【温泉ステイで巡る台湾】泰雅(タイヤル)族の山里料理と肌がツルスベになる秘境の美人湯! 新竹県・尖石温泉郷でトロントロンの“美容液”を体感する

  • 2025年4月11日
  • CREA WEB

錦屏美人湯館(ジンピンメイレンタングアン)の野外温泉の一角に癒し湯空間がありました。

今回ご紹介するのは台北から2時間弱で辿り着く尖石温泉郷(ジァンシウエンチェンシャン)。

 台湾には100を超える温泉があります。台湾に行ったら、温泉に入らないなんてもったいない! 1895年〜1945年の日本統治時代に温泉文化が広がり、熱い湯に入れるのもうれしいところ。水着で入る温泉だけでなく、男女別に裸で入れる「日式」の大浴場や、温泉付きの部屋で自分好みに温泉を注いで楽しめるリゾートも多いのです。個性ある温泉とともに異なる民族文化や食文化も大きな魅力です。


 新竹は台北からローカル鉄道でも1時間ほどで、観光スポットとしてはレトロな街並みの内湾(ネーワン)老街も人気です。今回のお目当ては、とってもツルツルになるという噂の美人温泉と泰雅料理のおいしい旅ごはん。ということで、内湾から車で約30分、秘境の美人湯・尖石温泉郷へ向かいます。泰雅族を中心とした原住民族の郷でもあり、その暮らしや食文化を大切に継承していこうとしている地域でもあります。

■野外温泉と日本式の半露天風呂で美人湯を満喫


澄んだ山の空気をたくさん浴びて、温度の異なる温泉をホッピング。

 尖石温泉郷は、豊かな山里に自家源泉をもつ温泉施設や宿が点在しています。今回の宿「錦屏美人湯館(ジンピンメイレンタングアン)」は、1,530メートル掘削をして湧出した温泉で、宿泊施設とレストラン、そして、少し離れた場所に日帰り入浴も可能な温泉施設があります。宿のチェックイン時に露天風呂券(温泉施設入浴券・バスタオル付)がもらえます。まずは、明るいうちに水着と水泳帽を持参して温泉館へ。野外露天風呂エリアは水着で楽しむ温泉で、温度の異なる浴槽をホッピングしたり、渓谷を眺める東屋の一角には、アロマ湯や竹炭湯などの癒し湯(冒頭写真)もあって、山の緑を眺めながらリラックス。


男女別に裸で入れる日式スタイルの半露天風呂。

 一番のお気に入りは、広々した半露天風呂の「日式温泉」。男女別に裸で入れる温泉で、温度も日本の温泉のように40度前後。「ふぅぅう。」やっぱり温泉はこうでなくちゃと寛げます。泉質はナトリウム−炭酸水素塩泉、pH7.5の弱アルカリ性で、「美人湯」と呼ばれています。カルシウムとマグネシウム、そして重炭酸イオンも多く含まれていて、とろりとした感触にうっとりします。肌に潤いを与えながら、なめらかに整えます。


地元名産の梅ジュースは湯上りに最高。

 入浴施設のカフェで、湯上りに地元名産の梅で作ったオリジナルの梅ジュース。ほどよい酸っぱさが体に染み渡ります。

■秘境のオアシスと呼びたい「錦屏美人湯館」


全室温泉付きでシンプルステイが心地よい。

「錦屏美人湯館」のホテルは、秘境にあると思えないすてきな建物。お隣にレストラン棟があって快適に過ごせます。部屋は、スタンダードなツインでも広めの湯船の温泉がついているので、自分の好きな時に源泉を注いで好みの温度で入ることができます。

 今回は、別名「ペントハウスルーム」と呼ばれている最上階にある部屋に泊まってみました。


ペントハウスルームは屋上に造られた離れのような部屋。

広いテラスに楽しい「壺湯」がふたつ。

部屋には大きな湯船の温泉付き。

 温泉好きにとって、とにかくうれしいことは、台湾の温泉ホテルでよく見かける間取り。部屋の部分と温泉の部分がハーフ&ハーフで同じくらいの面積なのです。これは、ゆっくり温泉が楽しめてとても幸せ。台湾もゴージャスな温泉リゾートのご褒美系もありますが、ふらっと温泉で癒されたい時に気軽に泊まれる宿も人気があります。

