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大阪万博のフィーバー感も手伝ってニッポンはにわかに「もういちど昭和」。そんな中、一世紀超の歴史を誇る西武プリンスホテルズ&リゾーツが、昭和時代を彩った名料理の数々をリバイバルする“美味しすぎる特別企画”を6月6日より敢行!
西武・プリンスホテルズワールドワイドを運営する西武ホールディングスの前身会社「箱根土地株式会社」の創業が1920年(大正9年)。つまり一世紀を超える歴史に連なるプリンスホテルが、昭和100年の今年のビッグイベントとして「昭和100年記念メニュー〜記憶に残る一皿〜」を実施する。
「昭和100年記念メニュー〜記憶に残る一皿〜」は全国各地33カ所・64レストランで期間限定販売される特別企画で、約500名の利用者にアンケートを実施、人気の高かったメニューを提供するというもの。平成・令和的な表現をするなら「プリンスホテル 昭和MENU総選挙」だろうか!?
「1920年に創業した箱根土地株式会社は1923年(大正12年)に『箱根グリーンホテル』でホテル事業に参入。以後、西武鉄道を整備しながら東京の大泉、国立、小平などに学園都市を拓き、戦後1947年(昭和22年)には朝香宮邸別荘地にて『プリンスホテル』を開業しました。
1949年(昭和24年)に『晴山ホテル(現・軽井沢プリンスホテル)』を、1953年(昭和28年)には『高輪プリンスホテル(現・グランドプリンスホテル高輪)』をオープン。ホテル事業に加え、苗場国際スキー場や大磯ロングビーチを始めとするレジャー事業や、『西武ライオンズ』の球団運営など多様に展開して参りました」
と語るのは西武ホールディングス上席執行役員の原田武夫氏。『CREA WEB』読者の中にも「そうそう!」と学生時代(フォーシーズンサークル!)を思い出す方、「子供の頃に両親とスキーに行きました」という方などおられるはず。早い話が、苗場だ! ユーミンだ! プリンスホテルだ! というわけ。
そうした歩みを刻んできたプリンスホテル、西武というグループの「味の記憶の集大成」というべき特別企画が「昭和100年記念メニュー〜記憶に残る一皿〜」なのである。
「昭和メニューの再現についてはわたしたちシェフの間でも数年前から話題にしていたことでした。というのも昭和100年はもちろんきっかけとしては大きいのですが、私たちが教えを頂いた先輩シェフたちの味をどのように継承していくかが、課題のひとつだったからです」
プリンスホテル下井和彦総料理長はそう語る。1985年の入社から40年。プリンスホテルの“味の指揮者”である。
「食事の終わった皿が真っ白だと、ああ美味しくお召し上がりいただけたと思いますし、逆であれば反省します。その繰り返しでやってきました。しかし『もう一度、骨付きローストビーフが食べたいね』『30年前に挙式した時のメニューを再現できますか』といったリクエストを頂きますと、プリンスホテルの歴史の長さと、いま再び往時のメニューを提供することの特別な意味を感じます」
昭和には昭和の、平成や令和には現在進行形のプリンスホテルの味があるが、それはクラシックに根差すものだという。
「料理はまったくのゼロから生まれるものではなく、歴史の中からその時々で再構築されるものでしょう。つまり新しい料理はクラシックから生まれるということです。振り返りますと、若い頃の私のビーフシチューは言わば『力づくでやっつけてやろう!』と例えられるようなガッツのある内容だったと思いますし、それが経験を経て素材を活かす、最高の状態を引き出すような作り方になってきました。プリンスホテルの料理は歴史に根差すクラシックでありながら、いま一番おいしいものを提供するために変わり続けているわけです」
メニューを大別すると、まず下井シェフのこだわりが詰まった「レストランコース」。迷ったらこれ、というど真ん中だ。
次いで「婚礼コース」。新郎新婦が親族や来賓客とハレの日に楽しみたいコース(1名2万7,500円〜)である。
加えてアラカルト全27メニューもスタンバイ! その中から必食メニューを3品紹介しよう。
まず「シーフードドリア」。これは東京プリンスホテル90年代の看板メニューで、全盛期には1日200件もの注文があったという伝説の逸品だ。「日比谷通りに面した開放感あふれる店内で、熱々のドリアを頬張る姿が多くみられました。このドリアは時間が経っても冷めないんですよ!」と下井シェフ。
次に「自家製コンソメのパイ包み焼」。下井シェフ曰く「もはや何も変える必要がない完成された料理ですね。パイを開いた時に香りがふわっと広がり、周囲のテーブルの方が『私にも』とオーダーされることがよくありました。『家庭で作るコツはありますか?』と尋ねられた時には『家庭では難しいので食べにいらして下さい』と答えます(笑)」。
3品目が「国産牛フィレ肉のポワレ ロッシーニ仕立て」。「定番中の定番。牛フィレ、フォアグラ、トリュフ、こんな贅沢な組み合わせはありません。私が入社した80年代中頃は日本では生フォアグラがなかなか手に入らず缶詰でした。あの頃はガチョウ、今はカモですが、いつまで食材として使えるかわかりませんね」
1960年広島生まれの下井シェフにとって、2023年5月に開催されたG7広島サミットで腕を振るう機会を得たことは、すなわち「故郷に錦」だったはずだ。
「海の幸、山の幸に恵まれた広島での開催。ご存じの通り岸田総理の故郷でもありますから、総理の料理に対する期待も大きかったと思います。総理ご自身を含め何度も試食が行われ、その料理の詳細、提供する意図などをレクチャーしました」
地元広島食材も豊富に使われた。
「広島の山々の恵みが海に循環するという地域の特性や、食材の宝庫であることを伝えました。定番のお好み焼きも提供し、昭和から続く伝統料理として列席者にお伝えできたと思います」
「私が思うに、昭和時代の料理界はグルメ激動の歴史です。私自身、戦後日本の最もホットなバブル期をプリンスホテルのシェフの一人として過ごせましたし、流通の発展によって多くの海外食材が鮮度の高い状態で使えるようになりました」
景気が上がれば外食も盛んになり、珍しい料理、貴重な食材が海外・現地に行かずとも日本で楽しめるようになる、その始まりが昭和時代だった。思えば料理漫画の代名詞『美味しんぼ』の連載開始は1983年(昭和58年)。美味=グルメという言葉が一般に普及したのもこの昭和最盛期だったのだ。
「昭和時代の良いモノづくりのように贅沢に素材を使い丁寧に作る。私自身そうしたグルメ体験を提供できたことに対して感謝の気持ちでいっぱいです。現在ではなかなか巡り合えない特別な食体験の機会として、『昭和100年メニュー〜記憶に残る一皿〜』を楽しんでいただけるのなら嬉しいですね」
レトロではあるが「あの頃はよかった」だけではないホテルグルメの現在進行形。違いのわかるみなさん! “あの頃のホテルグルメ”で、美味しいレトロの味くらべはいかが?
「昭和100年記念メニュー〜記憶に残る一皿〜」
昭和の時代に人気を博した西洋料理、日本料理、中華料理、スイーツのメニュー全27品を提供。全国33施設・64レストランで、2025年6月6日(金)〜2026年12月31日(木)まで実施。※各ホテル・施設により提供期間が異なる。
https://www.princehotels.co.jp/contents/showa100th/memorial-menu/
文=前田賢紀