
「中学校2年生から高校1年生までのはっきりした記憶がない」そう語ったのは、書評ライターや連句人として俳句や文芸情報をX(旧Twitter)で発信をしている高松霞さん(@kasumi_tkmt)。
家族の不幸に無意識に追い詰められていた日々と、それにより発覚した躁うつ病との日々を綴ってもらい、その心情にぴったりな俳句とともにコミカライズ。
作画は、自らのことを「霊感のようなものがある人間」と紹介する漫画家・桜田洋さん(@sakurada_you)が担当。その柔らかで心に染み入る絵のタッチと、鮮やかな色づかいが魅力だ。
今回は躁うつ病の遺伝について、落語「死神」を交えながら表現してもらった。高松さん自身の俳句もあるので必見だ。
■一度だけ話したことのある父との会話。「双極性障害」は父から遺伝したのか?それとも母から?
両親との電話に、落語「死神」を重ねて描かれた本作。咲いていた朝顔が萎れていき、ぼとぼと落ちていく様子が主人公の心情と重なって描かれていく。高松霞さんは「今回は私のトラウマの話です。双極症って遺伝の可能性があるんです。父か母のどちらか、またはどちらも、双極症なのかもしれない。親に愛されていてもいなくても、大人になることはできるということも書きたかった」と今回のストーリーで、一番読者に伝えたいことを教えてくれた。
落語「死神」を混ぜ込んだ演出にした狙いについて尋ねると、高松さんは「今回のエピソードは、自分に起こった出来事として感じにくいものでした。落語の噺にしてしまえば、まだ『読める』のではないか、と考えましたが、つらかった。書いたら楽になるかなと思ったけれどつらかった」と話し、作品に向き合った時の心情を語ってくれた。
父親や母親との電話の場面に登場する「アジャラカモクレン テケレッツのパー」と唱えられる呪文が印象的だが、そのシーンについて高松さんは「落語の『死神』の呪文は、病人が寝ている足元にいる死神を追い払う言葉で、呪文を唱えて寿命を増やした分、自分の寿命が減ってしまう。私はふたりともに死んでしまってほしいと思っているし、ふたりともに生きながらえてほしいとも思っています」と両親への複雑な思いを語った。
作中の俳句と漫画が織りなす情景をぜひ感じて欲しい。
取材協力:高松霞(@kasumi_tkmt)