名古屋の「旧豊田佐助邸」で、趣向を凝らしたレトロ建築を見学する醍醐味を味わって

  • 2025年5月17日
  • ことりっぷ


名古屋市東区にある「旧豊田佐助邸」は実業家、豊田佐助の邸宅。大正時代に建てられた洋館と和館があり、調度品なども含めてほぼ当時のままに残されている貴重な建物です。建築当時の最先端の技術や高級な材を取り入れて、細部まで趣向を凝らした建物は見どころが満載。レトロな建物見学の楽しみが詰まっています。
「旧豊田佐助邸」があるのは、名古屋市東区の“文化のみち”と呼ばれるエリア。名古屋城から、かつては徳川家の屋敷だった徳川園にかけての一帯で、名古屋の近代化の歩みを伝える貴重な歴史遺産が多く残されています。なかでも「旧豊田佐助邸」の周辺は、白壁・主税町(ちからまち)と呼ばれる地区で、江戸時代の武家屋敷の面影が感じられる落ち着いた街並みです。
豊田佐助は、トヨタグループの創始者、豊田佐吉の弟。豊田紡織の社長や豊田自動織機の監査役などを歴任し、1962(昭和37)年に亡くなるまでこの屋敷で暮らしました。白いタイル張りの洋館と、落ち着いた和館で構成されているのが特徴の邸宅。洋館は1923(大正12)年より前、和館は1923(大正12)年の建築と伝えられています。現在は名古屋市が所有者から無償で借用して、一般に公開。予約不要で、入館料も無料で見学できます。
洋館の入口から入って、まずは応接室へ。室内のあちこちに施された意匠に注目してみましょう。まずは天井のシャンデリア。植物をモチーフにした繊細なデザインで、金具もランプ部分も当時のままだそうです。天井の四隅にある換気口には、吉祥の鶴と亀、そして「と・よ・だ」の文字が。1960年代に一般家庭に普及したといわれるステレオが、応接室の一角に設置されています。
洋室では珍しい和風の棚と地袋(収納部分)もお見逃しなく。棚の立派な天板や、地袋の扉に描かれたユニークな人物の絵に興味をそそられます。この絵は国宝の銅鏡をモチーフにしているそう。由来については詳しい説明書きが添えられているので、参考にしながら鑑賞してみてくださいね。
応接室を出て、お隣の和館へ行ってみましょう。建物の中央に4つの和室があり、周りに廊下を配した造り。和室の襖絵や欄間、左右に開閉できる小障子を組み込んだ猫間障子など、見どころが尽きません。襖絵などは部屋ごとに異なるので、じっくり見比べてみてくださいね。
見どころは和室だけではありません。和館の廊下にはなんとガス灯があります。室内にガス灯?と思いますよね。当時この地区には、すでに都市ガスが整備されていたそうですよ。また、屋内にお手洗いがあるのも大正時代には珍しいことだったとか。下水が整備されていたから屋内に設けることができたそうです。この地区が特別なエリアだったことが感じられますね。
2階は客間になっていて、1階よりもさらに豪華なしつらえ。和館の南西の部屋は一番豪華な付け書院造りで、床の間には枇杷台という一段高い棚も設けられています。襖絵は歌川広重の「近江八景 瀬田の夕照」を題材にして描いたと伝わる優美なものです。金箔や銀箔を用いて、瀬田の唐橋や彦根城などが描かれているので、じっくり鑑賞してみてはいかがでしょう。
豪華に飾るだけでなく、お客様に心地よく過ごしてもらえる工夫もされています。客間の南側では風通しが良くて涼しいので夏に使われていた夏障子、洋館2階では風通しと明かり取りのために設けられた波型無双連子(なみがたむそうれんじ)を見ることができますよ。洋館も2階は和室になっています。落ち着いた和室なのに廊下から外は洋風の造りで、なんだか不思議な感じがします。
旧豊田佐助邸の見どころを抜粋してお伝えしましたが、このほかにもまだまだたくさんの見どころがありますよ。入口には見どころを示した案内が置いてありますし、火曜、木曜、土曜の 10時~15時30分には ボランティアさんが常駐していて、館内のガイドをしてくれます。案内してもらいながら見学すると、見逃しがないのでおすすめです。見どころが尽きない貴重な建築物、旧豊田佐助邸を訪れて、大正時代の裕福な暮らしを感じてみませんか。

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