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Vol.20 今枝忠彦さん
都市計画家が考えるバイオマス

  • 2011年7月1日
今枝忠彦さん

都市計画プランナー/ 今枝忠彦さん

Profile
1957年、愛知県生まれ。1984年(株)都市計画設計研究所に入社。全国の地方都市を中心に「街は要る」という視点から、都市・地域計画、拠点開発事業などのビジョンや計画づくり、地方都市の中心市街地活性化、自立した地域社会の再生、創造をテーマにコンサルティング。2010年イズム・ワークス研究所設立、同年「バイオマスの街・里づくり研究会」参加。2005年〜2010年、経済産業省・市町村の中心市街地活性化の取組みに対する診断・助言事業検討委員会委員。著書に『街は要る』(共著、2000年、学芸出版社)等。

 

富士山  東日本大震災以後、エネルギー政策の見直し等バイオマスへの関心が高まりつつあります。国土の7割近くが森林で、海に囲まれた日本。長年、都市計画の仕事に携わってきた今枝忠彦さんは、「人口減少、超高齢社会化が進む中で、自立した地域社会の形成のためには、エネルギーや食糧自給などを確保する意味で、バイオマスの総合的利活用は必要不可欠」と言う。そんな思いから、昨年の5月、都市計画、建築設計、ランドスケープ、メディア、イベントなどの分野で活動するメンバーで「バイオマスの街・里づくり研究会」を結成。その大きな転機となったのは・・・


都市計画家がなぜ今、バイオマスなのか

富山市の都心部を環状に流れる松川
富山市の都心部を環状に流れる松川
(富山市HP)
 都市計画の仕事に携わって四半世紀になりますが、大きな転機となった仕事が二つあります。ひとつは、LRT(ライトレール・トランジット)を導入し、コンパクトシティの形成を進める富山市で、その先駆けとなった都心構想と中心部の拠点地区のまちづくりです。中心市街地の再生を商業の活性化ではなく、居住を中心にして、広域的都市機能や生活関連施設を集約化し、市電を中心とした公共交通でネットワークすることを提唱しました。『街は要る』(共著、2000年、学芸出版)は、この富山市での一連の検討成果がベースになっています。今でこそ、都心居住は常識となっていますが、10年前には、まだ富山市などでは郊外の戸建て住宅があたりまえでしたから、隔世の感があります。都心部における暮らしと街型住宅のイメージを具体的に提示したことが良かったのだと思います。

 

富山市都心環境環状帯と市電リング
富山市都心環境環状帯(緑)と市電リング(オレンジ)
富山都心部を走る富山ライトレール
富山都心部を走る富山ライトレール(富山市HP)

コンパクトシティイメージ
コンパクトシティイメージ(新潟県柏崎都市圏)
 もうひとつは、数年前になりますが、「新潟県都市政策ビジョン」です。全国的な傾向として、役所や病院などの公共公益施設が郊外に流出し、ロードサイド型の商業施設が無秩序に立地し、市街地の拡散・拡大が農地を蚕食しつつありました。
 米どころの新潟においても、耕作放棄地が実質的には数字以上に増えていました。どうやって風景、国土を保全できるかが問われたのですが、問題は、都市も農村も生活様式が類似しており、これまでの都市計画のように、都市と農村を区別できないことにありました。都市圏として、市街地と農山村地域を一体的にとらえ、新潟県全体の都市づくりの方向性をコンパクトシティとして、街の活性化を図るとともに、美しい田園景観を保全することを目指しました。そして、新潟、長岡、上越等の都市圏ごとに地域独自の将来像を地域が主体で描く方向性を提唱しました。
 残念ながら策定後まもなく、知事さんが交替されてビジョンの方向性は継続されず、既存の方向転換の舵を切ることの難しさを実感しました。しかし、都市圏という広がりの中で、エリアの多くを占める農山村地域の機能や風景を維持することは国土全体に通じる重要なテーマであり、バイオマスを意識するきっかけになったと思います。

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