鎌倉でダンナさんと暮らしながら、ハワイや沖縄、もちろん東京でも料理の本を作ったり、取材をしたり。料理と旅の編集者・赤澤かおりさんは、どんなに忙しくても元気いっぱいなのです。
そんな赤澤さんが忙しい毎日のなかでほっとするのはやっぱり、地元・鎌倉に戻って、あるいはおうちで目一杯働いたあとに、お酒を飲む時間。基本的に前々から予約をとるよりも、その日のお腹に聞いて食べたいものと飲みたいものを求めて出かけます。
今回のシリーズは、「春の素材を食べるなら?」をお題に、ワインや日本酒を片手に楽しむお店へご案内。鎌倉の旬を意識したら、赤澤さん曰く「鎌倉イケおじのいる店」3選が裏テーマに!? 確かに、カウンターひとり飲みとイケおじは好相性!
まずはフレンチイケおじが営むビストロをどうぞ。
1軒目は、鎌倉駅西口、通称「裏駅」から徒歩3分の「ビストロ オシノ」。今年17年目を迎えるこちらは、その名の通り気軽なフレンチレストラン。
オーナーでシェフでもあり、今はフロアを担当する星野裕亮(ひろあき)さんの陽気で楽しい雰囲気と寡黙だけれど、仕事きっちりのシェフ皆川力也さんのナイスコンビが織りなす料理と空間に惚れて通うこと10年以上。
このところ、カウンターでひとり飲みする女性もよく見かけるようになりました。それもこれもこの気さくで、優しい雰囲気ゆえ。
さて、春のおすすめはというと、タケノコと春の貝のサフランソースから始まり、三崎の真鯛の蒸し物 アサリと季節の豆のソース、鴨ロースト いちごソースなど。この時期はホワイトアスパラガスもおすすめです。
「タケノコと春の貝のサフランソース」は、貝汁の旨みにクリームとバターを加えた濃厚ソースで旬のタケノコをいただく贅沢なひと皿。合わせたワインはアルザスのBRAND & FILS /L’OISEAU ET LE BOUQUET 2021。ソースもおいしくてパンでぬぐって最後までぺろり(こちらは三崎の「充麦」というパン屋さんのパンを使用していて、それも美味!)。
ひとりでも果敢に挑みたいのが、真鯛の蒸し物。アサリのおいしい汁を吸った季節の豆のおいしさにまず驚き! 思わず一粒ずつ大事にもぐもぐ。そのソースを纏わせながらいただくフワフワの真鯛にまたまた驚き! なんですか、この優しいお味は!!
春といえばの、めでたいお魚は味わいも、見た目の桜色も春らしくて、気分が上がりまくってワインをおかわり。おすすめいただいたのは、オーストリアのMEINKLANG 2022。飲みやすくてお値段も手頃なこちらは、昼からの気軽飲み系にもピッタリでした。
さて、春一番のお目当てはここのイチゴを使ったメニュー。今まではフォアグラとイチゴの組み合わせでしたが、この春はなんと鴨とのスペシャルな取り合わせ! さすが〜。
薄く切られて出てくることの多い鴨ですが、この分厚さ! しかもやわらかくてジューシー。イチゴの甘酸っぱい味わいとの相性も抜群でした。
いつもは赤を飲まない私ですが、このときばかりは思わず赤ワインをオーダー! 星野さんが選んでくれたのは、ブルゴーニュ地方のSAINT AUBIN ROUGE LE BAN 2017。これがよく合う! 白ばかり飲んでいないで、たまには料理に合わせてというのもいいもんですな。
フレンチレストランで修業を重ねてきたおふたりの生み出す料理は、地元の季節野菜や果物、魚介類をこうして上手に取り合わせ、きっちりフレンチにしすぎないのが私的にいつもツボ。
フレンチって、むしろきっちりしないほうが難しいと思うけれど、あえてそうしない自由さがここの料理の良さであり、オーナーのおおらかな人間性を感じるところ。その粋な自由さに活かされた素材が、またいい仕事してくれていて、お酒がどんどんすすむ、すすむ。この気持ち良さとリラックス感は、ほんと鎌倉らしいなといつも感心させられます。
私はいつも自分のお腹の具合に合わせて単品でいただくことが多いですが、コースはお得になっているので初めての人にはおすすめです。
オードブルとメインが1品ずつのAコースで3,190円、オードブル2品とメイン1品のBコースは4,290円。オードブル1品とメイン2品のCコースで4,400円。好きな組み合わせをオードブル、メインから自由に組み合わせできるのもうれしいですよね。
アラカルトの場合、料理は2〜3人分です。お一人の場合は注文時に相談してみてください。きっと良きに計らってくれるはず。
そういうかゆいところに手が届くやさしさもここのお店の特徴かもしれません。カウンターに座ってワインと共に、ゆっくり料理を味わいながらオーナーとおしゃべりしているうちにいつの間にかローカルのみんなとお友達に!? なんてこともよくある楽しいここは、疲れたときに元気をもらう場所でもあります。
ビストロ オシノ
所在地 神奈川県鎌倉市扇ガ谷1-8-6 小黒ビルB1
電話番号 0467-55-5327
営業時間 11:30〜14:00、18:00〜22:00
定休日 不定休
https://geuk700.gorp.jp/
赤澤かおり(あかざわ・かおり)
料理雑誌の編集部を経て、フリーランスに。料理と旅の編集者として活動。料理本のほか、30年以上通い詰めるハワイについての執筆、単行本編纂も多数。近著に「人生にはいつも料理本があった」(筑摩書房刊)。
Instagram @kaoriakazawa.akalohasunny
文=赤澤かおり
撮影=榎本麻美