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止まらない温暖化。今後5年間で世界平均気温がさらに上がるのはほぼ確実

  • 2025年5月31日
  • Gizmodo Japan

止まらない温暖化。今後5年間で世界平均気温がさらに上がるのはほぼ確実
Image: Shuttersotock

生きている間に「今後5年間は涼しくなります」ってニュースを見聞きすることはあるんかな?

「これからの5年間、地球は記録的な暑さに見舞われ続ける可能性が高い」。そんな衝撃的な予測を世界の気象専門機関が発表しました。

5月28日に世界気象機関(WMO)と英国気象庁が発表した最新の予想によると、地球はこれまでにないレベルの「暑い5年間」に突入しようとしているようです。この尋常じゃない暑さは、私たちの生活や地球の自然環境に、どのような影響を与えるのでしょうか?

また記録更新? 迫りくる猛暑

「まだ暑くなるの?」という感じですが、過去2年の異常な暑さを思い出すと、どれくらい暑くなるのか気になる、というか心配です。専門家の予測は、かなり具体的になっています。

1.5度の壁を超えちゃうかも: 今後5年間(2025年〜2029年)の少なくとも1年は、世界平均気温が産業革命前(1850年〜1900年平均)の水準と比べて1.5度以上高くなる確率が86%もあるそうです。100%って言われてるように感じます。さらに、5年間の平均気温が1.5度を超える可能性も70%になっています。

過去最高の暑さ、再び?: 同じく今後5年間で、観測史上もっとも暑かった2024年の記録を塗り替える年が出てくる可能性は80%にのぼります。

まさかの2度超えも?: 今後5年間の少なくとも1年で、世界平均気温が産業革命前の水準よりも2度以上高くなってしまう可能性は1%と予想されています。まさか、ね。

パリ協定の「1.5度目標」はどうなるの?

ニュースで見聞きするパリ協定の目標は、世界平均気温の上昇を産業革命前の水準と比較して「2度よりも十分低く保ち、1.5度に抑える努力をする」とされています。

「じゃあ、1年でも1.5度を超えちゃうともう目標達成は無理なの?」と思うかもですが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、この1.5度目標は「20年間の長期的な平均気温」で判断されるので、1年だけ1.5度を超えたからといって、すぐにパリ協定の目標がアウトになるわけではありません。

ですが、もう1.5度目標は竜巻並みの強風の前のともしびになっているようです。

気候科学者のジーク・ハウスファーザー氏は、今回の報告を踏まえたうえで、過去数年の暑さと今後の気温上昇予測から、2027年がこの長期的な平均気温が1.5度の壁を突破する最初の年になる可能性が高いと指摘し、「地球工学抜きで1.5度超えを防ぐ方法はない」と述べています。2027年って、再来年じゃ…。

科学者は、1.5度を超えると取り返しのつかないような深刻な気候変動や異常気象を引き起こすリスクを高めると繰り返し警告してきました。聞き流されてきましたけど。

なんでこんなに暑いの?

この止まらない気温上昇の背景には、いくつかの要因があると考えられています。

最大の原因は、主に人間活動によって排出される温室効果ガスです。これに加えて、5〜7年周期で発生する自然変動であるエルニーニョ現象が一時的に気温を押し上げています。

現時点で観測史上もっとも暑い年に君臨している2024年は、エルニーニョ現象の影響を強く受けていました。通常であれば、次のエルニーニョ発生時に今回の記録が更新されるはずなのですが、温暖化は未知の領域に入っている感があるので、エルニーニョが関係ない年に過去最高を更新しても驚きはありません。

また、地球を冷やす役割を果たしていた大気汚染が減少したことや、再生可能エネルギーが増えてはいるものの、依然として世界全体で温室効果ガスの排出が増え続けていることも、気温上昇を加速させている要因として挙げられています。

私たちの生活への影響

気温上昇だけではすまないのが温暖化の怖いところ。私たちの生活には、具体的にどんな影響があるのでしょうか?

異常気象がもっと激しく、もっと身近に: 気温が上昇すれば、より強力なハリケーン、経験したことがないような大雨、深刻な干ばつ、頻発する熱波や大規模な山火事など、異常気象のリスクが高まります。

コーネル大学の気候科学者であるNatalie Mahowald氏は、「世界平均気温の上昇は抽象的な概念のように聞こえるかもしれませんが、現実の生活では極端な気象現象の可能性が高まること、つまり、より強いハリケーン、より激しい雨や干ばつなどを意味します。世界平均気温が上昇すれば、より多くの人命が失われることになるのです」と警鐘を鳴らしています。

ポツダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム所長は、世界平均気温が0.1度上昇するごとに、「より頻繁でより極端な事象(熱波だけでなく、干ばつ、洪水、火災、人間活動によって激化したハリケーンや台風)を経験するでしょう」と指摘しています。

北極の氷が消える? 海面も上昇?: 北極圏では、世界の他の地域よりも3.5倍速で温暖化が進み、氷の融解が加速すると予測されています。これは海面上昇にもつながり、沿岸部に住む人々や生態系に大きな影響を与えます。

経済や日々の暮らしにも影: WMOのKo Barrett副事務局長は、「残念ながら、このWMOの報告書は、今後数年間は状況が改善しないことを示しています。これは、経済や日常生活、生態系、地球への負の影響が増大し続けることを意味しています」と厳しい見方を示します。

現状とこれから

温暖化は、科学者の予想を上回る速さで進んでいます。IPCCは、7年前の報告書で、世界平均気温が産業革命前より1.5度上昇するのは2040年頃と予測していましたが、現実にはどんどん前倒しになっています。

公共政策を専門にしているカリフォルニア大学サンディエゴ校のデビッド・ビクター氏は、締結前からパリ協定の1.5度目標の実現可能性に疑問を呈しており、「産業システムには途方もない慣性があります。それはすぐには変わりません」と述べています。

では、1.5度目標が難しくなってきたいま、どうすればよいのでしょうか? 一部の科学者や国は、1.5度をいったん超えてから、大気中の二酸化炭素を減らして気温を下げる「オーバーシュート」に期待を寄せています。

しかし、ハウスファーザー氏は、「オーバーシュートに対処するために数十兆ドルもの巨額を投じるかどうかについて、私は非常に懐疑的です」と、その実現性に疑問を呈しています。

たしかに、いま再生可能エネルギーに投資をしない各国政府が、もっとコストが高い大気からの二酸化炭素直接回収に投資をするとは考えにくいですよね…。

仮に1.5度目標が本当に難しくなれば(間違いなく難しくなります)、パリ協定の野心的じゃないもうひとつの目標である「2度未満」に焦点が移るかもしれません。

それについてハウスファーザー氏は、「待てば待つほど、状況は厳しくなるでしょう。今後10年間何もしなければ、現在1.5度目標について話しているように、2度目標について話すことになるでしょうね」と、対策の遅れを懸念しています。

私たちは、温暖化という人類史上最大の課題に直面しています。今回発表された最新の予測は、過去もっとも深刻な「温暖化対策待ったなし」というメッセージを私たちに突きつけています。

Source: Met Office, AP, The Washington Post

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