進化生物学という学問がある。かなり広い分野で,生物多様性や、動物の行動も、それを進化的な側面から見れば全て包括されるのだろう。学際的な学問なので哲学的、心理学的側面もあり、だれでもが親しみやすい分野だ。
岡ノ谷 一夫さんの「つながり」の進化生物学という本を頂いた。
高校生相手に行った「コミュニケーションと心」という連続講義を書籍化したものだ。この講義は著者の岡ノ谷一夫さんが、自身の研究もかねて行ったものらしい。普段はつきあいのない若い高校生に、講義をすることで著者の考えを伝え、そして、そこで新たに考えると。まさに実践的なコミュニケーション論であると妙に感心。
進化生物学と難しそうな題がついているが、題に「つながり」というひらがなを使ったりしてある。でも実は「つながり」はコミュニケーションと同義ではなく、「心はひとりじゃ生まれなかった。」とあるように、日本語になっているコミュニケーションにもうすこし違う意味を持たせたいためのもののようだ。生徒に質問を出し、それに答える形での講義の書籍化なので、難しい言葉は出てこないから、楽しく読み切ることができた。生物が好きな人はもちろんだが、この本なら,生物に興味がない人でも十分面白い。
前半は動物と人間のコミュニケーションの違いのような講義で、昔からの有名な研究も数多く紹介され、この分野について,おおざっぱに知ることができるのは嬉しい。紹介される研究の中で、なんと言っても面白いのは著者の岡ノ谷さん自身が関わられた研究で、キンカチョウ、ハダカデバネズミやジュウシマツの話し、特にハダカデバネズミの話は大変面白い。実は,この分野の本を最近は読んでいなかったので、あまりよく知らなかったのだ。
ハダカデバネズミの本は岩波科学ライブラリーから,同じ著者のハダカデバネズミ―女王・兵隊・ふとん係と言うのが出ていて、これも面白そうだ。
後半は心って何だろうということ、人が持つ言語によるコミュニケーションの根底には、感情が言語を支えてきたのではないかなど、岡ノ谷さん独自の考えが各所にちりばめられている。
写真はジンメンカメムシ。こんな虫がどうしてできたか?というのを考えるのも進化生物学であるかもしれないし、もっと広く、動物や昆虫に心があるのか、さらに人とは何かということを考えるのは進化生物学の大きなテーマだ。
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