秋の山で見かける野生のイチジク「イヌビワ」って知ってる? おいしい食べ方3選も

  • 2024年9月24日
  • コロカル

※野生植物は毒を持つものもあるため、必ず毒性がないか調べてからつくりましょう。※採取する際は、土地の持ち主さんに許可をとってからにしましょう。

こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。

「スーパーには並ばない、オツな味」と題した、あまり知られてはいないけれど、身近かつ、意外とおいしい植物たちをご紹介するシリーズも3回目!

ほうれん草のような味わいの野草「ハゼラン」、市販品のあの味が楽しめる「アロエ」に続き、初秋の山の味覚「イヌビワ」と、そのアレンジレシピをご紹介します。

* * * * *

スーパーには並ばない、オツな味 #03 「イヌビワ」

棚田で草刈りをしていたら、狩猟採集が大好きなシェアメイト・けいたくんが道端の木になっている小さな黒い実をもぎ取り、「これ、食べられるんですよ!」と教えてくれました。

トラックの荷台に乗る女の子と、トラックに寄りかかる男性が談笑している写真。

けいたくんと娘。

彼は以前、山奥でガスなし水道なしのハードな暮らしを実践していた野生児。先日は、庭で見かけたヘビを素手で捕まえていて、そのワイルドっぷりには驚かされるばかりです。

野生動物だけでなく、植物の生態にも詳しい彼が今回教えてくれたのが「イヌビワ」の実。田んぼの近くなどでよく見かける雑木ですが、この実が食べられるとは知らなかった! 

赤紫色に色づいてきた、木になるイヌビワの実。

イヌビワの実。もう少し黒っぽく熟すのを待ちます。

ただし、食べられる実(雌株)と、食べられない実(雄株)があるのだとか。

赤くておいしそうに見える「雄株」は、黒く熟すことはなく、食べても甘みはなくて、パサパサしています。

さらに、実のなかには「イヌビワコバチ」という小さな蜂が棲んでいます。とても小さいため、見た目にも、食べても、わからないほどだそうですが、食べるのはちょっと抵抗がありますよね。

山でイヌビワの実を見つけたら、黒く熟した「雌株」を選びましょう。

抱っこしてもらい、イヌビワを収穫する女の子の写真。

「高い所のイヌビワをとりたい!」という娘。抱っこしてとらせてもらいました。

「イヌビワ」って、どんな味?

イヌビワはクワ科イチジク属で、見た目も味もイチジクに似ています。実の大きさは1〜2センチで、夏から秋にかけて黒っぽく熟していきます。熟れた実を手にとるとやわらかく、半分に切ると小さな種がたくさん入っていて、イチジクにそっくり。また、実を傷つけると、ペトペトした白い乳液が出てきます。

イヌビワの断面写真。トロトロの果肉の中に小さな種がたくさん入っている。

見た目は小さなイチジク。山の鳥たちも大好きなので、実の収穫は野生動物たちとの競争です。

名前の由来は「果実の形がビワに似ているけれど、ビワほどおいしくない」ことから来ているそう。(イヌは“劣る”という意味)

確かにビワほど華やかでジューシーさはありませんが、素朴な甘さとプチプチした食感が楽しい。

これはいろんな料理に合いそうだぞ! とワクワクしてたくさん収穫しました。

イヌビワを収穫する女性の写真。

イヌビワをどんどん摘んでいくシェアメイトのまほちゃん。

生食、ジャム、お酒のあてに! イヌビワを使ったレシピ

まずは、そのまま「生食」で。お皿にイヌビワを盛り、いただきもののブルーチーズを添え、庭で摘んだ和ハッカ、自家製のハチミツ、最後に畑のフェンネルを散らして完成! 

白と黒と緑で見た目もおしゃれ。お酒に合いそうな上品な味でした。

イヌビワのこの風味、イチジクのレシピがそのまま応用できそうです。

イヌビワ、チーズ、ミントなどを乗せたお皿にハチミツを垂らしている写真。

蜂蜜たっぷり。幸せな味です。

続いては「ジャム」。鍋にイヌビワ、イヌビワの半分〜同量のお砂糖、お水少々、白ワイン少々を入れて、くつくつと煮込みます。最後にレモン果汁を入れると、色がパッと明るくなりきれいな赤紫色のジャムができあがりました。

小皿に乗ったイヌビワジャムの写真。鮮やかな赤紫色で、ちいさな種がたくさん混ざっている。

いちごジャムのような見た目です。食感も結構似ているかも。

イヌビワジャムに生ハムとチーズを合わせ、パンと一緒にいただきます。生ハムなどの塩味とジャムの甘酸っぱさが混ざり合って、こちらもお酒が進む味。

ジャムはお肉にも合いそうだぞ、ということで、クラッカーにイベリコ豚のパテと一緒に乗せたら、飛び上がるほどのおいしさでした。

クロワッサンに生ハム、チーズ、ジャムを乗せている写真。

レストランで出てきてもおかしくないような、完成度の高い味わい。

単体では素朴な味のイヌビワですが、ジャムにすることで一気に華やかな味になりました。小さな種の歯応えもアクセントになって、食べ方としては一番好きかも! 

そして最後は、「焼きナスとイヌビワのバルサミコ酢和え」。以前、イチジクと焼きナスの和え物を食べたときにとってもおいしかったので、きっとイヌビワでもいけるはず! と思い挑戦してみました。

焼きナスとイヌビワのバルサミコ酢和えの写真。

焼きナスとイヌビワのバルサミコ酢和え。庭のミントを合わせました。

ナスをしっかり焼いてから皮を剥き、イヌビワと混ぜたらオリーブオイル、バルサミコ酢、塩、胡椒で味つけ。

おいしいけれど、イチジクに比べると甘さが控えめなので、ちょっとぼんやりしたかな? という印象。少し蜂蜜を加えてもおいしいかもしれません。

移住して10年。イヌビワを知って、思うこと

3つのアレンジレシピでイヌビワを味わってみましたが、イチジクに比べると、甘みが少ないため、ジャムにしたり、甘さをプラスして濃いめに味つけするとおいしさが倍増します!

白いホーロー鍋でイヌビワジャムを煮ている写真。

私はジャムで食べるのが一番好き!

今まで、食べられそうな木の実を山で何回か味見したことがありましたが、苦かったり、酸っぱかったりで、おいしかった試しがないので、イヌビワも眺めるばかりになっていました。

でも、こうしてまたひとつ新しいことを学び、山で食べられるものが増えました。

山でとれたものを使っておいしいものがつくれると、サバイバル力が上がったようですごくうれしくなります。10年以上暮らしていても、まだまだ新しい学びや発見がある、これが田舎暮らしの醍醐味だと思います。

次は何をつくろうかなあ。果実酒にしてもおいしいらしいので、次に収穫したらお酒に漬けてみようかな? まだ熟していない実もたくさんあったので、イヌビワ収穫、しばらく楽しめそうです。

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CHIHARU HATAKEYAMA

畠山千春

はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。ブログ:ちはるの森

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