1955年創業の石垣島の泡盛酒造所〈八重泉酒造〉が、泡盛・古酒(クース)ブランド〈ZAKIMI〉をリリース。昨年8月から限定販売しています。開発パートナーとして、デザイナーの原研哉氏を迎え、石垣島の風土の賜物としての泡盛を表現しています。
八重泉酒造は蒸留したての泡盛を新酒として出すのではなく、長い年月をかけ、石垣島という南国の環境で貯蔵し、熟成させる泡盛づくりに取り組んできた酒蔵です。
長期熟成させることで蒸留時の荒々しさが取れ、甘みと香味が備わったまろやかな酒へと変わっていきます。つまり古酒は土地の自然と、経過した時間の産物とのこと。八重泉酒造がつくり続けてきた古酒は、石垣島の風土の賜物でもあるのです。
石垣島の“時間”を感じる風景。撮影:岡庭璃子
石垣島の“時間”を感じる風景。撮影:岡庭璃子
石垣島の“時間”を感じる風景。撮影:岡庭璃子
石垣島の“時間”を感じる風景。撮影:岡庭璃子
石垣島の“時間”を感じる風景。撮影:岡庭璃子
発売されているのは〈ゆく〉〈顔〉〈台風〉の3種。新たな泡盛の 世界を切り拓いていく気概を込めて「ゆく」と命名された8年ものの古酒は、年月を経て角が取れ、風格を増しています。3種の中では一番ドライな味わいであり、食中酒としても良さそうです。口に含んだ瞬間、これまでの泡盛との違いに驚きますが、味わうごとに新たな風景を見せてくれる、そんな酒です。
〈ゆく〉アルコール度数:43度/容量:700ml 販売価格:20000円(税込)
〈顔〉は、10年熟成の古酒とオーク樽に10年貯蔵した古酒のブレンド。オークの色と香りが移った琥珀色の古酒が、円熟の古酒と融合することで、ほんのりと淡い琥珀色の酒になります。どっしりとした瓶とラベルに配された書によって、斬新な泡盛の顔を生み出しています。甘みがあり香りが芳醇でまるでブランデーのよう。塩チョコレートやナッツ類とも相性が良さそうです。
〈顔〉アルコール度数:43度/容量:700ml 販売価格:60000円(税込)
そして〈台風〉は30年熟成の古酒。30年の歳月の中で、100を超える台風が八重山諸島を通過していったとされています。台風は、水と空気を攪拌して通り過ぎる自然の摂理です。
こうした南国の自然に抱かれて眠り続けることで、はじめて到達できる枯淡の味わいとまろやかさ。優雅な香気が身体の奥に沁み渡る至高の泡盛です。仕上げの割り水として、その年に石垣島に到来した「台風の雨水」を浄化して用いており、まさに台風に眠り、台風で目覚めた古酒中の古酒といえるでしょう。
アジア最大級の蒸留酒のコンペティション「東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)」2023年焼酎部門で最高金賞を受賞したという実力派の1本でもあります。
〈台風〉アルコール度数:43度/容量:700ml 販売価格:200000円(税込)
気鋭の書家・鎌村和貴氏による書。
〈台風〉を収める箱は無垢のウォルナット材をくり抜いてつくられている。
時が経つにつれて甘く芳醇になっていく理由は、黒麹のおかげといわれています。泡盛は沖縄地方特有の黒麹菌の作用によって、長く寝かせることで刺激香が消え、ほんのりとした甘みに。黒麹菌は、酸度の高いクエン酸を生成するために雑菌に強いという性質を持っているのです。
さらに米のでんぷん質を糖化する能力にもすぐれているためにアルコールの収得率も高いという利点も。ウイスキーやブランデーとは異なり、蒸留後も時とともに甘みが備わっていくのは、この特殊な黒麹の性質を生かしているためなのです。
8年、10 年、30 年の古酒は希少であるため、限定数での発売とのこと。未知なるクース体験をぜひ。
information
八重泉酒造
Web:八重泉酒造ホームページ
購入ページ
*価格はすべて税込です。
writer profile
Yu Ebihara
海老原 悠
えびはら・ゆう●コロカルエディター/ライター。生まれも育ちも埼玉県。地域でユニークな活動をしている人や、暮らしを楽しんでいる人に会いに行ってきます。人との出会いと美味しいものにいざなわれ、西へ東へ全国行脚。