サイト内
ウェブ

北海道の廃校で『みる・とーぶフェスティバル』開催。ライブ、ワークショップ、展示も

  • 2023年7月26日
  • コロカル
イベントに参加したい、その声に応えて

2021年から、近隣にある閉校となった美流渡(みると)中学校を舞台に、私が代表を務める地域PR 団体が、展覧会やワークショップなど、さまざまな企画を開催してきた。

そしてこの夏、新しい取り組みとして、7月28日(金)、29日(土)、30日(日)の3日間、『みる・とーぶフェスティバル』を開催しようとしている。「みる・とーぶ」という名前は、北海道岩見沢市の山あいのエリアが東部丘陵地域と呼ばれていることから「東部」を取って、それを「見る」という意味を込めた。

みる・とーぶフェスティバルのフライヤー。こちらがライブとワークショップの情報。

みる・とーぶフェスティバルのフライヤー。こちらがライブとワークショップの情報。

こちらが屋外テントと校舎での展示の情報。

こちらが屋外テントと校舎での展示の情報。

今回のイベントで新たな挑戦となったのは、さまざまな地域のみなさんの参加を募ったこと。これまで旧美流渡中学校では、地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』と画家・MAYA MAXXさんの新作を展示する『みんなとMAYA MAXX展』を開催してきた。『みる・とーぶ展』の参加者は主に、この地域や近隣の市や町のつくり手。各地からゲストがやってきて作品を発表することもあったが、基本は地域の人々が参加し、回を重ねるごとに工夫を凝らし、腕を磨く場となってきた。

『みる・とーぶ展』のショップコーナーでは地域のつくり手の作品が販売された。写真は美流渡在住の陶芸家・こむろしずかさんの陶器。

『みる・とーぶ展』のショップコーナーでは地域のつくり手の作品が販売された。写真は美流渡在住の陶芸家・こむろしずかさんの陶器。

今年の春に開催された『みんなとMAYA MAXX展』。青い海のような、森のような背景に、人物が浮かび上がる新作を展示。

今年の春に開催された『みんなとMAYA MAXX展』。青い海のような、森のような背景に、人物が浮かび上がる新作を展示。

今年で『みる・とーぶ展』は3年目となり、少しずつ展覧会が周知されるなかで「作品を発表したり、販売したりしてみたい」という地域外からの声が多くなってきた。ただ、校舎のスペースには限界がある。それならば屋外を会場にしてはどうだろう? テントをたくさん張って、フードも作品販売もある、お祭りのようなにぎわいの場が生まれたらいいなと考えた。事前に公募を行い、テントブースには、道内各地から18組の参加者が集まった。

初参加となる長沼町にある小さなジャム屋さん〈HIROKA JAM〉。

初参加となる長沼町にある小さなジャム屋さん〈HIROKA JAM〉。

初参加となる札幌を拠点に動植物の絵を描いて活動する〈モントペペリ〉。

初参加となる札幌を拠点に動植物の絵を描いて活動する〈モントペペリ〉。

フェスならライブも! MAYA MAXXさんが久々のライブペイント

また、フェスティバルを開催するのであれば、ライブもあるとうれしい。この構想を考えたときに、ぜひやってほしいと思ったのが、MAYA MAXXさんのライブペイント(7月28日18時〜)。以前、MAYAさんはライブペイントを各地で行ってきた。なかでも印象に残るのは、毎年8月6日、広島市で「鎮魂」をテーマに2008年から10年間続けた『Paint It, Peace!』。毎年10メートルずつ、合計100メートルにもなる作品を描き上げた。

広島で行われた『Paint It, Peace!』。2017年がライブペイントの10年目でファイナルとなった。写真は2016年の様子。(撮影:菊井博史)

広島で行われた『Paint It, Peace!』。2017年がライブペイントの10年目でファイナルとなった。写真は2016年の様子。(撮影:菊井博史)

しかし、ここ数年は、ライブペイントに積極的ではなかった。

「絵を描くときに、スイッチを入れて描くと、まわりのことをまったく気にすることができなくなります。けれどライブペイントは、ときどきトークを挟む必要があったり、段取りに合わせて行わなければならないこともあって。そうするとスイッチを入れないで描くということもありました」

