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「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。

Vol.6 日本の石炭火力輸出は誰のため?~海外から疑問の声「まずはJBICの融資規制を!」

  • 2014年11月13日

「Tolak PLTU=石炭火力発電所を拒否」バタン発電所建設予定の農地(2014年2月)
「Tolak PLTU=石炭火力発電所を拒否」バタン発電所建設予定の農地(2014年2月)

 FoE Japanは、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、気候ネットワークと協力し、「No Coal! Go Green! JBICの石炭発電融資にNO!」プロジェクトを展開中です。日本の政府系金融機関である国際協力銀行(JBIC)に対し、海外の石炭火力発電所への税金・公的資金を使った支援を止めるよう求めるものです。

 環境社会、人権、気候変動――深刻な影響があるにもかかわらず、なお石炭火力発電を世界に広げていこうとする日本の方針は、地球環境に今以上の破壊をもたらします。それを回避し、地元住民が電力を選択・決定できるよう、日本は石炭や原子力という大規模集約型の発電方法への支援方針を転換するべきです。

 ここでは、「JBICの石炭発電融資にNO!」プロジェクトの背景ともなる、日本の石炭火力輸出に対する海外の見方をご紹介します。

石炭火力発電所の開発現場で起こる生活破壊・人権侵害~インドネシアの事例

バダン石炭火力発電所建設計画の関係者相関図
バダン石炭火力発電所建設計画の関係者相関図

 FoE Japanがインドネシア・中部ジャワ州バタン県に訪れると、約3,000人もが生計を営んでいる同地域の農地には、「石炭火力発電所を拒否」の文字が書かれた旗が何本も建てられています。

 原因となっているのは、日本が官民を挙げ「パッケージ型インフラ輸出」の旗艦事業として推進しているバタン石炭火力発電所の建設計画です。人口や経済活動が集中するジャワ島の逼迫した電力需給問題を解消するため、東南アジア最大級の規模となる2,000メガワットの発電を目的として、インドネシア政府と連携して進められています。この巨大事業にJ-POWER(電源開発)と伊藤忠が参画を決定。また、総額約4,000億円以上がかかる見込みの事業費については、現在、国際協力銀行(JBIC)と民間銀行が融資の供与を検討中です。

検察庁前での住民リーダー拘禁に対する抗議活動(地元住民撮影・提供)
検察庁前での住民リーダー拘禁に対する抗議活動(地元住民撮影・提供)
 「雇用が生まれると言っても、自分たちのような教育レベルの低い住民に発電所での働き口がないのは目に見えている。」これまで長年育んできた年3期作可能な肥沃な農地が奪われれば、自分たちの生計が成り立たなくなると農民は危惧します。

 地元住民らは、Paguyuban UKPWR(5つの村の仲間)という組織を結成。5村から約7,000人が参加して、2011年から事業への反対を訴え、地元や日本大使館前で計20回以上の抗議活動を行なってきました。

 こうした住民の反対運動と結束から、土地売却交渉は難航し、同事業の着工は2年間遅れています。しかし、軍・警察の治安部隊との衝突で住民側に負傷者が出たり、また、地元政府当局が住民リーダーを不当に起訴・拘禁するなど、深刻な人権侵害が度々報告されており、依然として予断を許さぬ状況です。

第一回東南アジア地域・石炭No会議(2014年2月)
第一回東南アジア地域・石炭No会議(2014年2月)
 今年2月、インドネシアで「第一回東南アジア地域・石炭No会議」が開催されました。東南アジア各国だけでなく、インド、中国、韓国、日本などからも約60名の住民・NGOが参加した同会議では、石炭採掘と石炭火力発電所の問題点、また、代替案としての地域分散型・再生可能エネルギーの可能性を4日間にわたり議論。石炭火力発電所の開発現場で、健康被害、環境・生活破壊、人権侵害を経験してきたタイのNGO、建設への反対運動真っ只中のインドネシア・バタンの住民、そして、現在、石炭火力発電所の建設ラッシュが始まっているベトナムやこれから建設ラッシュが始まろうとしているミャンマーのNGO――過去から現在まで続く住民とNGOの経験は、こうして隣国にも伝わり、「石炭火力発電No!」の声は確実に世界に広がってきています。


日本の石炭火力発電輸出は世界最大 ~JBIC融資規制を求める声

 米NGO「環境防衛基金」の報告書(2009年)によれば、1994~2009年の国際金融機関による石炭火力発電事業への公的支援額は、日本の海外での資源獲得や日本企業の海外進出を支援するJBIC(財務省所管)が約81億3,900万ドルで世界第1位。世界銀行(同2位)やアジア開発銀行(同3位)などを上回っていました。また、経済産業省の管轄下に置かれている日本貿易保険(NEXI)も20億8,900万ドルで第6位と上位に名を連ねていました。

 さらに、2013年に「天然資源保護協議会(米NGO)」が発表した調査でも、2007年~2013年の国際金融機関による石炭火力発電事業への公的支援額は、JBICが約74億6,000万ドルで世界第1位、NEXIが48億ドルで第3位となっており、日本が積極的に石炭火力発電技術を輸出してきた方針があらわれています。

石炭火力発電所への主要な国際金融機関の公的資金供与額の比較(2007~2013年)
石炭火力発電所への主要な国際金融機関の公的資金供与額の比較(2007~2013年)

 しかし、世界は、現在、気候変動の観点から、途上国の石炭火力発電所への公的支援の廃止・規制に動いています。石炭火力発電は、最新鋭であっても発電方法の中で発電時の二酸化炭素(CO2)排出量が最も多く、天然ガス火力と比べると2倍以上も排出するため、気候変動に多大な影響を及ぼすことが問題視されているためです。

 2013年7月以降、米・英・北欧諸国等の国際金融機関や政府が、石炭火力発電事業支援の規制強化を続々と発表。「石炭火力発電の導入が必要とされる場合にはその高効率化を図ることが重要」としており、JBIC等の公的機関の支援を通じた石炭火力発電技術の輸出を経済成長戦略に位置づけている日本政府とは非常に対照的です。

 多額の公的資金を振り向け、海外の石炭火力発電事業の推進に大きな役割を担ってきたJBICは、各国の地元住民、また国際社会からの声を受け止め、日本が押し付けている石炭火力発電事業への融資を止めることが求められています。


(『green earth』vol.51 2014 summerより抜粋)

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