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アラブ諸国の中でも、経済発展が目覚ましいUAE。その首都アブダビの魅力は、なんといってもその豪華さだ。
かつて話題を呼んだ金の延べ棒の自動販売機こそなくなってしまったが、日本の常識を超えるスケールと贅沢さは健在。今回は、そんなアブダビの注目スポットを3回にわたってご紹介する。
第3回目は、フランス本国を凌ぐとも評される美術館「ルーブル・アブダビ」と、2019年から一般公開された大統領府「カスル・アル・ワタン」へ。
「ルーブル美術館」といえばフランスのパリ。その初の海外別館が、アブダビのサディヤット島にある「ルーブル・アブダビ」だ。アラブ諸国初のユニバーサル美術館として、2017年にオープンした。
アブダビの別館では、世界各地から独自に収集した700点以上の美術品と、フランスから貸与される約300点を所蔵している。常設展示はその中から、年に4回開催される企画展では、フランスの国有コレクションが随時展示される。
美術館の建設はフランスとUAEの国家プロジェクトで、デザインを手がけたのはフランス人建築家ジャン・ヌーヴェル氏。汐留の電通本社ビルも手がけ、2001年には高松宮殿下記念世界文化賞を受賞している。
海上に建設されたこの美術館は、入り組んだ造りの四角い展示室の上に巨大な円盤が載っているデザイン。館内の至るところから水面を眺めることができ、その景観や建築自体も芸術作品として楽しむことができる。
古代から現代に至るまでの世界各地のさまざまな美術品は、時空を超えて歴史を語るすばらしいコレクションだ。美術の教科書に載っているような名画や彫刻、陶器、刀剣、装飾品など、どこかで見たことがあるような有名な美術品も多い。日本の浮世絵や屏風、甲冑(かっちゅう)、刀なども展示されている。
展示室は12テーマに分かれていて、全23室あり、古代から順を追って鑑賞できるように配置されているので、順路に従って巡ろう。
企画展では、パリの「ルーブル美術館」だけでなく、「オルセー美術館」「べルサイユ宮殿」「ポンピドゥー・センター」など、フランスの著名な施設から集められた美術品が展示されている。訪問前に、公式サイトで企画展のスケジュールを確認しておくのがおすすめだ。
「ルーブル・アブダビ」は、パリの「ルーブル美術館」に比べて入館者が少ないことも多く、ゆっくりと作品を鑑賞できるところも利点のひとつ。
館内にはカフェやレストランも併設されていて、疲れたら休憩することもできる。ショップもあるので、お土産や、気になった作品の絵はがき、美術書などを購入することも可能。たっぷりと時間をとって訪れたい美術館だ。
Louvre Abu Dhabi(ルーヴル・アブダビ)
所在地 Saadiyat Cultural District, Abu Dhabi, UAE
電話番号 +971 600 56 55 66
開館時間 火〜木曜10:00〜18:30、金〜日曜10:00〜20:30(最終入館は閉館15分前、ドームは23:00まで入館可)
定休日 月曜
入館料 65AED(18歳未満無料)
https://www.louvreabudhabi.ae/
2019年に一般公開が始まった比較的新しい見どころ「カスル・アル・ワタン(祖国の宮殿)」は、約7年の歳月をかけて2017年から一般公開されている大統領官邸。その豪華絢爛さは世界有数で、広さも38万平方メートル(東京ドーム約8個分)と桁違い。別棟の受付から官邸の入口まで、シャトルバスで移動するほど広大な敷地だ。
建物の入口を入り、エントランスホールのすぐ先に現れるのが「大ホール(The Great Hall)」。まずその規模に度肝を抜かれ、豪華絢爛な装飾にため息がもれる。中央の巨大なドーム天井は外光が差し込んで柔らかな光に満ちているし、天井も壁も床も美しい装飾で埋め尽くされているのだ。
装飾は、青、白、黄色の3色で構成されている。青はアラビア湾の水、白は純潔、黄色は砂漠の砂の色を表現。単なる装飾ではなく、すべてにストーリーが込められている。ホールの四隅には高さ6メートルの鏡張りの立方体オブジェが配され、中に入ると摩訶不思議な空間に迷い込んだような感覚を味わえる。
大ホールの周囲には、大統領官邸ならではの部屋があり、そのほとんどを見学することができる。「大統領への寄贈品(Presidential Gifts)」という展示室は、国内外の要人から贈られた貴重な品々が並び、まるで美術館のよう。なかには7世紀半ばの日本の甲冑も。ところが、その天井にはクリスタルの豪華なシャンデリアが架けられ、やはり美術館とは一線を画す贅沢なインテリアとなっている。
大統領官邸には、もちろん政治の局面で使われる部屋もある。「協力の精神(Spirit of Collaboration)」と名づけられた円形の会議室は、UAEの連邦最高評議会、アラブ連盟、湾岸協力会議など、重要な議論が交わされる場所だ。
壁には大型モニターが設置され、各テーブルには小さなモニターをはじめとする最新の設備が整っている。中央には三層構造で35万個のクリスタルが使用されたシャンデリアが吊るされており、その重さは12トン。職人技が光る一点吊りのデザインで、室内の音を吸収する静音機能も備えられているという。
一通り見学したあとは、「カスル・アル・ワタン図書館(The Qasr Al Watan Libraly)」でアラビアの知見を深めたり、「言葉の力(The Power of Words)」と名づけられたモニュメントで記念撮影を楽しんだりするのもいい。
「言葉の力」は、金色の横長球体の彫刻で、アラビア語のカリグラフィーで構成されている。そこに記されているのは、「富は金銭や石油ではない。富は人の心の中にあり、それは人々に奉仕することに捧げられなければ価値がない」というメッセージ。この言葉を遺したのは、UAE建国の父、シェイク・ザイード・ビン・スルタン・アル・ナヒヤーンだ。
「カスル・アル・ワタン」は現役の大統領府なので、本来の用途で使用される日には臨時休館となる。開館時間もよく変わるので、事前に公式サイトでの確認をお忘れなく。
Qasr Al Watan(カスル・アル・ワタン)
所在地 Al Ras Al Akhdar, Abu Dhabi, UAE
電話番号 +971 600 544 442
開館時間 11:00〜18:15(最終入館は17:15)、ショーは19:30〜(最終入場19:00)、図書館は日〜木曜11:00〜16:30。臨時休館、開館時間は公式サイトで要確認。
定休日 無休(図書館は金・土曜)
入館料 AED65(子供 AED30)
https://www.qasralwatan.ae/
【取材協力】
エティハド航空
https://www.etihad.com/ja-jp/
たかせ藍沙(たかせ あいしゃ)
トラベル&スパジャーナリスト。渡航160回超・70カ国超、スパ取材300軒超、ホテル取材2000軒超、ダイビング歴800本超。日々楽しい旅の提案を発信中。主な著書に『ファーストクラスで世界一周』(ブックマン社)、『美食と雑貨と美肌の王国 魅惑のモロッコ』(ダイヤモンド社)、『LOVE! ROSE 薔薇のチカラでもっとキレイになる!』(宝島社)。楽園写真家・三好和義氏の共著に『死ぬまでに絶対行きたい世界の楽園リゾート』『青の楽園へ 地球の奇跡、大自然の宝石に逢いに...』(ともにPHP研究所)がある。
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文・撮影=たかせ藍沙