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「生きづらさ」を抱えた心をラクにする方法とは?Twitterで人気の心理カウンセラーに聞いてみた

  • 2022年4月26日
  • Walkerplus

現役の心理カウンセラーであるPocheさん(@Poche77085714)のツイートが「生きづらさ」を抱える人たちの間で話題になっている。ときにかわいらしいイラストも交えながら、「自己肯定感」「アダルトチルドレン」「人間関係の悩み」などをテーマにしたツイートが日々発信され、「それまさに私のことです!」「言葉にしてくれてうれしい」「勉強になります」といったコメントが多く寄せられている。

生きづらさを感じたとき、どう対処すればいいのか?Pocheさんの心理カウンセラーとしての活動やTwitterでのエピソードと共に、心をラクにするコツを聞いてみた。

■心の不調に寄り添う優しい言葉とイラストがTwitterで人気

――はじめに、PocheさんがTwitterを始めたきっかけを教えてください。

「病院に併設しているカウンセリング室でカウンセラーとして10年勤務し、昨年独立しました。カウンセリング室では自作のイラスト入りのメッセージボードをいつも飾っていたんです。退職する際、クライエント(相談者)から『メッセージボードをSNSでいつでも読めるようにしてほしい』とご要望があり、Twitterで発信することにしたのが始まりです。手帳に500個くらいネタを書き溜めたものがあるので、今もそこから1日5件程度をめやすにツイートしています」

――Twitterで発信する際に気を付けていること、こだわっていることはなんでしょうか。

「自分の意見は入れず、心理学上のエビデンス(根拠、裏付け)があることだけをつぶやくようにしています。例えば『イライラがおさまらない』『どうしようもないほど不安』といった心の動きが起きるのかどうしてか。原因となる要素や、少しでも心を軽くするための考え方についてつぶやきます。イライラしたり、不安になる自分を責める必要はないと知っていただきたいですね。

ツイートの主なテーマは『自己肯定感』『アダルトチルドレン』『人間関係』の3つです。内容はクライエントから寄せられる相談の傾向によって決めています。季節や世の中の情勢によって、『怒りを抑えられない』『我慢が重なって疲れやすくなった』など相談内容に一定の傾向があるんです。

また、最近はジェンダー関連の相談が増えているので、イラストは性別を感じさせない動物を描くようにしています」

――特に反響が大きかったツイートはどんな内容でしたか?

「負の感情の抑圧することによって他の感情も抑えてしまい、『自分がわからない』状態になってしまう、という主旨のツイートですね。つぶやいた直後は反応が薄かったのですが、じわじわと拡散されて2500以上の”いいね!”をいただきました。ここ1~2年で生活様式が少しずつ変化したこともあり『自分のことが分からなくなってしまった』という方が増えてきているので、このような内容の反響が大きかったのかなと思っています」


――現役の心理カウンセラーとして、日ごろから心がけていることがあれば教えてください。

「なによりもまず、相手を否定しないことです。たとえ自分の意見と違っているとしても『相手に否定された』と捉えず、相手の意見も自分の意見もOKだと考えるようにしています」

■寄せられる相談は月1000通! 「自分を認める」カウンセリングの方法

――ふだんはどんな活動をしておられるのですか。

「今はメールでのカウンセリングを行っています。クライエント(相談者)は20代~60代くらいで、年齢は幅広いですね。『来談者中心療法』といって、アメリカのカール・ロジャーズが提唱した『人は本来自然な成長能力を持っている』という考えに基づく手法を主に用いています。毎月1000通ほどのメールをやり取りしていますよ」

――毎月1000通も!ちなみに、メールにした理由はなんでしょうか?

「コロナ禍が長引いている状況で、対面のカウンセリングは難しい状況でした。Zoomなどの会議ツールですと、部屋を片付けたり身だしなみを整えるのがしんどいという人もいます。LINEは手軽で便利なのですが、既読が付かなくて不安になったり、ずっと繋がっていたいと思い詰めて辛くなるかたもいらっしゃるんです。

いろいろ試した結果、メールがお互いのちょうどいい距離を保てる方法だなと。メールなら、お布団の中からでもパジャマ姿のまま送信できますしね。文字数制限もとくにしていないので、お悩みの内容に応じて自由に書いていただいています。300字くらいのメールを毎日という方もいれば、A4用紙に8枚くらいの長いものを数ヶ月に1度送ってこられる方もいらっしゃいます。自分のペースで送ってもらえるのも、メールの利点ですね」

――カウンセリングではどんな相談が寄せられるのですか?

「パートナーにだけ感情的になってしまう、家族や友人と上手くいかないなどの人間関係の悩みがほとんどですね。上手くいかない理由に『自分でものごとを決められない』『頼まれたら断れない』『誰にも本音が言えない』といったご自身の性格や気質の問題を挙げる方が多いです」

――人によっていろんな悩みがあると思いますが、どうやって解決していくのですか?

「病気にかかったときは、原因を突き止めて薬を処方したり、手術したりして治療しますよね。相談者の方は、病気と同じように“自分の性格を治さなきゃ”“怠ける癖を治してもっと頑張らなきゃ”と思い詰めておられます。でも、じっくりお話を聞いていると、実際には治す必要がなかったり、怠けているのではなくむしろ頑張りすぎているということもしばしばあります。

まずは『どうして治したいと思うのか』『なぜ怠けていると感じるのか』というところから丁寧に掘り下げていきます。繰り返し出てくる言葉や、書いているうちにご自身で答えを出せているのではないかという箇所を引用しながら、『どうしてこう思いましたか?』『こんな風に感じたのですね』とお返事します。その内容についてまた考えてもらったり、新たな悩みがあれば書いていただきます。この繰り返しですね」

――「治す」ことが絶対に必要なのではなく、それ以前の「なぜ問題なのか」「治すべきものなのか」を考えるのですね。

「そうです。突き詰めていくと、幼少期の体験、とくに親子関係が影響していることが多いです。親子の関係性がその後の人間関係のベースになっていると痛感しますね。生きづらさを感じるようになったきっかけは、子どもの頃の本当に些細な体験だったりもします。私が独立したいと考えたのは、もっと親子関係について深くお話できたらと思ったことも理由の一つなんです」

――幼少期の親子関係と今の生きづらさが繋がっていることがあると。具体的にはどんなケースがありましたか?