 ペントハウスルームはダブルベッドのツインで、スイートルームとして使用するほかにファミリールームとして数人で泊まることもできるそうです。広いウッドデッキに出ると壺湯が2つ。ひとりがようやく入れるサイズで五右衛門風呂みたい。ひとつは温泉、ひとつは冷泉を注ぐことができます。室内には深くて巨大な湯船の温泉とシャワールームがあって、ほぼベッドルームと同じ広さ。勢いよく温泉を注いでざぶんと浸かると、トロントロンの美容液にすっぽり包まれている感覚、できることなら、このままずっと浸っていたいと思ってしまいます。

■タイヤル族の食文化を伝えるレストランへ


タイヤル族の衣装をまとった木彫りの人々がお出迎え。

タイヤル料理の達人、女将でありシェフでもある古屏生さん。

 夕食はホテルのレストランでも食べられますが、台湾原住民族の文化を知りたくて、タイヤル族の食文化を伝えるレストラン「山清休閒農園」へ。ここで料理を作る古屏生さんはタイヤル料理の達人で、メディアやイベントでも大活躍。新竹県原住民部落大学・山清部落教室を開催して地域の子供たちにタイヤル族伝統料理体験も行っています。

■初めて食べる料理なのに美味しくて懐かしい


台湾原住民料理「樹豆牛皮凍」。

 これは、いったいなんだろう? 前菜か、デザートか? でも最初に出ているのだから、きっと前菜的なお料理のはず。と、おそるおそる食べてみると、あら、美味しい!台湾原住民族料理のひとつ「樹豆牛皮凍」という料理でした。樹豆(ツリマメ)は、和名「キマメ」で亜熱帯から熱帯地域では栄養豊富でポピュラーな食材、そして牛皮の部分は、豚足のような食感で旨みたっぷり。日本でいう煮凝りに似ているけど、もうちょっともっちりプルプルの食感。これは、絶対に肌プルプルになるはず。


馬告(マーガオ)ソーセージでお酒がすすむ。

 豪快な肉料理の真ん中は、タイヤル族の料理に欠かせない馬告(マーガオ)入りの腸詰。馬告は、黒胡椒のようなピリッとした辛味とレモングラスの香りにたとえられる山椒のような豊潤さを併せ持つ伝統のスパイス。粒のまま入っている馬告ソーセージは、ほんのり甘辛でスパイシー、お酒が進んでしまう味わいです。豚肉の馬告焼きや、野鳥も皮がパリパリで元気がでる美味しさです。


台湾には見たこともない山の野菜がいっぱい。

 くるんと巻いた葉先が可愛い「山蘇(サンスー)」は、台湾原住民の食事に欠かせない山の野菜のひとつ。鉄分、カルシウム、食物繊維を豊富に含みシャキシャキとろりとした食感でとても美味しい。山地に育つシダ植物で和名はオオタニワタリ。


もちキビのおこわと地酒のにごり酒。

 もちキビは大きな葉っぱにくるんで蒸し焼き、芳ばしくてもちもちで、ついつい食べてしまって、気が付けばはち切れそうにお腹いっぱいです。

 台北からちょっと足を延ばすと、豊かな自然に育まれた秘境の美人温泉が待っています。そこには、台湾の原住民族の美と健康を支えてきた、美味しくて元気になる食文化が継承されていました。

新竹県・尖石温泉郷「錦屏美人湯館」

https://www.jp-spring.com.tw/

山清休閒農園

https://www.facebook.com/Ciwas.Ku


石井宏子(いしい・ひろこ)

温泉ビューティ研究家・旅行作家。一年の半分は国内外の温泉を旅して取材執筆する。台湾の温泉の独特なゆったり感が気に入り、台湾各地の温泉に滞在。温泉・自然・食で美しくなるビューティツーリズムを研究。杏林大学 兼任講師(温泉療養学)、国際中医師、日本温泉気候物理医学会・日本温泉科学会会員。著書に「感動の温泉宿100」(文藝春秋新書)、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖」(世界文化社)、「新・温泉ビューティ」(グリーンキャット)など
●オフィシャルサイト https://www.onsenbeauty.com/

文・写真=石井宏子

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