2023年12月18日発売のCREA Due 「楽しいひとり温泉。2024」でご紹介した石川県・七尾市のオーベルジュ「一 能登島(ひとつ のとじま)」。元旦の能登半島地震で被災しましたが、4月19日より営業を再開しています。 「楽しいひとり温泉。2024」の記事を支配人・麻里さんへのインタビューとともに再構成して掲載いたします。
穏やかな七尾湾の先に立山連峰を望み、能登島随一の絶景と能登の豊かな恵みを味わい尽くす。そんな自分だけの贅沢な時間を過ごせる北陸初の鮨オーベルジュ「一 能登島」。365日朝日を楽しめることから、宿の名前の由来は「新しい一日が始まる場所」。しかし昨年9月の開業後、4カ月も経たずして能登半島地震が起きた。
「開業後初の元旦を迎えるにあたり、厨房では丹精込めてお夕食の仕込みをしておりました。16時半に予約されたサウナを楽しみに待つお客様もいらして、スタッフはサウナの薪の準備やお部屋へのデリバリーなど忙しくしつつも、七尾湾にはいつもと変わらず穏やかな景観が広がっていました」
支配人の麻里さんが振り返る。
「突然警報のアラームが鳴ったかと思うと、ミシミシ、ガタガタと大きく揺さぶられました。棚やオブジェが倒れ、館内アナウンスを流してお客様にご安心いただかなければ……と準備をしていたところに、さらに大きな揺れが来ました。自力では立っていられない恐ろしい時間でした。スタッフから『厨房のあらゆるものが割れてしまった』と報告があり、お客様の避難準備をしている間も警報アラームはけたたましく鳴り続けています。館内着のままのお客様を車で避難所にお連れし、残ったスタッフでお荷物の整理と館内の火の元確認を進めていたところに大津波警報が発令されました」
幸いにも宿泊予定だったゲストに怪我などはなかったが、スタッフと共に数日間の避難生活を過ごすことになったという。
「1月2日の明け方、今までに見たこともないような素晴らしい日の出を見ました。本来であればお客様に笑顔になっていただける最高の朝ですが、『一睡もできなかった』という方のお気持ちを思うと申し訳なくて涙が溢れました」
被災から約3カ月間の復旧作業を経て、4月19日に「一 能登島」は営業を再開。修繕費を集めるクラウドファンディングには760万円の支援が集まったという。「まだ復旧には程遠い地域がたくさんあるなかで迷い悩みましたが、我々がいまできるのは能登の魅力を伝え続けることだと考えて、再開を決断したのです」
麻里さんは営業再開にあたりこう語る。
「能登の魅力は訪れてこそのものです。今も穏やかな七尾湾には毎日毎時、表情を変えてゆっくりとした島時間が流れていて、どこか懐かしい気持ちになる不思議な魅力があります。ここだから感じることのできる地球との一体感を、能登の恵みの幸を味わいにお越しください」
◇◇◇
CREA Due 「楽しいひとり温泉。2024」より、「一 能登島」のページを抜粋して紹介します。
穏やかな七尾湾の先に立山連峰を望み、能登島随一の絶景と能登の豊かな恵みを味わい尽くす。そんな自分だけの贅沢な時間を過ごせる北陸初の鮨オーベルジュ「一 能登島」。
この地で身も心も新たに生まれ変わる格別のひとときを演出してくれるのが、七尾湾の絶景を抱く薪サウナだ。
薪の遠赤外線の熱は肌あたりがよく、じんわりと体をあたためてくれる。キンと冷えた水風呂も本格的。香り高いカミツレなど19種類を特別にブレンドした薬草湯も、研ぎ澄まされた五感に沁みわたる。しかし何よりも、安らかなととのいをもたらしてくれるのは目の前に広がる能登の穏やかな自然、木々の揺れる音や潮風と“ひとつ”になる瞬間なのだ。
食事は星獲得の本店を金沢に構える「鮨みつ川」の大将・光川浩司氏が監修。能登の風土が育んだ上質な食材を江戸前鮨で堪能できる。
オールインクルーシブのため、10種類以上の地酒や、能登の果実や野菜を使ったノンアルコールなど、ドリンクが滞在中フリーなのも魅力。鮨とともに、サウナ上がりに、至高の一杯で極上の休日に祝福を。
一 能登島
所在地 石川県七尾市能登島須曽町42-4
電話番号 0767-85-2150
ひとり料金 1泊2食つき87,120円〜(貸切サウナ利用付き)
ひとり対応 通年可
https://hitotsu-notojima.com/
●JR和倉温泉駅より車で約10分
●サウナ室 75度/水風呂 14度
文=鈴木 希、CREA編集部
写真=榎本麻美