食事の注文をして運ばれてきた時、「わぁ〜♡」と声がこぼれてしまうお料理ってどんなものですか?
熱々のピザ? 焼きたてのスペアリブ? それとも、ラブリーに盛りつけられたスィーツ?
もちろんストレートにそれも嬉しいのですが、私は、寒天寄せを見るとため息がこぼれます。特に夏の暑い日にガラスの器に素朴に盛られた、透き通ったじゅん采や星型のオクラの断面など、まるで七夕に笹の葉が揺れるような風情です。
蒸し暑いある夏の前菜。鰻屋さんにて
洋食器に比べて、和食器は地味なものが多いですね。でもだからこそ野菜の強さを生き生きと見せてくれると気づきました。器はあくまで黒子。そのまま「土」として分をわきまえながら、食を支えている、そんなひかえめさが素敵です。
上野で買った水茄子のおつけもん。風鈴のようです。
ブルー系のものがなんとなく好きでしたが、歌うようになってからはさらに、静かな色や存在に魅かれるようになりました。それは私が『控えめ=古風な女』という訳ではなく(笑)、この、移り変わりの激しい社会で、ささやかだけど、凛と根を張るたくましさを持つ存在に勇気づけられるから、だと思います。
夏に訪れた福島のあぶくま鍾乳洞には、ラベンダー畑が広がっていました。ごっそり買って、自宅のベッドに新聞紙を敷いた上に摘んだばかりのラベンダーを置きます。すると眠る時、シーツにラベンダーの香りが移っていて、なんともペンションな気分。猛暑の夏、薄紫の芳香が寝苦しさを柔らげてくれました。
花をいただく機会も多く、家にも飾りますが、いつも思うのは、花ごとに寿命が違うこと。
水を替える度に数が減り、花の丈も短くなると小瓶が大活躍。今お気に入りなのは、使い終わったインク壷。ジャム瓶やアクリル製の花刺しなど、ただ適当、無造作に。水を替える手間だってばかにならないので、歯磨きのついでに洗面所で片手で水を入れ替えたり。言い訳なんですけど、そうすると、花も、テキトーに咲き・枯れていき、それもまたかわいいんです。
たぶん、花束の中で一番長生きが葉もの、ですよね。
花がなくなり、葉っぱだけになっても捨てずに活けて、飾っています。それはそれで気持ちがよくて、夏の、花の長持ちしない時期などはあえて、葉ものだけを花屋さんで求めます。
一ヶ月は普通にもつ、おもと。9月のコンサートでいただいた、花束の『葉』です。
茎から白い根が生えてます(笑)。
このエッセーを書きながら、型を変えず、そのままをそばにおきたい趣向が私にはあるんだと、気づきました。
この草原や風をそのまま部屋に持ち込みたい
音楽も、流行にまみれず、身近な小さなやりとりを、なるべく加工しない言葉で伝え、微笑みの通う作品を作っていきたいと願います。
初夏から始まった11シーンの『癒される場所』。
こちらの連載は一息お休みさせていただこう、と思います。
これからも、感じたい、伝えたいことをコンサートやTwitter、facebook、ブログなど色んな場所でいっぱい交信しあいながら、一緒に歩いていきましょうね。
ありがとうございました!