
SNSでメンタルや生きづらさを題材としたイラストと言葉を発信しているなおにゃんさん(@naonyan_naonyan)は、かつてうつと適応障害から会社を休職。当初はそんな自身について「恥ずかしい、情けない」と感じていたが、今では「休職して良かった」と思っているそう。
コミックエッセイ「うつ逃げ~うつになったので全力で逃げてみた話~」は、そんななおにゃんさんの実体験をベースにした作品。病気から、会社から、果ては日本からも全力で逃げた1年間を赤裸々に描く。
第16回の今回は、「自分が心からやりたいこと」を考えた結果、芽生え始めたある夢について。
休職期間が一年ほどあったので、それまでは何やかんや理由をつけて、今後について真剣に考えてこなかったんです。考えるのが怖くて、ずっと先延ばしにしてしまって…。でも、休職期間があと半年になり、会社に戻るか辞めるのか、それとも全く別の道を探すのかと、急に焦り始めました。人間、追い詰められると先延ばしにしていたことにも向き合わざるを得ないので、意外と追い詰められることって大切なのかなと思いました(笑)。
昔から、親や教師の顔色をすごく窺う性格で、どうすれば褒めてもらえるだろうとビクビクしながら生きてきました。それによって自分の主体性が全然なく、いつも周りから「いい」とされるものに従って、進路や趣味まで決めていたように感じます。、これまでの人生を振り返るなかで、「自分軸ではなく他人軸」で行動してきたことに気づきました。自分は空っぽなんだなと思う瞬間が何度もあり、「自分の好きなものがある」「自分はこれをやってみたい」と、自分の意思を断言できる友人たちが羨ましかったです。
周りの評価や他人の基準に合わせて行動してきたため、自分が空っぽでニセモノの存在に思えました。でも一方で、本が好きという気持ちは本物だと確信しました。特に児童書は、仕事を通じてますます好きになりました。
国語の教科書にも載っていた、アーノルド・ローベルの「がまくんとかえるくん」シリーズが大好きでした。かえるの絵がすごくリアルで、ちょっと影があって、少し不気味さもあるのですが、同時にとても愛らしくて、憎めないキャラで、子供ながらにとても惹かれた思い出があります。大人になってからこのシリーズの他の話を読んだら、作者のものすごく深い優しさみたいなものを感じて、さらにファンになりました。がまくんとかえるくんは架空の存在だけど、今でも二人で仲良くしていてくれたらいいなと勝手に想像しています(笑)。
たくさん悩み考えた末、本に関する仕事が好きだと気付いたが、作家をサポートする編集者には戻れない。それなら「自分が作家になろう」と思いたったなおにゃんさん。彼女はこれから、どのように前進するのだろう。今後の「うつ逃げ」も楽しみにしてほしい。
取材・文=石川知京