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第29回 女性起業家/温井和佳奈さん
途上国女性のデザイン力を生きるチカラへ

  • 2013年11月29日

「デザイン力」を「生きるチカラ」へ

アジア途上国もいろいろあると思いますが、なぜカンボジアを選んだのですか?

アンコールワットは、いつも神秘的
アンコールワットは、いつも神秘的
デザイナー発掘プロジェクトの応募作品を商品化したもの
デザイナー発掘プロジェクトの応募作品を商品化したもの
 どうやって途上国の女性の夢と経済的自立を同時にかなえるのか。私は自然の叡智を求めてアンコールワットを訪れました。これほどの芸術を創りあげた国なのに、現代では、デザインの仕事はタイやベトナムに流れている。その仕事をカンボジア国内で、しかも女性ができないだろうか。そしてアンコールワットの壁画に刻まれたデザインのすばらしさに感動。「そうだ、デザインがいい。それなら女性も自己実現ができる」と。

 才能ある女性はどこにいるのか?到底募集するお金もなければ、情報インフラの発達していなかったカンボジアではデザイナー希望の女性を集めるのも難しく思われ、そこで応援する私たちも応援される彼女たちもワクワクすること、デザインコンテストをやってみることにしました。金銭的に学校に通えない学生を集めたNPO、大学やコミュニティなどを回り告知活動を。アポがとれないときは飛び込みをし、証券会社にいたときにやらされた飛び込み営業の経験が役に立ちました。

 そして最初は応募が数名しかなくてハラハラしたのが200名を超える女性たちから280作品の応募がありました。その時たくさんのメッセージをカンボジア女性からもらいました。「職域のせまいカンボジア女性のために、こんなチャンスをくれてありがとう」「夢はデザイナーになることです。そして憧れの日本にいつか行くこと」私たちはそのコメントを読みながら目頭が熱くなり、審査員の男性経営者の方はその手紙を読んで既に泣いていました。現地の授賞式の日には、全員を呼んでデザインとは何かを伝えたい、夢をかなえるきっかけとなる舞台にしたい。
 いよいよ受賞式の日。結果は・・・250名もの人たちがカンボジアの式場に集まってくれました。

 



2012 年の受賞式、カンボジア女性省の大臣とカンボジアに多大な貢献をされた篠原元大使がゲストスピーカー
2012 年の受賞式、カンボジア女性省の大臣とカンボジアに多大な貢献をされた篠原元大使がゲストスピーカー
 コンテスト参加者の中に、忘れられない女性が一人いました。受賞した時、何度も飛び上がり夜は眠れなかったという。とてもお金に苦労したけど今、自分の夢に出逢えて幸せだと。彼女の夢は世界の人にデザインをみてもらうこと、困っている女性や子供たちを助けること。いつも私が驚かされるのは、カンボジア女性の多くは自分が豊かでなくてもそう考えていることなんです。

 私たちは期待以上のデザインが応募されてきたことに驚きました。日本のデザインとは違う色使い、瑞々しさ。日本に帰国すると、わくわくでカンボジア女性のデザインを入れた商品をなけなしのお金を投資して作ってみました。喜んでいたのも束の間、実際に売れたのはごくわずかでした。更に赤字なのに社会貢献をダシに儲けているのでは?と言われてしまったり。

 そこでデザインの事業はブルーミング・ライフという会社で、教育は非営利のドリーム・ガールズ・プロジェクトで行うよう整理をしました。組織を整理しても、とにかくお金もなくて、ネットワークもない。一方で私たちが相手にしているのはカンボジア。学校に美術の時間もない国。言語も文化も違う上に、デザインとは何か?から伝えなければならないのです。授賞式の日は華々しくても、日々の活動はかなり地道で一つひとつのことに時間がかかり、瞬く間に3年が過ぎてしまいました。

 

デザイン なかなか軌道にのらず自信を失いかけていたある日、「素晴らしい事業だと思います。ぜひ自分たちのブランドにドリーム・ガールズのデザインを使わせてください」とある社長が言ってくれました。ライセンス契約が決まり、生まれたのがHANAGirlブランドです。社長は自らカンボジアに足を運んで下さりカンボジア女性のデザイン力とその可能性を確信してくださいました。日本で女性のプロジェクトチームが結成され、意識高く頑張っている姿に私は心から励まされました。

 同じ頃、ドリーム・ガールズもカンボジアで頑張っていました。彼女たちにアドバイスをすると、作品は驚くほど見違える。模写ではなく心に感じたこと、目に見えないものを描くのがデザイン。彼女たちのデザインは数年でこんなに(右の写真)進化をとげました。

 

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