令和3年の内閣府調査（※）によると、結婚するカップルのうち、夫又は妻のどちらかが再婚であるカップルの割合は年々上昇しています。現在では４組に１組以上の夫婦が、夫または妻のどちらかが再婚だそうです。子どもを伴う再婚も多くなった現代、家族のあり方を見つめるコミック作品『パパ、赤ちゃんが生まれないなら再婚してもいいよ』が登場しました。
この作品の主人公である小学3年生のゆかさんは、再婚を相談する父親の豊さんに「私、一人っ子がいい」「赤ちゃんが生まれないなら再婚してもいいよ」と答えます。
実はゆかさんは、父親と暮らす前は離婚した実母に育てられていました。その実母と結婚した新しい父親との間に子どもができたことをきっかけに、ネグレクトに苦しめられたつらい経験があるのでした。
新しい母親のルイさんは優しくゆかさんに向き合い、ふたりはあたたかい親子関係を築き始めるのですが、そんな中、ルイさんのお腹には赤ちゃんができるのでした……。
血の繋がりがなくても家族の絆を構築できる親子もいれば、血が繋がっていても機能不全状態に陥る親子もいます。
この物語の原作者である、あやかずさんにお話を伺いました。
原作者・あやかずさんインタビュー
──父親の再婚による家庭環境の変化、娘が過去に受けた家庭内暴力による心の傷など、ハードなテーマとなっていますが、今回の作品を生み出すきっかけや経緯、その時の心境など、教えてください。
あやかずさん「このお話が浮かんだきっかけは、友人の女性が言った『うちの旦那、娘にデレデレやねん』からでした。彼女は幼い娘さんを連れての再婚でした。現在その娘さんは大学生なのですが、『血のつながらない娘の事を旦那は可愛くて仕方ない』と聞いていい旦那さんだなと思い、このお話が浮かびました。
それまではTVニュースで連れ子への虐待等をよく耳にしていて、連れ子再婚についていいイメージが少ない中『実際にはこんな風に仲のいい親子もたくさんいるんだろうな』という思いで描きました」
──主人公の少女・ゆかさんは、葛藤しながらも新しいお母さんとなるルイさんとの関係を築いていきます。ゆかさんだけでなくルイさんも一緒に成長し、変化していく過程が描かれていますが、ここで伝えたかったことを教えてください。
あやかずさん「実の親子でも一緒に暮らすと相手にイライラする事があります。それが他人同士ならなおさらです。
ですが、先ほど話に出た友人家族のように血はつながっていなくても時間をかけて親子になる事も実際にはたくさんあると思い描きました。」
──主人公のゆかさんは過去にとても大変な経験をし、PTSDになってしまいます。フラッシュバックのシーンなど痛々しく心が痛みました。ゆかさんの身に起きたことへの想いや、子どもへの虐待について感想をいただけますでしょうか。
あやかずさん「連れ子への虐待がTVニュースで流れる度、心が痛み、腹がたちます。虐待は身勝手で幼稚な人の行動です。子どもに向けるものではありません。ゆかは父親に見つけてもらい救われました。虐待に苦しむ子どもを見かけた時、勇気を出したその行動がその後の子どもの人生を救うかもしれません」
──「パパ、赤ちゃんが生まれないなら再婚してもいいよ」というタイトルが非常に印象的でした。タイトルはどのように決まったのでしょうか。またタイトルへの想いなどございましたら教えてください。
あやかずさん「インスタグラムに投稿時では『パパが子づくりしないなら再婚してもいいよ』でしたが、電子書籍化のお話をいただき、タイトルの『子づくり』というワードを小学生が使うのか？と編集の方からの指摘をいただき、相談を重ね最終的に『パパ、赤ちゃんが生まれないなら再婚してもいいよ』になりました。
ゆかのセリフに『赤ちゃん生まれたら私、かなわない。本当の子じゃないから』とありますが、この本音を隠して父親に強がる小学生女子のゆかの心情を表しています」
──新しい家族関係に悩む方や児童虐待を憂う方など、いろいろな皆さまが本作品を手に取ると思います。メッセージをお願いいたします。
あやかずさん「このお話は創作ですが、インスタグラムのコメント欄で『私もこれから血のつながらない子を育てていく身です。2人のように素敵な親子になりたいです』『どんな境遇であれども、一組でも多くの家庭に家族の絆を大切にしてほしい』『ゆかちゃんが幸せでよかった。血のつながりなんて関係ない』など、嬉しいコメントをいただきました。この作品が親子の絆を深めるきっかけになればこれほどうれしい事はありません」
※出典：内閣府男女共同参画局 結婚と家族をめぐる基礎データ （https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/Marriage-Family/1st/pdf/5.pdf）より
イラスト・漫画＝『パパ、赤ちゃんが生まれないなら再婚してもいいよ』（東里 桐子、あやかず）より
取材＝ナツメヤシコ 文＝レタスユキ
