに対応するのは今回が初となります。タグ型の「Eufy SmartTrack Link (Android用)」と、カード型の「Eufy SmartTrack Card (Android用)」がラインナップされています。
発表会に並んだ製品のなかで、独自性が際立っていたのが、世界最小の3Dテクスチャ対応UVプリンター「EufyMake UV Printer E1」です。UVプリンターはインクを紫外線ライトで硬化させるので、ガラスやアクリル、金属などの多彩な素材に対応します。ですが、従来のUVプリンターは大型で、使うにも専門知識が必要なものばかりでした。一方の本機は小さいうえに専用アプリによるサポートがあるため、初心者でも手軽に使用できます。
印刷にあたって高度な3Dデータの作成は不要で、アプリに印刷したい画像を読み込ませると、AIがそれに合った3Dデータを自動生成してくれます。アプリにはポートフォリオ機能もあり、自分の作品を公開したり、他人の作品を印刷したりすることも可能です。
本機の革新性はすでに高い評価を得ており、「Kickstarter」で海外向けに行なったクラウドファンデングでは、開始1時間での記録として同サイト史上最高となる7億円を達成。Kickstarterにおける日本国内向けのクラウドファンディングもすでにスタートしています。
Nebulaブランドからは、初となるホームシアターシステム「Nebula X1」が発表されました。プロジェクターとしては、Anker初となるRGB3色のレーザー光源を搭載しているのが特徴です。色の再現性が高いうえ、その明るさは3500ANSIルーメンを実現しています。さらに、同社史上最高となる5000:1のコントラスト比を実現し、画質はもちろん4K。その映像品質は、国際的な画質認証機関であるISFの認証も取得しています。
スクリーンからわずか2mの距離で100インチの大画面投影が可能。25度の電動ジンバルを搭載しているので、狭い場所にも設置できます。
スピーカーは、プロジェクターに内蔵されたものに加えて、2台のサテライトスピーカーが付属。本体と合わせて最大200Wのハイパワーかつ、4.1.2チャンネルの立体音響を奏でます。なお、Dolby Audioにも対応しています。デモでは、前後から迫るような音の迫力を感じられました。
ロスレス転送に対応したWi-Fi通信により、高品質なワイヤレス接続が可能。25ms以下の超低遅延も実現しており、映像鑑賞にとどまらず、ゲームも快適にプレイできます。Google TVを搭載しているので、Netflixなどの多彩な動画配信サービスをプロジェクター単体で利用することも可能です。
Anker初のカフェ「Anker Store & Cafe」が、5月24日から汐留にオープンすることも発表されました。新橋駅・汐留駅から直通の、カレッタ汐留の地下に店舗を構えます。筆者は5月23日に開催されたプレオープンにお邪魔しました。
↑Anker Store & Cafeの外観。地下道から見える場所にあります。名称の通りストアも併設されており、新たに発表された製品も陳列されていました。
このカフェのコンセプトは「チャージ」。テーブル・カウンター全席にQi2対応の非接触充電機が内蔵されており、さらにUSB Type-CとLightningの充電ケーブルまで備わっています。発表会に登壇したAnker Japan CEOの猿渡 歩さんは「カフェほど充電ニーズが高い場所はないが、満足に充電できるカフェは少ない」という分析から、今回のオープンに至ったと語りました。
メニューにもこだわっており、独自メニューが盛りだくさん。オリジナルのスパイスを調合したというカレーや、クラフトビール「Anker 休息充電エール」などを楽しめます。
筆者はカレーを試食しましたが、辛口のチキンカレーは辛さのなかにもしっかりとした甘みがあり、濃厚な味わい。甘口のバターチキンカレーは全く辛さはないものの、エスニックを思わせるような深みがあり、飽きのこない味でした。具もたっぷり入っており、デバイスのバッテリーだけでなく、お腹も満たせるカフェになりそうです。
店内のWi-Fiも爆速で、仕事が非常に捗りそうなこのカフェ。筆者の家の近くにできたら、入り浸ってしまいそう。この店舗を皮切りに、各地に広がることを期待したいところです。
【製品の価格・販売情報】
※価格はすべて税込
・Soundcore Liberty 5 1万4990円
・Anker Solix C1000 Gen 2 Portable Power Station 9万9990円
・Anker Solix EverFrost 2 10万9900円(40Lモデル)、9万9990円(23Lモデル)
・Zolo Power Bank(10000mAh MagGo, Built-in USB-Cケーブル) 7990円
・Anker Solix Power Link System 19万9900円(工事費込み)
・Eufy Robot Vacuum Omni E25 14万9900円/2025年夏頃発売予定
・Eufy eufyCam S3 Pro 2-Cam Kit 5万9990円
・Eufy SoloCam E30 1万7990円
・Eufy SmartTrack Link (Android用) 2990円
・Eufy SmartTrack Card (Android用) 3990円
・EufyMake UV Printer E1 32万9900円/クラウドファンディング実施中
・Nebula X1 44万9900円