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銀行跡地がパン屋、家具店などに!複合施設(BANK)が南大沢にオープン

  • 2023年11月7日
  • コロカル
食品、衣類とバッグ、家具、建築。衣食住にまつわる4つの事業者が入居

八王子市南大沢の複合施設〈(BANK)〉

八王子市南大沢に複合施設〈(BANK)〉がオープンしました。南大沢は日本最大規模のニュータウン、多摩ニュータウンの一画。1981年に建てられた団地の中にある南大沢3丁目商店街にあります。

名前は建設当初、銀行として使われていたことに由来します。入居しているのはパン屋さん、家具作家、バッグと洋服の作家、そして建築設計事務所という4つの事業者。ショップやショールーム、アトリエなど、利用方法はそれぞれです。

天井も壁もコンクリートが剥き出し

足を踏み入れると、天井も壁もコンクリートが剥き出し。しかもお店の区切りが、はっきりしていません。家具作家さんによるダイニングテーブルが目に入り、倉庫のようなブースの付近には帆布のトートバッグやコットンの洋服が置かれています。

バッグブランド〈AM〉の鈴木厚司さん、洋服を作る〈すずきみき〉の鈴木美紀さん夫妻

バッグブランド〈AM〉の鈴木厚司さん、洋服をつくる〈すずきみき〉の鈴木美紀さん夫妻

バッグと洋服は、鈴木厚司さん、美紀さん夫妻によるもの。バッグは〈AM〉というブランド名で厚司さん、洋服は〈すずきみき〉というブランド名で美紀さんが手がけます。ふたりはこれまで主に屋外イベントで商品を販売してきました。厚司さんは、区切られたスペースをアトリエとして使っていて製作も行っていて、その姿が垣間見られるようになっています。

木工作家で家具職人の岡林厚志さん。

木工作家で家具職人の岡林厚志さん。

家具のブランド名は〈hyakka〉といいます。木工作家で家具職人の岡林厚志さんによるものです。これまでは神奈川県相模原市の自宅兼工房で家具を希望者に見せていましたが、(BANK)がより多くの人に家具を見てもらえる常設のショールームとなりました。

〈チクテベーカリー〉店主の北村千里さん(右)とスタッフさん

〈チクテベーカリー〉店主の北村千里さん(右)とスタッフさん

入り口のすぐそばには、シェルフを使った〈cicoute kiosque〉があります。駐車場を挟んだ斜め向かいある人気ベーカリー〈チクテベーカリー〉による運営です。生産者から直接届く米や野菜、チーズ、ソーセージなどを販売するほか月曜日と水曜日はチクテベーカリーから通常とは違うパンやお菓子が並びます。火曜日と木曜日は独立を目指すチクテベーカリーのスタッフ2名によるオリジナルブランドのパンやお菓子が販売されます。

コムレール一級建築士事務所の北原暁彦さん。いずれ本が自由に読めるスペースも作りたいとのこと。

コムレール一級建築士事務所の北原暁彦さん。いずれ本が自由に読めるスペースもつくりたいとのこと。

いちばん奥に秘密基地のような事務所スペースを自らつくって、利用しているのが建築家の北原暁彦さん。(BANK)の設計も担当しました。

商店街を復活させたベーカリーと建築家が中心となって

南大沢3丁目商店街は、奇跡の復活を遂げたとメディアで取り上げられたことがある商店街です。その復活の立役者が人気のパン屋さん、チクテベーカリーです。

右奥にある建物の1階にチクテベーカリーがあります

右奥にある建物の1階に〈チクテベーカリー〉があります

2013年、オーナーの北村千里さんが、隣駅の多摩境から南大沢にお店を移転。このとき店舗の設計を手掛けたのが、建築家の北原さんでした。当時、南大沢3丁目商店街はスーパーが撤退し、人影もまばらなシャッター商店街でした。チクテベーカリーができたことがきっかけとなって人の流れが変わり、周辺の空きテナントにもお店が入り、賑わいが戻ったのです。

2023年4月、チクテベーカリーの修理に立ち会っていた建築家の北原さんにとって「ここに俺は呼ばれた」というほど魅力的に映ったのが現在(BANK)のある場所です。クリーニング店が閉店してから数か月経って内装が取り払われて広さや天井の高さまで外からも見える状態でした。

北原さんは2013年当時にあった広い空きテナントを見て、ものづくりをする人ばかり100人で借りて、それぞれが、作品に込めた気持ちも伝えられる“百貨店”を開いたらどうだろうと構想していたのだとか。そして10年後に空き物件を目にして、今こそタイミングが訪れたと行動を開始。チクテベーカリーの北村さんも賛同し、近隣でものづくりをする仲間を集め、要望に合わせた設計でスペースをつくり上げました。

フレキシブルなスモールスタートで「暮らしを豊かにする」

AMのアトリエは簡易的な資材で作られ、注意看板として排水管が使われているのもユニークです。

AMのアトリエは簡易的な資材でつくられ、注意看板として排水管が使われているのもユニークです。

(BANK)の中の設備は、ほとんどがホームセンターで買える材料を組み立ててつくられています。〈cicoute kiosque〉のシェルフに至っては、店の外への移動も可能です。

商店や飲食店の設計を手がけてきた北原さんは、コロナ禍で身動きが取れなくなった店主たちを目の当たりにしてきました。その経験から「先行きが読めない時代には店はもっと気軽に始め、形も変えられる方がいい」と考えるように。できあがった(BANK)の姿は、そのスモールスタートの考えがベースです。cicoute kiosqueで独立を目指すスタッフのパンが販売されるのもスモールスタート実現の一環です。

(BANK)の中にはもうひと組お店が入れるほどのスペースが残されていて、b(L)ank(ブランク)と名付けられています。使い方を定めないことで、異なる豊かさが生み出すための空間です。ヨガ教室や金継ぎ教室が開かれるほか、地域の内外から人を巻き込んだイベントを企画したいと構想が練られています。

b(L)ankのスペース。

b(L)ankのスペース。

(BANK)はオープンしたばかりです。しかしパンや食品を買ったあとにAMのバッグを見かけた人がのちに購入したり、お年寄りが立ち話をしていったりしています。目指していた作り手本人が作る過程や思いを伝えながら販売できる場所、地域の人がふらっと立ち寄れる場所として予想よりも早く機能し始めています。

今後はcicoute kiosqueでワインを取り扱う予定もあるとのこと。(BANK)が南大沢三丁目商店街に新しい賑わいを生み、さらに他の地域にも波及していくのかもしれません。

information

(BANK)(バンク)

住所:東京都八王子市南大沢3-9 コーシャハイム南大沢0-6号室

営業時間:11:30〜16:00

定休日:日(店舗ごとに営業日は異なる)

Web:(BANK)公式サイト

writer profile

Saori Nozaki

野崎さおり

のざき・さおり●富山県生まれ、転勤族育ち。非正規雇用の会社員などを経てライターになり、人見知りを克服。とにかくよく食べる。趣味の現代アート鑑賞のため各地を旅するうちに、郷土料理好きに。

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