生まれたばかりの赤ちゃんの脳は、大人と同じく1.000億個の脳細胞を持つといわれています。しかし、その細胞間のネットワーク化が進んでいません。成長の過程においてそのネットワークがより緻密につながりをもつことで、身体的・機能的・情緒的な発達を行っていきます。
そしてそのネットワーク化、つまり赤ちゃんの発達を促すには「親と子のふれあい」にもとづく「接触」や「言葉かけ」「刺激」が原動力となります。赤ちゃんの豊かな表情や、言葉の習得も、保護者が赤ちゃんに対する「接し方」により、その発達は大きく変わってくるということです。
昨今「サイレント・ベビー」と呼ばれる「泣かない・笑わない」無表情の赤ちゃんが増えているといわれています。これは、赤ちゃんの世話をするときに「言葉・表情」など、赤ちゃんの世話をするときに伝えることをしなくなると出現率が多くなります。
赤ちゃんの視力は、大人の0.3程度しかないといわれていますが、より複雑な変化を読み取る力に長けています。単純な図柄に対する興味よりも、より複雑な表現「人の表情」などに興味を示します。また赤ちゃんは、微妙な表情の変化や雰囲気から、人の感情や、自分におよぶ危険を察知する力があるといわれています。「赤ちゃんには話してもわからない」「子どもには説明をする必要はない」などという気持ちではなく、子どもの本来持つすばらしい能力を信じる気持ちで、心豊かに接することが何より重要だと思います。
ベビーヨガでは、言葉の習得がされていない赤ちゃんに対しても、ヨガのアーサナ(ポーズ)やヨガマッサージを与えるときに、心をこめて慈しみの言葉をかけてあげながら行います。たとえば「胸のマッサージ」をするときには「やさしい心」「あったかい気持ち」「〜ちゃんのこと、ママ、大好きよ」などと、子どもの瞳をみつめて語りかけてあげます。より多く、効果的にマッサージをしようと必死になるのではなく、ゆったりとした気持ちで行うことが大切です。
子どもの発達は、「心」の発達に伴って、「遊び」や「運動」の発達がみられます。まずはその子の心を豊かに育てる子育てをすすめていきたいですね。
ヨガの精神にもとづく育児、それは「ジャッジしない」「他と比べない」ことからはじまります。子どもの成長は、その個人差が大きいものです。
そして、私たち大人が考える以上に「赤ちゃんは賢い」のです。乳幼児を持つお母さんの悩み事の多くは、他の子に比べて言葉を発するのが遅いとか、歩くのが遅いなどといったものが多くあげられます。しかしそれは本当に悩むべきことなのでしょうか?
赤ちゃんの発達は、まず首が据わり、寝返り、お座り、ハイハイ、たっち、あんよ…と重力とバランスをとりながら、また必要な運動を行い内蔵機能や体を支える中心の筋肉を養いながら発達しています。これはすべての赤ちゃんに共通する発達の過程で、その進度よりも、一つ一つの過程が十分にされているかを見守ってあげる必要があります。最近の赤ちゃんは「ハイハイ」の期間が短く、すぐに立ち、伝い歩きを始めることが多いと聞きます。その原因に以下のようなものが考えられます。
・赤ちゃんがハイハイをするスペースが十分でない。
・大人が赤ちゃんの目線にあわせて暮らす意識がない。
・危険を排除しようとするあまり、歩行器に入れたり、安全な「囲い」の中で育てようとする。
・おもちゃを取ってあげるなど親がすぐに要求を満たしてしまう、また赤ちゃんの興味をひくものが少なくなり、ハイハイをして対象物まで行きたいという気持ちが起こらない。
ベビーヨガでは、赤ちゃんの発達に合わせて、その時々に起こる不調を解消し、子どもがその過程を十分に楽しめるような「遊び」を通して学ぶヨガを提案しています。
たとえば首が据わる時期には、首の周りに緊張が起こりやすくなります。
腰が据わる時期には、腰や背中の周りが硬直やすくなります。首の周りが緊張すればアレルギー症状などが起こりやすくなることも、腰や背中が緊張すれば眠りが浅くなることもあるといわれます。その緊張を前記事のベビーヨガマッサージでときほぐしてあげることで、赤ちゃんの成長をママの手で支えてあげることもできるでしょう。
また、ハイハイを長く楽しむためには、保護者自身もハイハイをすすんで楽しむと良いでしょう。親自身がハイハイをしてみると、赤ちゃんが全速力でママの後追いをするハイハイがどれだけの運動量であるのかを実感することと思います。現代の住環境では腰をかがめる姿勢や床に近い姿勢でくつろぐことも少なくなっています。「地に足をつける」という言葉があるように、子どもと一緒に、大地を感じて体をつかって遊ぶ時間を持つようにすることは、その子のその後の運動能力や感性を高める効果があると考えます。
「他とくらべない」「ジャッジしない」ということも子育てにとって、またヨガをする上でとても大切なテーマとなるでしょう。ヨガをするときも、誰かと比べてアーサナが上手にできるようになったとか、下手だとかいう判断をするのではなく、自分の体の内側で起こる変化に耳をすませること、内観力を高めることを重んじています。子育ても、その子のもつ個性や潜在能力をのばすために必要なことは、誰かと比べて評価するのではなく、その子らしい成長や表現を尊重し評価することだと考えます。
現代の教育システムにおいて「比べない」というのは、もちろんゼロにすることはできないと思います。学校に通うようになれば、テストや成績で評価されるようになり、子どもは嫌でも「誰かと比べられ」優劣を評価されるのです。児童期になり、自殺やいじめなどの問題行動を起こす、または被害者となる子供の多くは、「叱られる」ことで自身を喪失したり、自尊感情(自分の存在の大切さを感じる心)が育たなかったことが原因になっていることが多いといわれます。
子どもにとって一番大切なことは「自分はかけがえのない存在として愛されている」という実感なのです。せめて親だけでも、他と比べて評価するのではなく、その子の良いところを「褒めて」育て、丸ごと受け入れて愛する心を、伝えてあげたいものですね。