みなさん、こんにちは。ゴスペラーズの北山陽一です。
前回に続いて、旭化成パックスさんでの取材からのお話ですが、大きな課題のひとつとして「そもそも“プラスチックは油になる”ということを知ってもらうこと、その認知を広げるのが難しい」ということが話題になりました。
これは、日本のいわゆるメーカー、ものづくりの会社に共通するテーマなのかもしれませんが、自社製品が持っている社会的な意味や意義をとりたてて自らアピールすることにあまり積極的ではない、もっと言えばかなり苦手である、という傾向があるようですね。“自分たちのいいところを自分たちで言い立てるものでもないだろう”というのは至極まっとうというか、そういう奥ゆかしさが美点であることは間違いないと僕は思いますが、それでもこのプラスチック油化事業については、その役割はかなり重要であると言わないわけにはいきません。しかも、そうした広報作業について、“お金を払って専門の業者にやってもらおう”という発想ではなく、実際のものづくりに携わっている人たちのつながりのなかから生まれる言葉やアイデアがとりわけ大事、と個人的には思います。もっとも、旭化成パックスさんはイベント会場やプロスポーツのパブリックビューイングで実績やノウハウを積み重ねているところ、と前回ご紹介しましたが、そういう取り組みを通して“自分たちはこれでいける!”という、いっそうの手応えを掴めば、その成果を伝える方法や説得力も自然と力強いものになっていくだろうと思います。
それから、旭化成パックスさんの会社では、プラスチックカップの製造というのは本業中の本業のひとつであるわけですから、その事業を進める上で採算性というのは大切な要素です。世の中には、「社会的に意義のある事業なんだから採算は度外視して」みたいなことを言う人もいますが、僕はむしろ逆で、そういう事業だからこそ長く安定的に展開できるように、ビジネスとしてもしっかり成立するようなやり方で進めることが望ましいと思っています。だから、旭化成さんが企業としての社会的責任の観点からプラスチックのリサイクルに取り組み、いろいろと研究/調査をされた結果、ブレストさんとの連携を進め、現実的な取り組みを積み重ねていく手堅さを僕は素敵だな、と思います。
いま手堅さという言葉を使いましたが、今回の取材を通して、旭化成パックスさんはすごく慎重に対応されているんだろうなという感触を僕は感じていました。実績を積み重ね始めた事業に対する外部からの取材に対する応対としては、それはやむを得ないというか、当然だろうと思います。それだけにいっそう、取材の最終盤にスタッフのひとりの方が口にされた「日常の光景のなかでいちばん見たくないのは、自社で作ったプラスチックが道路に捨てられてるところなんです。スタートはそこなんですよね」という言葉が非常に印象に残りました。そういう生の声、スタッフの方の普段の生活に根ざした実感に触れられた気がしたこと、しかもその実感がまっすぐにこの油化事業につながっていることが確認できたことが、もしかしたら個人的にはいちばんの収穫だったかもしれません。
貴重な時間を割いて、我々の取材に対応していただいた旭化成パックスのみなさんには、この場を借りてお礼を申し上げるとともに、次は取材をする側とされる側というのではなく、同じプロジェクトの一員としてざっくばらんに意見を交換できる場を持ちたいなということをお伝えしたいと思います。
というわけで、こちらからも具体的な提案をできるよう、まずはいろいろと妄想をふくらませている北山でした。