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鎌倉駅西口の目の前! 酒好きが 吸い込まれていく小さな酒場。 春の訪れを感じる小料理と日本酒を

  • 2024年4月20日
  • CREA WEB

地元民がほっとする酒場へ!

 鎌倉でダンナさんと暮らしながら、ハワイや沖縄、もちろん東京でも料理の本を作ったり、取材をしたり。料理と旅の編集者・赤澤かおりさんは、どんなに忙しくても元気いっぱいなのです。

 そんな赤澤さんが忙しい毎日のなかでほっとするのはやっぱり、地元・鎌倉に戻って、あるいはおうちで目一杯働いたあとに、お酒を飲む時間。基本的に前々から予約をとるよりも、その日のお腹に聞いて食べたいものと飲みたいものを求めて出かけます。

 今回のシリーズは、「春の素材を食べるなら?」をお題に、ワインや日本酒を片手に楽しむお店へご案内。鎌倉の旬を意識したら、赤澤さん曰く「鎌倉イケおじのいる店」3選が裏テーマに!? 確かに、カウンターひとり飲みとイケおじは好相性!

 今回は、駅近で地元の人たちがほっと憇う、日本酒の酒場へ。


酒好きにたまらない見ごたえのある黒板メニュー


黒板にずらりと書かれた今日のおすすめ。読んでいるだけで思わずごくりと唾を飲み込む。

 2軒目は鎌倉駅西口の目の前! 細〜い階段をのぼった一番上、3階にある和食屋さん。今年でこちらも17周年目。私も長いことお世話になっております。

飲みすぎやりすぎを戒める、「酒は三献に限る」という言葉がありますが、ここでは自分たちのペースでのんびりやりたいという想いが込められた店名。夫婦二人で切り盛りするゆるやかな空気感にしっくりきます。ちなみにお店の読み方は「さこん」です。サンコンではないのでお間違えないように。

 絵を描いたり、器をつくったりするのが趣味というご主人の石松邦雄さんは、キャンドルを使ったイベント会社で働いていたという経験をお持ちで、そのときのアーティスティックな経験が今も料理そのものに、盛り付けにとちらほら見え隠れするイケおじです。


絵を描いたり、器をつくったりするのが趣味というご主人の石松邦雄さん

 料理に合わせた日本酒をおすすめしてくれるのは、共に切り盛りしている奥様のたみさん。1杯目から次のものまで私はいつも彼女にお任せして飲むのが好きで、料理に合わせてくれるのはもちろん、偶然かもしれませんが、彼女の流れで飲むと変な酔い方にならないのです。それも含めてすごく信頼しております。

 だから、いつもはワイン派の私ですが、やっぱり日本人ですからね〜、日本酒が飲みたいなぁと思うときがあるんです。春はタケノコに、ホタルイカ、山菜など芽吹く季節にぴったりのおいしいもの揃い。それを日本酒でちびりちびりやりたいときにはここへ。で、ちびりちびりとは真逆に、毎度、ついおいしくてもりもり食べ過ぎてしまうんですけどね。


「ホタルイカとふきみそのなめろう」900円。店主作のこの器がまた飲みたい気持ちをそそるなぁ〜。

 私の定番お気に入りつまみは、チーズ豆腐と酒盗。季節の刺身はおまかせして盛り合わせてもらいます。先日、初めてなまこをいただきましたが、苦手と思っていたのがウソのよう。大好きになりました。こういうものって下処理とか味付けによると思うんです。今までのはなんだったんだろうと思う、フレッシュさ。またすぐ食べたいなぁ。

 春のおすすめは、たたいたホタルイカにふきみそをまとわせた夢のコラボ、ホタルイカとふきみそのなめろう。まさにちびりちびりやるには欠かせないひと皿。永遠に飲み続けられそうで怖いくらいでした。それにしても丸ごとホタルイカはよくありますが、たたいたホタルイカって新鮮! より味わい深くなる感じでこれはもう日本酒でしょー! という流れに最初からぐいっともっていかれます。


「たけのこの木の芽みそあえ」850円。この木の芽みそだけでもなめていられる!

 お次はたけのこの木の芽みそあえ。これはもういうまでもなく、ドンピシャりな組み合わせ。かみしめるたびに広がる木の芽みそをまとったたけのこのおいしさに、何度もうーんと唸り続けてしまいました。

 他にもカキフライや、ふきのとうの天ぷらなど春メニュー、そして通年の鶏の天ぷらなど、食べ逃したくないものだらけでしたが、胃袋と相談し、ここへきたら欠かすことのできない半田麺で締めくくり。締めたくなくても、締めたくなるのがここの半田麺。今回は、鎌倉の市場に出回りはじめたというトマトを丸ごと煮びたしにしたものがどんとのった麺を。このトマトをくずしながらやさしい味わいのおだしと合わせ全部飲み干すと、あら不思議、また一から飲み始めたくなる感じ!? で困った、困った。

締めは半田麺。ここにも季節の味わいが


「煮びたしトマトのせ半田麺」1,400円。鎌倉野菜のブロッコリー、みょうがも。

 奥様の弟さんが日本酒をメインに扱う酒屋さんということで、なかなか目にすることのないものも揃っていると、日本酒好きの友人が驚いていました。私はお酒はおいしければいいというざっくりな人で、いつも友人たちに教わってばかり。今回おすすめいただいた広島の賀茂金秀 うすにごり生や純米吟醸 春ノ薫風紀土などは、特に春の素材ともドンピシャリでした。


おすすめの日本酒がずらり並ぶカウンター。

 ドンピシャリといえば、器。ここで使われている器は、石松さんがつくられたものや、飲み友達でお客さんがつくられたものがほとんど。初めに出てくるこの箸置きも兼ね備えた取り皿の美しい佇まいは、石松さんの仕事きっちりな感じがよく出ているもののひとつ。箸置きを落としてしまうお客さんがいたことから考えたという優しさにも納得の器でした。


店主作の器を見ながら飲むのも、ここの楽しみのひとつ。

 料理の味わいの優しさも、カウンターひとり飲みの手持ち無沙汰がないのも、心地よくてついつい長居してしまう。たぷんと注がれた日本酒の美しさに見惚れてぼんやりしていると、隣の席にひとり、またひとりと日本酒飲みのひとり女子。今宵も友達できました。


しみじみ飲むにはほど遠く、いつも大笑いしてしまうカンタートーク。

三献(さこん)


ビルの3階まで階段で。

所在地 神奈川県鎌倉市御成町11-3 ウィンズ駅前ビル3F
電話番号 0467-61-0610
営業時間 12:00〜14:00(要予約)、17:30〜22:30(L.O. 21:30)
定休日 火曜、第1・3・5月曜
Instagram @sakonkamakura

赤澤かおり(あかざわ・かおり)

料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny

文=赤澤かおり
撮影=榎本麻美

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