92歳祖母の壮絶な「家族内いじめ」というつらい経験を漫画化するまでの心境。「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」誕生秘話【作者に聞いた】

  • 2024年3月1日
  • Walkerplus

Instagramやライブドアブログ「ゆっぺのゆる漫画ブログ」で、実話をもとにしたエッセイ漫画を描く漫画家のゆっぺさん。ブログは2021年には月間3000万PVを記録し「ライブドアブログ OF THE YEAR2021」最優秀グランプリを受賞。2021年12月から執筆してきた「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」では、戦前から生きる“祖母・キヨさん”の幼少期からの実体験を漫画化し、コメント欄を解放した最終話には500件以上の熱い応援コメントが寄せられた。

92歳の祖母・キヨさんの半生を漫画化するまでには「家族の苦労話でお金儲けしていると勘違いされてしまったらイヤだな」と1年ほど悩んだこともあるそう。今回は「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」の制作過程と、作業時のゆっぺさんの心境に迫る。

■ゆっくりと時間をかけて語ってもらった、祖母の壮絶な「家庭内いじめ」体験
――「親に捨てられた私が日本一幸せなおばあちゃんになった話」は、祖母・キヨさんの実話を元に作られていますが、どのような形で構成していったのですか?

私は全体のプロットを組み立ててから描くタイプではないので、定期的に話を聞いては描くというスタイルで作成していきました。事前にすべての話を聞いていたわけではなかったので、どんな展開になるのかは私自身もわからぬまま描いていました。だいたい一度に2〜3時間ぐらい話を聞いたら、それを数回分に分けて綴っていくんですけど、おばあちゃんの話は聞いているうちに話が飛んだり、重複してしまったりするので、ノートに書き込んだ内容を時系列に並べ直してつなげるのが大変でした。

――話を聞く、描く際に意識したり、気を付けていたことはありましたか?

気を付けていたことは、おばあちゃんが言いたいことを全部吐き出すまで、私が一切口を挟まずに聞くことです。そして、このお話で描かれるのは祖母の経験なので、描く際も私の主観は一切排除しました。おばあちゃんの言葉をちょっとでもかっこよく描いてしまったら、それはもうおばあちゃんの話ではなくなってしまうので。ですから、できるだけ忠実に描くことを意識しました。エピソードトークをかっこよく言わせようとか、それをかっこよく描こうという感情は持たずに取り組みました。

■家族の苦労話でお金儲けしていると思われたら…と漫画化を躊躇したことも
――キヨさんの幼少期の話を初めて聞いてから漫画化の連載まで1年以上かかっており、漫画化するまでに悩まれたと聞きました。

はい。私はおばあちゃんの今の気持ちを伝えたいという思いで描きたいと思ったのですが、漫画ではおばあちゃんの過去を忠実に描くことになるので、家族の苦労話でお金儲けしていると勘違いされてしまったらイヤだなと思い、最初は躊躇しました。しかし、おばあちゃんの過去だけでなく、戦争の話を語れる人もどんどん減っているので、私だけ聞かせてもらっているのではもったいない。戦争当時のことは語りたがらない方も多いそうですし、祖母もずっと語ってこなかった。しかし、せっかく貴重な話を聞くことができたのでやはり作品にしたいと思い、本人に漫画化の話を伝えたら「いいよ」と言ってくれたので、形にすることにしたのです。

――キヨさんは、今回のことで初めて過去のことをお話しされたそうですね?

そうなんです。実は話に出てくる人物は、祖父も含めて、全員亡くなっているんです。だからこそ、おばあちゃんもようやく話せたみたいで。養母の娘さん家族とは結婚してから付き合いがなくなってはいたものの、かつてお世話になった方々なので実在しているうちは悪口になってしまうから口にしないと心に決めていたそうなのです。

■描く際に心掛けたのは、登場人物を悪く描こうともよく描こうともしないこと
――漫画では、幼少期に叔父の家にもらわれたキヨさんが養母である叔母から理不尽な嫌がらせをされる場面が多く登場します。そういった場面は、どんな思いで描かれたのですか?

私は感情を込めて描いてしまうタイプなので、キヨが泣いている場面を描くときは自分も泣いたり、怒ったりしながら描いていました。しかし、私は意地悪をしていた養母に会ったことがないですし、どんな方かもわからないですし、その子孫の方々との親戚づきあいもないので、おばあちゃんから聞いた以上のことはわかりません。ですから、必要以上に悪く描こうという気持ちも、逆によく見せようと気持ちもなく、聞いたままに描くことを心掛けました。


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