好評発売中の「CREA」2025年春号では、韓国の伝統を再解釈し、モダンにアップデートした食や韓屋宿をはじめ、癒しの「済州島」やカルチャーの街「坡州」まで、2025年の韓国をたっぷりと取材しました。グルメ・カルチャー・ファッション・コスメまで、全108ページの大ボリュームでお届けする本誌から一部を抜粋してご紹介。
昨年、成田からの直行便が再開した済州。
コバルトブルーの美しい海と漢拏山に見守られる自然豊かな島を巡る。ゆっくりと時間の流れる済州島で予定は未定の2泊3日、「おかっぱとボブ」が人に出会う旅。
【アクセス】
昨年成田、済州間の運航が再開したが、羽田・成田からはソウル、釜山で乗り換えが便利。成田から直行便の所要時間は2時間50分、関西空港からは2時間で到着。
【旅人】おかっぱとボブ
いつもおかっぱの撮影担当衛藤キヨコと時々ボブの文章担当小池花恵。相棒ふたりで旅に出て、時々instagramを更新中。
記事末尾には「CREA」2025年春号で紹介したスポットをまとめた便利なGoogle Mapも。
最終日。食いしん坊で有名な元アナウンサーのチョン・ヒョンム司会のロケ番組「チョンヒョンムケフェク2」で見たジンソン食堂に向かう。米炊き窯の蓋・ソットゥコンの上で焼く、ほかではお目にかかれない分厚さのサムギョプサルと古漬けキムチのムグンジがなんともおいしそうだったのだ。
熱くなった蓋の上に並べられた豚肉の表面が、少し時間が経つと透明な脂で光り出す。ムグンジは何年ものですかと聞き終わる前に「3年だよ」とハルモニから答えが飛んできた。ムグンジのしょっぱさと肉汁がしっかり調和するように計算された肉の厚み。溢れる肉汁に慌ててご飯をかきこみ向かいを見ると、おかっぱの茶碗は空っぽだった。
お昼は済州市に移動し、野菜中心の体に優しい料理が食べられる「ダソニ」を訪問。
蓮の葉ご飯、エゴマ蕎麦、どんぐりの澱粉を固めたトットリムッを注文したのだが、付け合わせのサラダのドレッシングの絶妙な酸味に驚く。
味の秘密をオモニに尋ねると「ドレッシングは果物をベースにつくるのだけれど、今日はパイナップルが効いているのかも」と答えてくれた。真心を意味する정성(チョンソン)という言葉が頭に浮かぶ。済州で出合った味の隅々に感じるオモニたちの真心に、心と体が満たされる。
最後は済州の名産でもあるお茶を味わいに、ソウルから移住してきたご夫妻が営む「ホウォル」を訪ねた。
静かな土地に住みたくて移住したという夫のソンウォンさんが、趣味ではじめたタレ(茶礼)を生業にしたそうだ。タレは高麗時代まで存在していたお茶を飲む儀式のようなもの。90分のコースでお茶とデザートをゆっくり味わい、済州の白茶とお茶にまつわる器も購入できる。
ホウォルがあるのは木々に囲まれた南元邑というところ。静かで緩やかな時間が流れている場所だった。
帰りのタクシーで漢拏山の麓を通過しながら、済州島4・3事件のことを思う。7年7ヶ月の間に、3万人近くの人々が犠牲になったこと、歴史と地続きでいまの旅があること。帰国の直前ホテルの近くを歩いていると、旅の間にあちこちで見かけた赤い実の樹木をおかっぱが写真に収めていた。
モンナムと呼ばれる木の花言葉は「嬉しい知らせ」。少し歩くと、別のモンナムに出合う。またここにおいでと言ってくれているような気がした。
この旅を通して、済州は何度も訪れて、静かに少しずつ真心を込めて仲良くなっていきたい場所になった。
ジンソン食堂(チンソンシクタン/진성식당)
電話番号 010-8794-9257
ダソニ(다소니)
電話番号 064-752-5533
ホウォル(호월)
Instagram @howol_teahouse
おかっぱとボブ
いつもおかっぱの撮影担当衛藤キヨコと時々ボブの文章担当小池花恵。相棒ふたりで旅に出て、時々instagramを更新中。
ご紹介したお店を含む、ソウル&済州島の観光スポットがまるわかりのGoogle Mapはこちら! 続きは「CREA」2025年春号でお読みいただけます。
文・コーディネート=小池花恵
写真=衛藤キヨコ