スイッチを入れないで描いたものを自分が見たとき「残念な気持ち」になることがあったそうで、それが近年ライブペイントをやってこなかった理由なのだという。

けれど今回は、旧美流渡中学校といういわばホームグラウンド。そしてライブペイントをやりたいと気持ちが動いたのは、万字(まんじ)在住のアフリカ太鼓の奏者・岡林利樹さんとセッションをしたいという思いもあったからだ。MAYAさんは昨年から、岡林さんがリーダーを務める地域のアフリカ太鼓のバンド〈みるとばぶ〉にも参加していて、太鼓のリズムが自分の感覚と合っているように思ったそう。

中央が岡林さん。2児の父でいつも背中に子どもを抱えながら演奏している。

中央が岡林さん。2児の父でいつも背中に子どもを抱えながら演奏している。

隣町のお祭りで演奏する〈みるとばぶ〉。MAYAさんが描いたアフリカゾウのTシャツでみんな登場。

隣町のお祭りで演奏する〈みるとばぶ〉。MAYAさんが描いたアフリカゾウのTシャツでみんな登場。

フェスティバルでは〈みるとばぶ〉の演奏もあり(7月28日17時〜)、また昨年「みる・とーぶ展」で演奏をしてくれた、アンデス民族音楽バンド〈ワイラジャパン〉も再び参加してくれることとなった(7月29日13時〜)。さらに新しい顔ぶれとして、札幌のシンガーソングライターの長澤まろいさん(7月30日13時〜)と、鷹栖を拠点に活動するギターとボーカルのデュオ、じュんきとめいさん(7月30日14時〜)も登場してくれることに。さらに最終日には、〈みる・とーぶ〉の参加者のふたりが入籍したことを記念して『LOVE & PEACE WEDDING』と題して3組のお祝いライブも決定(7月30日15時〜)。

シンガーソングライターの長澤まろいさん。あるとき、みる・とーぶ展を訪ね「いつかここで歌えたらいいな」と思ったことがきっかけとなって、今回の参加が決まった。

シンガーソングライターの長澤まろいさん。あるとき、みる・とーぶ展を訪ね「いつかここで歌えたらいいな」と思ったことがきっかけとなって、今回の参加が決まった。

じュんきとめいさん。アフリカ太鼓の岡林さんとのつながりから参加することに。

じュんきとめいさん。アフリカ太鼓の岡林さんとのつながりから参加することに。

地域の移住者による多彩なワークショップ

ライブとともに、さまざまなワークショップも開催されるのが『みる・とーぶフェスティバル』の特徴のひとつといえる。毎回のイベントで恒例になっているのが、上美流渡在住の木工作家の〈遊木童〉による「木のスプーンづくり」(7月29日13時〜)と上志文にある〈すずかぜcafe〉がひらく「ガラス細工」(7月29日13時〜)。このほかMAYAさんの「シャボン玉を描こう」ワークショップ(7月28日15時〜)や陶芸家のこむろしずかさんによる「日本舞踊でエクササイズ」(7月30日11時〜)、〈ばぐぅす屋〉の「スパイスカレー教室」(7月29日15時〜)も。ここまで紹介したのは、この地域にやってきた移住者たちの企画によるもの。それぞれの活動が地域に賑わいをもたらしている。

〈すずかぜcafe〉のガラス細工は、ガラスのビーズをつなげてつくるサンキャッチャー。窓越しに飾ると光がさまざまに輝く。

〈すずかぜcafe〉のガラス細工は、ガラスのビーズをつなげてつくるサンキャッチャー。窓越しに飾ると光がさまざまに輝く。

スパイスカレーのお店〈ばぐぅす屋〉はスパイスの使い方とカレーのレシピを伝授するワークショップを開催。(撮影:佐々木育弥)

スパイスカレーのお店〈ばぐぅす屋〉はスパイスの使い方とカレーのレシピを伝授するワークショップを開催。(撮影:佐々木育弥)

ほかにも内容盛りだくさん! 化石、メガネ、珈琲など独自のコンテンツ

フェスティバル開催中は、イベント時の恒例となっている体育館の「ミルトぼうけん遊び場」もオープン。今回はスペシャル企画として、2日間にわたり「自然体験&食事づくり」(7月29日10時〜)と「山で化石を探そう」(7月30日10時〜)を行う。2日目の「山で化石を探そう」では、旧美流渡中学校から車で5分ほどの毛陽というエリアの山に行き、山主である日端義美さんにガイド役になってもらい、子どもたちと化石探検に出かける予定だ。

