雪解けが始まった途端、北海道の季節は駆け足で過ぎていく。「ああ、ようやくあの山菜の芽が出てきたなー」なんて、のんびり構えていると、数日後には大きくなって食べごろを逃してしまうこともしばしばだ。
本業である、執筆や編集の締め切りが重なってくると、ついつい後回しにしがちなのだが、「今年は野草や山菜をモリモリ食べるぞ!」と、春から意気込んでいた。その記録を今回は紹介してみたい。
フキノトウの簡単天ぷら3月下旬、まだ残雪があるなかで顔を出すのはフキノトウ。庭先にも土手にもどこでも生えている。その芽が大きくならないうちにつんで、さっと天ぷらにするとおいしい。ただ、天ぷら粉をつくるとなると、やや面倒だし、1人前よりもたくさんできてしまうので、シンプルに片栗粉だけで2、3個揚げてみることにした。
春の訪れを告げる山菜。フキノトウ。
庭から小さめのものをとってきたら、さっとゆがいてアク抜き。その後、片栗粉をまぶして揚げたあと、塩をふりかけ食べてみた。
山菜はアクが強いので、1日に少量とるのがおすすめ。
ひと口食べるとフキノトウ独特の苦味が感じられ、ああ春の香り!! 片栗粉だけのほうが、天ぷら粉よりも、さっぱりとしておいしいと感じた。
野草の薬味をなんにでものっけるフキノトウに続いて出てくるのは、チャイブ(あさつき)とミツバ。私の仕事場の庭にはいつもたくさん自生していて食べ放題。お昼になると摘みとって、お弁当の上にのっけて食べている。
チャイブとミツバ。チャイブはネギの味!
この日は豚と大根の煮つけ弁当。上にのせると豪華!!
エゾエンゴサクのおひたし少し日差しに暖かさが感じられるようになる4月、エゾエンゴサクという野草が土手のあちこちで花開く。甘い匂いの花をいっぱい摘んだら、さっと茹でておひたしに。シャキシャキっとした歯応えで、花の甘い香りとかすかな苦味がある。サラダとして食べることもできる。
エゾエンゴサク。青と紫の花。ほかに白い花もあるという。
行者ニンニクの卵焼き東京でまったく馴染みがなかったが、北海道では春になると食卓にお目見えする山菜といえば行者ニンニク。知り合いの農家さんは、山でとった苗を増やして栽培したりも。アイヌ民族も薬草として、昔から食べていた山菜で、ニンニクとネギとニラが混ざったような味がする。
道民に食べ方を聞いてみると、味噌汁に入れたり、餃子に入れたり。このほか卵とじにもするというので今年はやってみた。ニラよりもクセがなくてあっさりとした味。子どもたちにも人気で、夕食に出したらあっという間に完食!
行者ニンニク。
行者ニンニクの卵焼き。
ヨブスマソウのゴマ・マヨネーズ和え地元の人はボウナと呼んでいるヨブスマソウは、キク科の植物で、ちょっぴり春菊みたいな味がする。アクがそれほどないので茹でて水に少しさらしておけばよく、調理が簡単なのがありがたい。
ネットで調べるとおひたしがポピュラーのようだが、私は茹でて、ゴマとマヨネーズで和えたものが気に入っている。山菜の苦味が苦手という人でも、ヨブスマソウは食べやすい。
左の三角の葉っぱがヨブスマソウ。右はイタドリの新芽。
マヨネーズとゴマを和えて。
イタドリのメンマ今年、どうしてもチャレンジしてみたかったのが、イタドリの茎を食べること。イタドリは本当にどこにでも生えていて、夏には土手一面が覆われてしまうほど。その様子を見ていると、これを食べていれば野菜を買わなくてもいいんじゃないかという気さえしてくる(実際には、春先の新芽でないと硬くて食べられないようなので、これはあくまでも妄想なのだけれど)。しかも痛みをとるからイタドリと呼ばれるように、昔から薬草として用いられていて、さまざまな効能もある。
昨年、茹でて、マヨネーズ和えにして食べてみたけれど……、独特のねばりがあって酸っぱくて、これはちょっと遠慮したいという味だった。今年はこの反省を生かして、ちゃんとアク抜きをすることにした。高知ではイタドリは郷土料理として親しまれているようなので、下処理の方法を調べてトライしてみた。
イタドリの新芽。これが伸びると背丈を越す(たぶんオオイタドリだと思う)。
皮をむくとこんな感じ。
下処理は皮をむいて、塩水にひと晩漬けておく。水は3回くらい変えたほうが良いとのことでやってみると、水に独特の青臭さがうつっていて、それがだんだんと薄らいでいくことがわかった。その後、下茹でして、また水に30分ほどさらして完了。ひと口かじってみると酸っぱさはあるものの、ねばりはほとんどなくなっていた。
下処理後のイタドリ。
これを、ゴマ油で10分ほど炒め、麺つゆを入れて汁がなくなったら、ラー油をたらしてメンマの完成!歯応えがあって、ほんのり酸っぱい風味もいい感じ!しっかりとアク抜きすれば食べられることがわかってうれしかった(でも、時間がかかるので、何度もつくるのは難しいかな)。
イタドリメンマをご飯にたっぷりかけて食べました!
こんなふうに今年はいろいろやってみたけれど、やっぱり1番好きなのはウド!5月になると家の裏に生えてくるので、それをとって穂先は簡単、片栗粉天ぷらに。茎の部分は酢味噌和えにしたり、きんぴらにしたり。子どもたちが夜習い事で出かけている日、ひとりで、ビール片手にウドを好きなだけ料理していると、本当に幸せな気分!!!!
新芽だけを摘んで食べる贅沢!
うまく写真が撮れないのが残念だけど、最高においしいウドの天ぷら。
今回紹介した山菜や野草は、山奥にいかなくても、すぐその辺りに生えているものばかり。冷蔵庫に溜め込んだ野菜とは違う、フレッシュさと野生味を感じる。春先は、苦味のある山菜を食べることで、冬に溜まった毒素のようなものが排出されていくような気がしていて、体が欲していると感じることもある。何より、周りにあるものを体に取り込むと、自分が自然や地球という大地と、つながっているようなそんな充足感もわいてくる。
野草や山菜辞典を見ていると、まだまだ食べられるものがいっぱいあるので、これからもいろいろと挑戦していきたい! 夏や秋の野草や山菜について、またレポートしたいと思います。
writer profile
Michiko Kurushima
來嶋路子
くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長など歴任。2011年に東日本大震災をきっかけに暮らしの拠点を北海道へ移しリモートワークを行う。2015年に独立。〈森の出版社ミチクル〉を立ち上げローカルな本づくりを模索中。岩見沢市の美流渡とその周辺地区の地域活動〈みる・とーぶプロジェクト〉の代表も務める。https://www.instagram.com/michikokurushima/
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