厳格なまでに60〜70年代のアメリカンロックのみ! まるでアメリカの場末のバーだった

  • 2024年9月19日
  • コロカル

音楽好きコロンボとカルロスがリスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは神奈川県横浜市。

厳格なまでにいにしえのアメリカンロックにこだわる店

コロンボ(以下コロ): 〈LAST WALTZ〉! 店名からしてボク好み。屋号だけで飲めちゃう。

カルロス(以下カル): だろうね。こういうオールドタイマー、うっとうしいほど多いんだよ。しかも、この手の人はやたら音楽に詳しいから手に負えないわけ。

コロ: そう、ディスるなよ。『LAST WALTZ』と聞くとざわつかないわけにはいかない世代なんだから。あれは1976年の出来事で……。

カル: はいはい、時は1976年11月25日、所はサンフランシスコの〈ウィンターランド〉、ザ・バンドのラストコンサートね。マーティン・スコセッシ監督による同名の映画にもなった伝説のコンサート。

コロ: 知ってるじゃん!

カル:  基礎教養です。つまり、このお店、アメリカンロック、バリバリのお店ってことになるのかな?

コロ: マスターの小泉豊太さんがアメリカンロックを聴くきっかけになったのが『ラスト・ワルツ』なんだって。でも、地味な映画って印象でピンとこなかったらしい。わからないでもないけど。

カル: 単なるいちバンドのラストコンサートにディランやらクラプトンやら、ゲストがこんなにたくさん集まるなんてなかなかないね。トリビュートはあるけど、ラストコンサートにゲスト多数っていうのはあまり記憶にない。

ノスタルジックなアメリカ酒場なカウンター。LAST WALTZはもちろん、イーグルスのLONG RUN TOURのポスターがある。

ノスタルジックなアメリカ酒場なカウンター。LAST WALTZはもちろん、イーグルスのLONG RUN TOURのポスターが

コロ: たしかに。このお店、基本は片面がけなのだけど、かけるレコードは骨があって、60〜70年代のアメリカンロックに限るという厳格なルールがあるんだ。

カル: 60〜70年代からいまも活躍しているアーティストとかはどうなるわけ?

コロ: たとえばニール・ヤングの『ハーベスト』はあるけど、『ハーベスト・ムーン』はない。なぜなら90年代だからね。ブルース・スプリングスティーンの『ボーン・トゥ・ラン』はあっても、『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』はない。80年代だから。

カル: 厳格この上なしだ。『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』はせっかく今年40周年なのに。アメリカン・ロックといっても、ウェストコースト・サウンドってことではないでしょう?

コロ: カントリー色が強いアーティストやサザンロック的な泥くさい感じが好きみたいよ。イーグルスでも『ホテル・カリフォルニア』より『ならず者』や『1st』あたりのカントリー風味期が好きなんだって。カントリーでいえば、チャートは今でもフォローしているんだってさ。

イーグルスの『ならず者』のレコードジャケット

ヘビーローテーションといえばイーグルスの『ならず者』。『ホテル・カリフォルニア』より初期のカントリーテイストが好きだとか。

70年代を代表するサザンロックの雄、レイナード・スキナードの名作『セカンド・ヘルピング』のレコードジャケット。

70年代を代表するサザンロックの雄、レイナード・スキナードの名作『セカンド・ヘルピング』。

カル: なら、歌姫テイラー・スウィフトくらいは特別枠でかかるんじゃないかな?

コロ: カントリーの世界に収まらないすごい子が出てきたと思ったらしいけど、かかりません。なぜなら2000年代以降なので。

カル: つうことは、ビヨンセがいくら黒人女性で初めてカントリーチャートで1位をとったといってもかからないんだよね。

コロ: はい、「TEXAS HOLD ‘EM」もなしです。2024年の出来事なので。

カル: 骨太(笑)。アーティストに関しても骨太?

コロ: オールマン・ブラザーズ・バンドはあってもエリック・クラプトンはなし、レーナード・スキナードはあっても、ピンク・フロイドはなし。個人的には嫌いじゃないらしいけどね。

カル: そういうこうこだわり好きかも。やらないことがあるって個性だよね。その分、リクエストは聞いてくれるのかな?

レコードの様子をみるマスターの小泉豊太さん。

60〜70年代のアメリカンロックに頑固なまでにこだわるマスターの小泉豊太さん。

壁に雑誌などの切り抜き

オープン当初はレッド・ツェッペリンなどのロッククラシックもかけていたそうだが、次第にアメリカンロックへとシフト。

コロ: それがさ、リクエストの曲で流れが変わっちゃったのが原因で、お客さん同士のケンカになったことがあるらしく、それ以来、すこぶる消極的だそうだよ。

カル: その感じわからないでもない。なんでこの流れでこの曲になるんだ、ってときあるもんね。火ダネはなんだったのかな?

コロ: カーペンターズだって。

カル: (笑)。お客さんもそんなリクエストにからんで怒らなくてもいいのにね。まあ、これは文明の衝突みたいなものかな。

コロ: マスターもそういうとき、うまいこと断れないんだってさ。お客さんのあしらいが苦手らしい。リクエストするお客さんって。得てして流れを無視しがちだから。

マスターが撮影&編集したクルマからの景色が流れるモニター。

モニターからはマスターが撮影&編集したクルマからの景色が流れる。なぜか中毒性があって、風景を見ながら杯が進む。

ルート66のハイウェイ沿いの酒場に紛れ込んだようなノスタルジックな壁の装飾。

ルート66のハイウェイ沿いの酒場に紛れ込んだようなノスタルジックな店内。

カル: それはそうと、モニターから流れる映像はライブとかのもの?

コロ: これはクルマから撮ったアメリカの風景。ルート66を走っているみたいな。ストーリーもなければ事件も起こらないんだけど、なんだか中毒性があるんだよ。ずっと見入っちゃう。

カル: 自分で撮って、自分で編集しているんだね。そういえば『ラスト・ワルツ』の映画の始まりもクルマから撮った映像だよね。会場のウィンターランドに向かうシーンだった。

コロ: アメリカンロックって、ラジオで聴くイメージがあるから、それを狙ったんだってさ。昔はラジオのリクエストがチャートになっていたくらいだから。

カル: ガソリンスタンドの公衆電話からリクエストしていたっていうよね。

コロ: だからクルマからの風景が見事にハマるんだ。モニターの映像がいいつまみになって、気がつくとモニターを見ながら杯が進んでいる。また店内のライブのポスターや小物なんかもいいんだよね。あの時代のアメリカそのまんま。

カル: アートもいいけど、古いポスターっていいよね。ところで、このお店のヘビーローテーションというと、どんな感じ?

コロ: 「雨をみたかい」が入っているCCRの『ペンデュラム』、キャロル・キングの『つづれおり』。で、イーグルスの『ならず者』だってさ。

カル: たしかにクルマで聴くと映えるな。

店名が直接書かれた外観

オールドアメリカンスタイルたっぷりの外観。佇まいからして誘われる。

information

LAST WALTZ 

住所:神奈川県横浜市西区高島2-10-24

tel:045-441-5388

営業時間:18:00〜25:00

定休日:日曜・祝日

Instagram:@lastwaltz_yokohama

 

【SOUND SYSTEM】

Speaker:BOSE 型番不明

Turn Table:Technics SL-1200mk7

Integrated Amplifier:Marantz PM4001

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

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