
セミの声が鳴り響く夏の暑い日、人ではない何かが近づいてくる…。その恐怖と張り詰めた緊張感を、一切のセリフなしで描いたホラー漫画「ストーカー」。Xで公開されると、2.9万件(2025年1月18日現在)ものいいねに加え、「臨場感が凄い」「今日寝れなくなりました」などのコメントが続々と寄せられている。今回は作者のワサイ(@19b6ex8qGIBSign)さんに、作品誕生のきっかけや、こだわった部分について聞いた。
【漫画】「ストーカー」1 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
■近づいてくるのは恐怖のストーカー…!セリフなしで表現した理由とは?
緻密な作画と、セリフがなく、1ページ目からその異様な雰囲気と世界観に引き込まれてしまう今作。現在は漫画のアシスタントをしているという作者のワサイさんに、作品を描いたきっかけを聞いてみた。
「何年も漫画を描きあげられずにいて、そのストレスが溜まっていることをアシスタント先の漫画家の方と話していたことがありました。アシスタント先では、漫画家の方と一緒に怪談を聞いたりしていたので、そのときに『好きなホラーを描いてみたらどうか?』という話になり描いてみました」
「ストーカー」2 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
「ストーカー」3 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
マンションの壁をよじ登り、玄関のドアを執拗に開けようとする異形のストーカー。そして、なんとか見つからないように逃げる主人公。オノマトペのみで進む緊迫した展開に、思わず息を止めて読んでしまう。このような表現にした理由は何だったのだろうか。
「描き始めるにあたって、セリフなしでいこうという考えはありませんでした。描いていくうちに自分があの主人公の立場になったら緊張で硬直してしゃべることができないだろうなと思い、セリフがなくなりました」
「ストーカー」4 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
「ストーカー」5 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
そして、繊細な作画も読者の恐怖をかき立てる。「物の色などはスクリーントーンではなく、線で表現できればと思いました」と作画のこだわりも語ってくれた。
「ストーカー」6 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
■ホラーの底知れなさに感じる恐怖と魅力。創作活動に影響を受けた作品とは
「エレベーター乗るのが怖くなった」「最初の1コマだけでもう怖い」など、読者から感想が寄せられている今作。もともと怪談が好きだというワサイさんだが、どんなところにその魅力を感じているのだろうか。
「開けてはいけないと言われているような扉や、入ってはいけない山。そういった禁忌の向こうに僕の知らない別の世界があるのではないか、もし禁忌などに触れたら人間はどうなってしまうのだろう、というこの世界の底知れなさに恐怖と魅力を感じています。あと人間の悪意などが見えると、その人の本音の一部が見えた気になるからです」
「ストーカー」7 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
「ストーカー」8 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
そんなワサイさんは、自身の創作活動にとって特に影響を受けた作品があるという。
「映画『ヘレディタリー』です。すごくかっこいい映画ですし、こんな最悪な場面に陥ったら人間こうなるよな、と登場人物のリアクションをすごくリアルに感じたんです。あらためてリアクションの大事さを感じた作品でした」
「ストーカー」9 / 画像提供:ワサイ(@19b6ex8qGIBSign)
今後の作品にも期待が高まるワサイさん。最後に、これからの活動の展望について聞いた。
「まだ連載は確定してはいませんが、今は連載のネームを描いています。それとは別に、読み切りも描いていければいいなと思っております。ホラーやSFが好きなのでそういった作品を描いていきたいです」
これからのワサイさんの作品を、心待ちにしたい。
取材・文=松原明子