
元ゲーム会社所属デザイナーで、現在はストーリー漫画をメインに執筆している吉良いと(@kilightit)さん。個人で作品を公開・販売するほか、商業誌にも作品を掲載するなど、精力的に活動している漫画家だ。代表作「ようこそ亡霊葬儀屋さん」は、「このお話ほんとに好きです」「1度見た事あるはずなのに泣いてしまった」など、多くの読者に感動をもたらしている。
今回は、「見知らぬ少女が毎日手紙を渡しにくる理由」をお届け。主人公の飛鳥未来は、ここ数カ月の間、毎日欠かさずに見知らぬ女の子から手紙を渡されていた。気味が悪いと思いながらも受け取るが、手紙の内容は愛の告白とかではなく、「ご飯は食べているか」「好きな子はいるか」といった一方的などうでもいい話しばかり…。そんなある日、未来は女の子から渡された手紙を目の前でビリビリに破きながら、「消えろよ」とついにいら立ちをぶつけてしまう。
未来の母は入院しているが、かれこれ10年も顔を合わせていない。未来には母の見舞いに行きたくない理由があったのだ。それは子供時代のこと…。クラスメイトから、未来の母が入院している理由は未来を産んだからだとからかわれたことがある。それ以来、未来は自分のことを産んだ母を恨むようになってしまう。
母の容態が悪化しているから早く病院に来てほしい、と祖母から連絡が入った。しかし、母親らしいことを一度もしてくれなかった母にどんな顔をして会えばいいのかと、未来は葛藤する。するとふと、机の引き出しにビリビリに破ったはずの見知らぬ少女から手紙を見つけた。不思議に思い手紙を開けると、なんとそれは母からの手紙。未来を産む前に、未来に向けて書き溜めていたものだった。
生死をさまよう母に、祖母が必死に声をかけていると、病室のドアが開いた。10年ぶりに会う母に、「ずっと話したかったんだよ、母さん……!」と押し殺していた感情を涙ながらにぶつける未来。“キミが泣きそうな時は抱きしめるよ、ね?未来”。母の目は涙を流し、そして少しだけ開いた。
複雑な出生からすれ違ってしまった母と子の絆を描いた本作。Twitterの投稿には「涙腺完全崩壊…」「泣いた」という感動の声のほか、「ちょっと待って!ここで終わりですかっ!」「生きてていて欲しい…」と作中では描かれていない物語の続きがハッピーエンドであることを望むコメントも多く寄せられている。
画像提供:吉良いと(@kilightit)