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「パリ 合羽橋」みたいに検索して(笑) 料理家・山田英季さんが旅先で集めた 各国のうつわ&その付き合い方

  • 2024年4月25日
  • CREA WEB

 うつわのある暮らしには憧れるけれど、どんなふうに集めていったらいいんだろう……? うつわを手軽に、上手に暮らしに取り入れるためのヒントを求めて、達人たちを訪ねました。


◆Vol.12 お話を聞いた人 山田英季さん


料理家の山田英季さん。

 料理家、and recipe 代表。東京都生まれ、兵庫県育ち。フレンチやイタリアンなどの料理人を経て独立。空間や食イベントのプロデュース、レシピ本の著述、メニュー開発など多岐にわたり活躍する。


旅先でうつわを買うのが好き

 旅が好きなんです。

 多いときだと、国内含めて1年で10回はするでしょうか。旅先でうつわを買うこともすごく多いですね。どこかへ行くときは必ず現地のフリーマーケットや料理道具の専門街、そしてのみの市を訪ねています。例えば「パリ 合羽橋」みたいに検索すると、必ずどこかしら出てくるんですよ(笑)。


「以前はどんな人が使っていたのだろう」なんて考えつつ。

 これはいつだったかな、イギリスのカーブーツセールといわれる、いわゆるのみの市で買ったものです。ロンドンで開かれていた市で。もちろん紅茶を入れて、スコーンをのせてもいいけど、違うものをのせたらどうなるだろう……と想像するのが好きなんですね。和菓子をのせてもいいかもしれない、あるいはまったく違うものを置いてみようか、と。


イギリスで長年ジャム作りに使われていたという鍋。

 これもカーブーツセールで手に入れました。銅製の立派なものです。売ってる人に「こんないいもの売っちゃうの?」と訊いたら「私のおばあちゃんがこれでジャムを煮ていたんだけど、私はジャム作りをしないから、誰か使ってくれる人がいたらいいなと思って」と。じゃあ僕が買うよ、とすぐ決めて。帰国してこれであんこを炊きました。そんなあれこれを、みやげ話で誰かにするのもいい。そういうエピソードが味の印象をさらに良くしてくれることもあります。

うつわに対してお題を考えて「ひとり大喜利」するのが楽しい


韓国で見つけた食器のセットは頑丈なつくり。

 これは韓国の釜山(プサン)の骨董品通りで手に入れたもので、戦争中に国策的に作られたものらしいんですね。詳しいことは分からないんですが、戦争中でも装飾を付けてしまうところにクレイジーな執念を感じるというか、欠かせないものなんでしょうね。ごはんは当時、白米だったのか雑穀入りだったのか。スープ皿に入れていたのはわかめスープか、チゲ的なものか。このスープ皿にあえて今サラダを盛ってみたらどんな感じになるか……と想像するのがやっぱり唯一無二の面白さなんです、自分にとっては。


描かれた鳥のひとつひとつ眺めつつ、描き手に思いを馳せる時間が楽しい。

 自分で料理を考えながらスタイリングしていくとき、「異国と異国を合わせる」というのがテーマのひとつ。そうですね、例えば……「フランス人がインド料理を作ったらどうなるだろう?」、または「フランスに住んでる日本人が現地のお皿に和食を盛りつけたら?」みたいな感じで考えていく。自分にお題を出して、ひとりで大喜利をやってるような感覚というか(笑)。そうしてお題を自分に出して考え続けていると「その手があったか!」みたいな発想が出てくること、あるんです。


山田さんに料理のインスピレーションを与えてくれる諸国のうつわたち。

 外苑前にある「西洋民芸の店 グランピエ」も好きなお店ですね。柄が印象的な青いボウルはスペインのもの。見てるうちに、僕はサッポロ一番塩らーめんを盛りたくなったんですよ。レモンの輪切りをのせて、オリーブオイルと黒こしょうをかけて。やっぱりぴったり合って、おいしくて。もちろんサラダを盛ってもいいし、うどんなんかも意外ときれいにハマる。

 世界各国のうつわや料理道具に囲まれていると、いろんなインスピレーションをもらえます。使っていくことでそれぞれの食文化の意味にも気づけることが多い。ナイフとフォークを使う国のうつわはそれなりの重さがないと、使っていて動いてしまう。対して日本のうつわは口や鼻に近づける行為が多いからとても軽く作られる。韓国の汁物は直接飲まず、スッカラを使って飲みますよね。だからぐつぐつと熱く煮て作ることができる。

 様々なものを身近に置きつつ、各国のうつわを取り混ぜて「この手もあるな!」と考えながら、僕なりの大喜利スタイリングを楽しんでいきたいです。

おまけ 健康を考えたうつわ選び


日々の食事はあえて小皿や小鉢を多用して健康的に。

 小さいうつわを買い足していくのは、個人的なおすすめ。健康のために多品目を食べるようにしているんですが、あえて小皿に盛っています。全部作ろうとせず、例えば納豆、漬物、刺身に昨日のあまり物なんて構成でいい。洗い物は増えてしまうけど、箸の動くところをたくさん作ることで早食いせずにすみ、消化にやさしい食べ方ができるんです。

白央篤司

フードライター、コラムニスト。「暮らしと食」がメインテーマ。主な著書に、日本各地に暮らす18人のごく日常の鍋とその人生を追った『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)、『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』(大和書房)がある。
https://www.instagram.com/hakuo416/

文=白央篤司
撮影=平松市聖

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