
家でゆっくり過ごす際も、おでかけの道中にも、スマホやタブレットを片手に気軽に読める電子書籍やWEB漫画。まとまった時間があるときは、一本のシリーズを続けて読みたいという人も多いはず。
今回は、小田桐圭介(@odagiri_keisuke)さんが2021年から自身のX(旧Twitter)やpixiv、またAmazon Kindleインディーズの電子書籍として無料公開している恋愛群像漫画「香夜たちの話」シリーズを紹介したい。
■一言では表現できない、大きくて複雑な心の内
作者の小田桐圭介さんは、「あたし、時計」や「さくらちゃんがくれた箱」などの短編漫画を自主制作し反響を呼ぶ作家。同シリーズは、2021年から新作を発表し続けている長編の連載作品だ。
幼馴染の少年「神崎裕太」に「大好き」と公言する少女、「秋月香夜」。本作は香夜をはじめ、同じ高校に通う男女のさまざまな恋愛模様をキャラクターの視点を変えながら青春群像劇が描かれる。
たとえば、恋を進展させたい香夜に対し、無下にはせずもあいまいな態度を続ける裕太。彼の視点では香夜への思いやそれを取り巻く事情とともに、同級生の「伊志原誠介」に恋愛観を問うなど、彼なりの考え方が垣間見える。
また、相談された誠介自身も、香夜の友人である女の子「香坂姫香」と、中学時代に二人きりで遊ぶほど親密だったにもかかわらず、今はぎくしゃくとした関係になっていた。姫香の口から過去のいざこざが語られれば、それを継ぐように誠介の視点から、そのときの行為の裏にどんな思いがあったか明かされ……と、当人だけしか知りえない秘めた心の内を描きつつ、高校で過ごす彼・彼女たちの時間が進んでいく。
お互いの想い人だけでなく、友人同士の関わりも含め、それそれ違う考え方の少年少女たちの揺れ動く感情を誠実につづる作風に、「どうなっていくことやら」「とても続きが気になる展開」と、読者からは物語の行く末に注目が集まっている。
■「一人ひとりの気持ちを丁寧に」キャラクターへの思い
作者の小田桐さんによると、一話完結の短編として描かれたという同シリーズ。「もともとは続き物としてではなく、短い読み切り漫画をX(旧Twitter)に載せようとして描きました。内容は男女の幼馴染のやり取りがかわいくていいなと考えただけで、そこまで深く考えていませんでした」と話す。
その後、読者からの好評を得て同様の作品を続けて描いたところ、「このまま一話完結の漫画を描くより、ちゃんとしたストーリー物にしたほうがおもしろくなるのではないか」という思いが生まれ、長編としての物語がはじまったという。
そんな同作は、みずみずしくも切実に描かれる高校生の感情の機微が大きな見どころ。小田桐さんは「一人ひとりの気持ちを丁寧に描写しようと心がけて描いています」と、登場人物への向き合い方を話しつつ「自分にとってはとても長いページ数の短編を描いている感覚ですが、長い分登場人物や物語をより掘り下げて描けるので、そこはとても楽しいです」と作者の視点での長編ならではの魅力を教えてくれた。
そんな同シリーズは、「すでに頭の中では物語は最終回まで出来上がっています」と、完結までの構想は固まっているそう。「自分では耳目を集める派手さもないオーソドックスな恋愛漫画を描いていると思っているので、多くの方にお読みいただけて驚くと同時にとてもうれしく思っています」と感謝を告げる小田桐さんは、メインキャラクターとして登場する6人の今後や、その後の物語も考えているとのことで、「最後までお付き合いいただけますと幸いです」と読者へメッセージを寄せた。
取材協力:小田桐圭介(@odagiri_keisuke)