The Organic Center が発行する食の安全に関するポケットガイド
セリーンとスティーブ
スティーブとセリーンが運営する独立系非営利研究教育団体The Organic Centerの「コアトゥルース」という論文では「オーガニック食品はただ安全というだけではなく健康に良いものである」としており、オーガニック食品には従来食品に比べると25%多い栄養素と30%多い酸化防止効果があることが報告されている。またオーガニック牛乳と食肉には36%多い必須脂肪酸が含まれており母乳の質を高めることがわかっている。マウス実験では、少量でも慢性的に殺虫剤に含まれるアトラジンという物質にさらされると非常に高い確率で肥満症や糖尿病を引き起こすことが確認されている。スティーブは「アメリカは過食なのに栄養不足な状態だ。劇的な肥満症人口の増加を目の当たりにして来たし、成人発症型のⅡ型糖尿病がもはや子供にまで及んでいる」と嘆き「アメリカの平均的な子供たちは毎日10〜13種類もの農薬を口にしている。オーガニックな食生活に移行すれば体内の農薬も出て行くんだけどな」と語る。
セリーンも「さらに言うなら食料生産量もオーガニック農法は慣行農法に劣らないわ。GMO擁護者たちは生産性が低いと言ってオーガニックを攻撃するけど、それは正しくない。先進諸国において同じ農地面積当たりの生産量を比べると、慣行農法の92%の食料生産量をオーガニック農法でも既に実現しているんだから」と、オーガニック農法は、生産量においても慣行農法に肉薄していると力説する。
現在も従来型食品が市場で優位を占めている。オーガニック食品の売上げはアメリカ全体の食品売上げのたった3%に過ぎない。しかしながら、オーガニック食品業界は過去20年間、毎年約20%もの収益成長を遂げており、 不況下にも関わらず今もなお2桁成長を続けている。
ホライズン社のオーガニック牛乳
「いち早くオーガニック食品の売上げに貢献しだした層は母親たちだ。多くの母親たちは、まずホルモン注射や抗生物質を大量に投与された牛のミルクを子供たちに飲ませたくないと考える。だからホライズン(コロラドのオーガニック乳製品メーカー)はこんなに成功したんだ」とスティーブは言う。
オーガニック食品への消費者需要が増すにつれて、ペプシやケロッグ、コルゲート、ゼネラル・ミルズなどの大企業も小さなオーガニック食品企業を買収するなどの動きを見せ出した。前述のホライズンが2003年に年商2億ドル(約200億円)を超えるアメリカ乳製品メーカー大手のディーン・フーズによって買収されたのもこの一例だ。これら巨大複合企業が消費者の本当に求めているものー安全で健康的な原料から作られ、そして人々が信頼して購入できる商品を提供し続けてくれることを願うばかりだ。「これをライト・ライブリフッドの精神と呼ぶのさ」と聞き慣れない言葉を引用してスティーブは説明してくれた。ライト・ライブリフッド(Right Livelihood)とは、もともとは仏教教義の一つで、直接的にも間接的にも他の生物を害することないライフスタイルのことを指すそうだ。ビジネスにもこの精神を、とスティーブは考える。
「LOHASのコンセプトでグリーンビジネスのユニファイド・フィールド・セオリー(unified field theory、統一場理論)を創り出そうとしたんだ」とスティーブは言う。「様々な“ライト・ライブリフッド産業” (オーガニック食品、代替エネルギー、グリーンビルディングなど)があるけれどお互いに連携がとれてない、だけどそれぞれの商品が共通点を持っている。そして消費者は購買活動を通じてそれぞれの企業にお金による投票を行うんだ」
Boulders Best Organicsのギフトボックス
これこそがスティーブとセリーンが先ごろボールダーを拠点とするBoulders Best Organics(以下、BBO)という企業を買収した動機だ。BBOはまだ創業3年の若い企業ながら昨年ボールダー郡内2番目の成長率を記録した優良企業である。地元コロラド州内の質の高いオーガニック商品だけをセレクトし「エコギフト」を提供する。
今日、BBOやこれに似たコンセプトの企業の存在は健康でサステイナブルなライフスタイルを推進する重要な手段となっている。「これからもずっと自分たちの信念の上に立っていたい。私たちが本当に信じているオーガニックの力は人々の健康と地球環境に大きな違いを生むでしょう。BBOはこの力を信じるたくさんの企業メーカーを代表する広報大使なの。それと同時に健康的なライフスタイルの発信地がこのコロラド、ボールダーにあること、私たちがどう生きて何をできるのか、何を選んで自分たちの購買力をどう行使するのかを個人の単位を超えてもっと大きな視点で捉えていくことの重要性を広く伝えて行きたいの」とセリーンは結ぶ。