日端さんは山を日々整備したり、化石の発掘や調査を行ったりしている。

日端さんは山を日々整備したり、化石の発掘や調査を行ったりしている。

ぼうけん遊び場では、バルーンアーティストのベラさんによる風船ワークショップも開催(7月30日12時〜)。

ぼうけん遊び場では、バルーンアーティストのベラさんによる風船ワークショップも開催(7月30日12時〜)。

道外からやってきてくれた参加者もいる。目と心の関係を研究し新しいメガネのあり方を提案する〈イノチグラス〉の目育士である澤田千晶さんが、神戸から来道。以前に京都でMAYAさんのワークショップに参加したことをきっかけに、MAYAさんとの交流が始まり、美流渡でのMAYAさんの活動をひと目見たいと、今回、参加してくれることになった。3日間、メガネの作成会を行う。

視力の測定だけでなく、カラーレンズを入れたときに心や体がどう反応するかなど、さまざまなカウンセリングを行い、メガネをつくっていく。

視力の測定だけでなく、カラーレンズを入れたときに心や体がどう反応するかなど、さまざまなカウンセリングを行い、メガネをつくっていく。

もうひと組、全国をキッチンカーで旅しながら、夏に北海道へと戻ってくる〈カフェ・アルコバレーノ〉もフェスティバルに参加。西興部で草だけを食べて育った牛のミルクを使ったソフトクリームを販売する。今回はソフトクリームの提供とともに「コーヒー豆の焙煎ワークショップ」も行うこととなった(29日13時〜)。

口の中でスーッととけるやさしい味のソフトクリーム。カフェ・アルコバレーノを紹介したコロカルの記事は、2021年に最も多く読まれた記事のひとつとなり、ふたりの暮らし方に注目が集まった。

口の中でスーッととけるやさしい味のソフトクリーム。カフェ・アルコバレーノを紹介したコロカルの記事は、2021年に最も多く読まれた記事のひとつとなり、ふたりの暮らし方に注目が集まった。

さらにさらに、春に開催した『みる・とーぶ展』と『みんなとMAYA MAXX展』の展示も再び公開!校舎エリアでは、このほかレコードコレクターの青山晴次さんのコレクションを音楽室に並べ、リクエストによって曲をかける「レコードと珈琲」も開催される(7月28、29日12時〜)。

三笠にアトリエを持つアーティスト・上遠野敏(かとおの・さとし)さんの展示をはじめ、校舎内にはさまざまな個展を開催。7月28日16時〜、29日14時〜、展示ガイドツアーも実施する。

三笠にアトリエを持つアーティスト・上遠野敏(かとおの・さとし)さんの展示をはじめ、校舎内にはさまざまな個展を開催。7月28日16時〜、29日14時〜、展示ガイドツアーも実施する。

レコードと珈琲。ジャズ、ロック、ポップス、昭和歌謡などさまざまなレコードが並ぶ。

レコードと珈琲。ジャズ、ロック、ポップス、昭和歌謡などさまざまなレコードが並ぶ。

40名以上の参加者が集結して行われる『みる・とーぶフェスティバル』。来る人それぞれの楽しみを見つけられるような、そんな場になると思うので、ぜひみなさん、ゆっくり1日を過ごしていただけたらと思います!

information

みる・とーぶフェスティバル

開催日時:7/28(金)15:00〜19:00、7/29(土)11:00〜17:00、7/30(日)11:00〜17:00

開催場所:旧美流渡中学校(北海道岩見沢市栗沢町美流渡栄町58)

ワークショップは予約制

詳しくはこちらで。

writer profile

Michiko Kurushima

來嶋路子

くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長など歴任。2011年に東日本大震災をきっかけに暮らしの拠点を北海道へ移しリモートワークを行う。2015年に独立。〈森の出版社ミチクル〉を立ち上げローカルな本づくりを模索中。岩見沢市の美流渡とその周辺地区の地域活動〈みる・とーぶプロジェクト〉の代表も務める。https://www.instagram.com/michikokurushima/

https://www.facebook.com/michikuru

あわせて読みたい

キーワードからさがす

gooIDで新規登録・ログイン

ログインして問題を解くと自然保護ポイントが
たまって環境に貢献できます。

掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。
Copyright © Magazine House, Ltd. All Rights Reserved.