※山の栗は自然に生えているように見えて、持ち主さんがいることがほとんどです。収穫する際は、土地の持ち主さんに確認しましょう。
こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
甘くてホクホクな秋の味覚「栗」。秋の始まりに、黄緑色の未熟な栗のイガが落ちているのを見かけたことはありませんか? 栗のイガを割ってみると、中の実は白っぽく、まだ熟していないことがわかります。
でも、食べられないと処分するのはちょっと待って! 今回は、ちょっとしたひと工夫で未熟な栗をおいしくする方法をご紹介します。
大好きな栗拾い、今年も楽しみにしていたのですが、9月頭の大きな台風が、栗の実の約8割を落としていってしまいました。
栗の木の根もとには、緑色のイガに包まれた若い栗たちがゴロゴロ転がっています。年に一度のお楽しみなのに、こんなの悲しすぎる……!
「この栗って、食べられるのだろうか?」
気にはなったものの、このまま放置していたら猪に食べられてしまうのでひとまずは収穫していくことに。
中の実を取り出して持ち帰ろうとしたのですが、イガが未熟すぎて、なかなか開かない! さらに、なんとかこじ開けても、栗の実がイガにくっついて剥がれない!
うーん、どうしたものか。悪戦苦闘の末、イガつきのままいったん家に持ち帰ることにしました。
この栗をどうしようかと考えていると、ご近所のおばあちゃんが「天日干ししておくと、自然とイガが割れて開けやすくなるよー。栗の実も、数日置いておくと茶色くなるよ」と教えてくれたのです。
これは試してみるしかない! ということで、さっそく未熟なイガをザルに乗せ、天日干ししてみました。
ついでに、イガから無理やり取り出したものの、真っ白すぎておいしくなさそうな栗の実も一緒に干してみます。
イガや栗の実の、天日干し経過観察天日干し1日目
実験1日目の栗は、こんな感じ。イガは緑色で、栗の実はベージュのような色をしています。
庭に干して1日目のイガ。
栗の実も干してみます。初日は真っ白でした。
天日干し2日目
実験2日目になると、陽が当たっている部分のイガが茶色く変色してきました。
栗の実も先端のほうから茶色っぽくなってきています。ただ、色づいたところと、そうでないところがあり、マダラになっています。
この時点で、イガから取り出していた栗の実をちょっと試食。茹でてみると、鬼皮がやわらかく、切り込みを入れただけで手でポロリと剥けました。食べてみると……おいしい!
ホクホクというよりは、しっとり、もっちりした食感で、爽やかな甘さもありました。
栗って水分が少なくパサパサした印象なので、若い栗ってこんなにもしっとりとしておいしいんだ! と驚かされました。
鬼皮だけでなく、渋皮もやわらかく手でペロリと剥けたので、調理が簡単でした。
天日干し3日目
さて、実験3日目。イガのほうは、50〜60%ほど茶色くなってきました。陽にあたる部分が茶色くなるので、ひっくり返して全体が茶色くなるように干していきます。
実験3日目の栗の実。だいぶ茶色いです。
イガから取り出していた栗の実は、全体が薄茶色に染まってきました。
この実験、イガが全部茶色くなるまで続けてみようと思います。
天日干し4日目
実験4日目。ついにすべてのイガが茶色くなり、割れて中の栗の実が見えてきました。おおお! ついにここまで!
近づいて見ると、栗のイガが割れ、中の実が見えています。
栗の実のほうも、しっかり色づいています。ただ、触ってみると鬼皮と中の実が分離して、パカパカしてきた感じがします。ちょっと実がしぼんじゃっているかな……?
天日干しはこれにて終了! さっそく、イガから栗を取り出していきたいと思います。
イガが割れている栗は比較的取り出しやすかったのですが、正直、ちゃんと熟した栗と比べると、まだまだ取り出しづらい。ナタやらペンチやらを駆使して取り出しました。
【1】が、イガから取り出して天日干しした栗で、【2】が、イガに入ったまま天日干しした栗。
並べてみると、色の違いがよくわかります。
色の比較
【1】のほうは、少し薄い茶色に。【2】は、お店に売っている栗のような深い茶色に色づきました。
中の実の比較
それでは、中身はどうでしょうか。栗の実を切ってみると、【2】の栗は殻いっぱいに実が詰まっていますが、【1】の栗は実が小さくなっています。
【1】の栗を2日目に食べたときは実がふっくらしていたので、ちょっと乾燥させすぎたのかも? と感じました。
イガから取り出して乾燥させた【1】の栗は、実がちょっとしぼんでいます。
味わいの比較
食べてみると、【1】は実がしぼんで、ちょっと食べ頃を逃してしまったような味に感じました。とはいえ、食べられないような味ではなく、加工すれば十分おいしくいただけます。
一方、【2】は甘さもしっかりあり、実も大きく、熟した栗に劣らない風味だと感じました。
未熟な栗の天日干し、実験結果は……?それでは、4日間実験してみた結果と感想を、まとめてみたいと思います。
1 イガから取り出した栗は、天日干し2日目くらいがおいしい
あの若い栗の、しっとり、もっちりとしたおいしさが忘れられない……!
干しすぎると実が縮んで風味が飛んでしまい、ちょっと物足りないので、ある程度茶色くなったくらいで食べてしまうのがいいかもしれません。
栗を取り出すときは、長靴でイガを押すようにして取り出します。
2 天日干しするなら、イガに入れたままのほうがいい
イガに入った状態のまま干したほうが、栗の色づきもよく、中の実も縮まらず、おいしく食べられました。
ただし、そもそもが未熟な状態で落下してしまった実なので、通常と同じ色に近づけようと天日干しし過ぎると、干しすぎてしまうような気もしました。イガが8割がた茶色くなったら、取り出して食べてもよさそうです。
3 鬼皮・渋皮が下処理なしで剥けるので、調理が簡単
栗を守るかたい鬼皮も、手で剥けます。
未熟な栗のメリットとしては、鬼皮と渋皮が剥きやすいところ。通常は手ごわい皮を剥くために、煮たり、冷凍したりするのですが、そういった手間がなく、調理が簡単になるので、これはうれしい発見でした。
栗ご飯をつくるハードルがグッと下がり、もちろん味もおいしい! 以前の記事でご紹介した、渋皮つきのままさっと揚げる「栗の素揚げ」もおいしそう。
ただ、イガから取り出すのはめちゃくちゃ大変だったので、結局プラマイゼロくらいなのかな(笑)……?
我が家の栗のレシピはこちらの記事を参考にしてもらえるとうれしいです!
もしどこかで未熟な黄緑色のイガつき栗を見かけたら、ちょっとひと手間、天日干しするだけでおいしく食べられるかもしれません。「これは食べられない」と諦めずに、一度試してみませんか?今までにない栗の味を体験できるかもしれませんよー!
※日当たりが確保できない住宅の場合は、風通しのいい場所に置いてみてください。
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畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森