
SNSでメンタルや生きづらさを題材にしたイラストと言葉を発信しているなおにゃんさん(@naonyan_naonyan)。うつ病と適応障害で会社を休職した経験があり、当時は「うつになって恥ずかしい。逃げるようで情けない」と感じていたものの、今では「休職して本当に良かった」と心から思っているそう。
コミックエッセイ「うつ逃げ~うつになったので全力で逃げてみた話~」は、そんななおにゃんさんの実体験をベースに描いた作品。病気から、会社から、果ては日本からも全力で逃げた1年間を、お届けする。
今回は、絵本作家として自ら絵を描くことを決意したなおにゃんさん。そしていよいよ会社に退職届を出しに行く。
■退職当日は、すごく気まずくて恥ずかしかった
「絵本作家になりたい」ではなく「絵本作家になろう」と決め、休職中の会社をついに辞めることに。退職日の様子について、詳しく聞いてみた。
「漫画ではあっさりと描きましたが、実はいろんな感情がありました…!(笑)一番はやっぱり、『めちゃくちゃ恥ずかしい』という気持ちです。ずっと休職していたのに退職日に突然現れたことが、本当に気まずくて…。みんなが、腫れ物として自分を見ているような気持ちになり、この場から早く消え去りたいと思っていました。また、誰にも挨拶できずに辞めてしまったので、すごく申し訳なかったし、今でも後悔しています。でも、その時の自分はそれでいっぱいいっぱいだったし、仕方がなかったのかな?とも思います」
これまで本格的に絵を描いたことがなかったなおにゃんさん。絵の描き方はどのように学んだのだろう。
「自分の場合、いわゆる芸術的なすごい絵は描けないので、とにかく相手に『伝わる絵』を描こうと意識しました。特に子供さんに読んでもらう絵本なので、別に芸術的な絵を描く必要はないし、『りんご』が『りんご』だと分かるなら、それで問題ないんじゃないかなと。下手でもいいから伝わる絵を描こうと思いました。むしろ小難しさを排除して、わかりやすい太い黒の線で囲ってはっきりとした色を塗るという、原始的な絵を描こうと思いました。結局伝わればオールオッケーだし、逆に『伝える』ことが一番難しいので、伝えようという気持ちで、今も一生懸命絵を描いています」
自分なりに絵を描いた絵本の企画が通り、2014年にはついに念願の絵本を出版。見本を初めて手にした当時の気持ちを教えてくれた。
「とても嬉しかったです。表紙がピンク色のパフェの絵本だったので、すごく可愛くて部屋に飾りたい気持ちになりました」
休職期間が終わり、ついに自らの手で夢を叶えたなおにゃんさん。果たして彼女が今、思うこととは何なのだろう。今後の「うつ逃げ」も楽しみにしてほしい。
取材・文=石川知京