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「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。

Vol.7 これで本当に再稼働?川内原発を動かしてはいけない5つの理由

  • 2015年2月19日

 九州電力川内原発1・2号機について再稼働手続きが着々と進められています。

 原子力規制委員会は、2014年9月10日、川内原発が規制基準に適合しているとの審査書を確定させ、設置変更許可を出しました。2014年9月12日には内閣府の原子力防災会議が、川内原発の避難計画は、「合理的かつ具体的」として確認。2014年10月9日からは、鹿児島県各地で審査書に関する一方的な説明会が開催され、住民からの再稼働に関する反対・疑問の声が相次ぎました。以下に川内原発再稼働の問題点をまとめます。

川内原発の周辺地図

1.民意を無視した再稼働

1) 反映されない民意(鹿児島県民の6割が再稼働反対)

「原発再稼働「進めて」32% 本社世論調査」日経新聞2014年8月24日 日経新聞が8月に実施した世論調査によれば、「再稼働を進めるべきではない」とする意見は56%であり、「進めるべきだ」は32%にとどまっています(「原発再稼働「進めて」32% 本社世論調査」日経新聞2014年8月24日)。

 また、南日本新聞が2014年5月に実施した世論調査でも同様の結果でした。すなわち、地元でも全国的にも、民意は再稼働に反対なのです。

一方的な説明会ではなく、公聴会、公開討論会の開催を求め、薩摩川内市、鹿児島県に申し入れをする市民たち
一方的な説明会ではなく、公聴会、公開討論会の開催を求め、薩摩川内市、鹿児島県に申し入れをする市民たち
 10月9日、薩摩川内市で行われた審査書に対する説明会。発言した10人のうち、9人が審査書に対して、また再稼働に対して、強い疑問と反対意見を述べました。翌日の日置市での説明会では、9人の発言者がすべて再稼働に反対。しかし、まだまだたくさんの手が上がる中、質疑は打ち切られたのは、この説明会は、「審査書」に限定した一方的な説明会であったからです。

 ひとたび事故が起これば、被害を受けるのは私たちです。それなのに、住民の意見を意思決定に反映させる仕組みがありません。鹿児島県内の複数の市民団体およびFoE Japanも含む全国の市民団体は、「公聴会」や「公開討論会」の開催を求める署名を集め、2014年10月3日に薩摩川内市、鹿児島県に一次提出しました。

2) 地元同意?

いちき串木野署名提出
いちき串木野署名提出
 審査後、事業者が再稼働をするにあたり、鹿児島県は、地元同意として「薩摩川内市と県」が同意すればよいとしていますが、いざ事故が生じた時、被害はその範囲では収まりません。

 薩摩川内市に隣接するいちき串木野市、日置市の市議会では、住民陳情に後押しされる形で、市議会が「地元同意を広げるべき」という決議を採択しました。「地元同意」の範囲の拡大とともに、十分に民意を踏まえる制度が必要です。

2.被ばくを前提とした避難計画

 避難計画についてはさらに問題です。2014年9月12日に内閣府の「原子力防災会議」が開催され、ここで川内原発の避難計画が「具体的かつ合理的になっている」ことが了承・確認されました。しかし川内原発の避難計画について、その実効性には大きな疑問があります。

 5km圏内の在宅要援護者で避難が難しい人は、原発近隣の施設に「退避」することになっています。5箇所の「退避所」のひとつ、旧滄浪小学校は原発から1.6kmの距離にありますが、一時退避所には燃料が4日分しかたくわえられていません。これは体のよい「置き去り」にも等しい行為です。

川内原発の避難計画

3.審査書は穴だらけ

 原子力規制委員会が実施した川内原発の適合性審査には、約1万8千件のパブリック・コメントが寄せられましたが、批判的な意見については反映されませんでした。適合性審査は、いわば「通すための試験」となっており、とりわけ批判が集中したのは、火山リスクに関する審査です。

 南九州には「姶良(あいら)カルデラ」など複数のカルデラ火山があります。約7千年前には、鹿児島沖で巨大噴火が発生しています。多くの火山学者が、火山噴火が川内原発に与える壊滅的な影響について警鐘をならしてきました。

 原子力規制委員会の「火山影響評価ガイド」にもとづいてチェックされるべき項目のうち、1)原発まで火砕流が到達するような巨大噴火が原発の運用期間中に発生する可能性が十分低いかどうか、については、科学的な根拠が十分示されていない上、2)モニタリングで前兆現象を把握できるのかは疑問であり、3)前兆現象を把握したときの対応方針としては、「核燃料を搬出する方針である」としか書かれていません。

 原子力規制委員会の川内原発の審査は、火山リスクが大きな争点だったにも関わらず、火山専門家を入れずに行われました。火山噴火リスクについては、改めて審査をやりなおすべきではないでしょうか?

 以上のように、多くの点において、具体的な対策は、「方針」のみしか示されておらず、保安規定や工事計画に先送りにされてしまいました。九州電力が提出した保安規定には、具体的なことは記述されていません。

4.電気は足りている

 電気事業連合会によれば、2014年7~8月の電力需給について、電力10社が最も電力を供給した日でも、需要に対する供給のゆとり(予備率)が10%あったと発表しました。原発が一基も動いていない状況でこの夏も電気は足りていたのです。

 さらに、九州電力によれば、2014年3月だけで、従来の1年分に匹敵する、約7万件の太陽光の接続契約申し込みが殺到。契約申し込み前の設備認定分も合わせると、太陽光と風力で夏のピーク需要約1600万キロワットをも超えるとのこと。この中断措置は川内原発、玄海原発の再稼働を見込んでいると考えられます。送電網や需給調整の仕組みを整えれば、すでに再生可能エネルギーは、原発に優に匹敵する実力をつけてきているのです。

5.福島原発事故は継続中

 福島原発事故は未だ継続中です。汚染水はとめどなく流出し、対策のめどがたっていません。ふるさとを失い、避難を余儀なくされている人たちが未だ10万人以上もいます。事故原因も究明されてはいません。こうした中、「審査」「住民説明」「地元同意」の形式だけが先行し、川内原発の再稼働の強行は許されるものではありません。


(『green earth』vol.52 2014 autumnより抜粋)

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