「例えば、『自分で決められない』というお悩みが寄せられることがあります。もし自分で決断して間違えたら自分で責任を取らなくてはいけないと考えて、強い恐怖を感じてしまうと。今までの出来事を聞いていくと、親が過干渉なタイプで、本来は自分で出来ることまでやってくれたり、自分で決める経験がすごく少なかったりします。『カウンセラーに答えを出してほしい』と言われたこともあります。

一緒に考えてもなかなか『自分がどうしたいか』の答えがでてこない時は、さらに今までの経験を掘り下げて、小さなことでも自分で決めた経験があったことを確かめてもらいます。生きていれば、どこかで必ず自分で決めて行動したことがあるはずなので。そこで『親がいなくても決断できる自分』を少しずつ実感してもらうようにします」

――カウンセリングによって親子関係が改善することもあるのでしょうか。

「そうですね。『子供から嫌われているのではないか』と相談に来られた方が、カウンセリング後にお子さんに確かめてみたら全くそうではなかったということもありました。子供もまた『お母さんに嫌われているかも』と心配していたそうです。そのクライエントは相手の表情から察しすぎてしまうと悩んでおられましたが、お互いの気遣いがすれ違っていたのだとわかってからは、関係が良くなったようです。

相手が実際に思っていることと、『こう思われているんじゃないか』と感じていることは別のものです。言葉にすると『こんなことで?』と思われるかもしれませんが、自分だけではなかなか気づけないことも多いです。小さなこと、共感しづらいことを話してもらうのも、カウンセラーの役割だと思っています」

――過去の親との関係性が生きづらさに繋がっていたと気づいても、相手がその出来事を覚えていなかったり、すでに亡くなっているということもあるかと思います。そんな場合でも、カウンセリングで気持ちをラクにすることはできるのでしょうか?

「クライエントがご高齢でも、親が亡くなっていても、遅いということはありません。客観的に自分を振り返って気づきを得ることで、状況はガラリと変わっていくんです。

たとえ親が生きていて『あの時のことを謝ってほしい』などと気持ちを伝えたとしても、結局は相手に通じないこともあります。そこで上手くいかなくても、伝わらなかった経験をもとに自分で心の整理をつけられたというケースもありますよ。

今まで断れなくて悩んでいたけど実際に断ってみたら意外に平気だった、というように少しずつ経験を積むことで新たな気づきに繋がることもあります」

――今までの経験を振り返りながら、自分を認めていくということでしょうか。

「そのとおりです。自分が欠点だと思っている性格も、必ずしもダメなところばかりではありません。実は良い面もありますし、ご自身のせいではなく相手や環境がそうさせている、というケースもあります。無理に頑張るのではなく『すでに出来ていた部分もある』ということに気づくことが大切です」

――カウンセリングを受けた方からの反響はいかがですか。

「自分は頑張りすぎていた、欠点だけじゃなかったと気づいたときは、すごく驚かれますね。欠けていたと思っていたパズルの最初の1ピースがハマったような感覚なのかなと思います。きっかけがあれば、そこからはご自身で解決できるようになる方が多いです」

■「〇〇しなきゃ」「〇〇しちゃいけない」を少しでも減らして
――「生きづらさ」を抱えている方に向けて、心を楽にするコツがあれば教えていただけますか。

「まずは、自分で自分に強制したり、禁止していることを減らすことです。『〇〇しなくてはいけない』『〇〇してはいけない』と思えば思うほど、心は苦しくなります。

そもそも、人の心は禁止が苦手なんです。例えば『嫌なニュースを見てはいけない』と禁じても、気になったら見てしまうのは仕方のないこと。『”つらい時は”ニュースを見ない』『“友達と喧嘩してしまった日は”SNSを見ない』というように、条件を付けると禁止の要素は少し薄れます。

それでも見てしまったときは、気持ちが落ち着くことを対策として考えておくといいですよ。温かいものを飲んでもいいですし、推しのアイドルの写真や動画を眺めてもいい。マンガやゲームに熱中しすぎて後ろめたい気持ちになる人もいらっしゃいますが、悩みやつらさを考えなくて済むなら無理に我慢する必要はありません。一つでも多く、自分が好きでホッとできるもの、あるいはボーッと何も考えなくて済む方法を持っておいてほしいです」

――最後に、今後のご予定やチャレンジしたいことがあれば教えてください。

「引き続き、Twitterで心をラクにするお手伝いができればと思っています。イラストをもっと見たいとご要望をいただいているので、少しずつ増やしていきたいですね。

カウンセラーの仕事は、自分では経験できないたくさんの人生に触れることができて、とてもやりがいがあります。知り合いには言いにくいことや小さな悩み、人知れず抱え続けている生きづらさ、どんなことでも気軽に相談していただければうれしいです」

なんとなく生きづらさを感じているときほど「もっと頑張らなきゃ」「なんでこんなことも出来ないの」などと考えてしまいがち。ときには心理学の力を借りながら、少しでもラクな気持ちで日々を過ごしたいものだ。

取材・文=油井やすこ

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