夏の風物詩でもあるうなぎ。今年の土用の丑の日は7月30日(日)です。夏の暑さを乗り切るためにも、この機会に栄養満点のうなぎを食べたいところですが、近年、漁獲量減少による価格の高騰や供給量の低下で気軽にうなぎを食べることができなくなっています。
そんななか、うなぎの資源を無駄にしない取り組みを進めている企業があります。埼玉県さいたま市にある老舗のうなぎ問屋〈株式会社鯉平〉です。
さいたま市のなかでも浦和区は、うなぎ屋さんが多くある地域。江戸時代、川や沼地が多かったこのエリアは川魚が豊富に獲れたために、浦和地区でうなぎの蒲焼を食べる文化が根づいたといわれています。地域開発で現在は、この地域でうなぎは獲れませんが、今もなお伝統の味が受け継がれています。
明治30年創業の同社も、そんな食文化を支えている企業のひとつ。年間で扱ううなぎの量は日本最大級の750トンにもおよびます。うなぎだけでなく、鯉などの加工・販売も行い、120年以上もの間、川魚の食文化を守り、つむいできた企業です。
しかしうなぎは生きたまま流通を行わなければならない管理の難しさから、一定量、廃棄のうなぎが出てしまう問題を抱えています。生きた状態で選別から加工まで行うため、製品化する前に死んでしまううなぎがいるためです。
同社も資源を無駄にしないため、過剰に仕入れをしない、自社内で消費するなどの工夫を行ってきました。さらなる廃棄うなぎの削減を目指すべく、今年から新たな取り組みとして始めたのが廃棄うなぎを活用した〈うなぎスナック〉の開発です。
3袋でうなぎ1匹分の廃棄を防げるうなぎスナックは売れ残りが予想される分のうなぎを新鮮なうちに火入れまで行い、その後フリーズドライ加工した商品です。
フリーズドライ加工とは、真空に近い状態で乾燥させる技術のこと。サイズや産地を限定せずに、活きのよいうなぎを丸ごと保存料などを使用せずに乾燥させてつくります。
1袋あたり白焼の状態で約50〜60グラムのうなぎが使われているので、約3袋で1匹分のうなぎの廃棄を防げる計算です。常温での長期保存も可能で、食品ロスの削減に大いに貢献します。
うなぎスナックの開発プロジェクトをスタートさせた5代目代表取締役社長・清水亮佑さん。
さらに素材の風味や香りなどがそのまま残りやすいのも、フリーズドライ加工の利点です。食品ロスを減らすだけでなく、「おいしいうなぎを食べてもらいたい」という5代目代表取締役社長の清水亮佑さんの想いが込められています。
タレが香ばしい蒲焼とわさびが効いた白焼左は〈うなぎ白焼スナック わさび塩味〉、右は〈うなぎ蒲焼スナック 蒲焼(山椒)味〉。
うなぎスナックは、全部で2種類です。ひとつは、同社秘伝のタレをたっぷり絡ませた蒲焼タイプの〈うなぎ蒲焼スナック 蒲焼(山椒)味〉。別添えの山椒をかけると、うなぎの旨みがさらに引き出されるようです。
もうひとつは、別添えのわさび塩を振りかけて食べる〈うなぎ白焼スナック わさび塩味〉。うなぎ本来の味を楽しみたい人におすすめです。
どちらもさくっとした食感が楽しめるうえに、旨味ののったうなぎの脂が口のなかでとろけ、お酒にもぴったり!食べやすいひと口サイズもうれしいところです。
うなぎスナックは、7月31日(月)まで購入型クラウドファンディング「IBUSHIGIN」で限定販売中。9月からは直営店やパーキングエリア、オンラインなどでの一般販売が予定されています。
高級うなぎを手軽に楽しめるだけでなく、食品ロスの削減にもつながるうなぎスナック。埼玉に伝わる伝統の味わいを楽しんでみてはいかがでしょうか。
information
株式会社鯉平
Web:クラウドファンディングサイト
Web:公式サイト
writer profile
Ayumi Otaki
大瀧亜友美
おおたき・あゆみ●山形県出身。広告制作会社や出版会社での勤務経験を活かして、フリーライターへ転身。WEBや紙媒体で編集から取材、執筆まで幅広く行う。旅や料理、植物など心を豊かにしてくれるモノやコトが大好き。